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ある日の訪問看護から♯22 最期のケア

オンコール当番の夜。
夕ご飯食べ終わって、
片付けも終わった頃 電話が鳴る。
訪問診療のクリニックからだ。
予感はしていた。

┈┈┈

ご本人のご希望で病院から自宅療養へ。
介入して1週間。
ご高齢であり、呼吸状態が良くない。
私が初めて訪問したのは、2日前。

かなり痩せて、とても小さく見える。
娘さんから、
昨日の夜、メロンが食べたいと言って、
小さくしたメロンを1口食べたのだそう。

体でめいっぱい、懸命に呼吸している。
血圧も低い。
尿もほとんど出ていない。
この状態であと何日頑張れるか。
少し朦朧としてきてはいるが、話しかけると頷いたり、小さな声で返答はして下さる。
懸命に生きている。


┈┈┈

クリニックからかかってきた電話は、
「呼吸が止まったとの連絡があったので、訪看さん向かって下さい」との事だった。

ステーションすぐそばのお宅で、急いで向かった。
娘さんは落ち着いていた。
ご本人は苦しそうな顔ではなく、
とても穏やかで安らかな顔。 
まだ体はあたたかい。
呼吸は止まっていて心拍も確認できない。

先生も到着し、死亡確認。
先生がご家族に死亡宣告する。

ご家族はしっかりと冷静に受け止めていた。
自宅療養は短期間で、ご家族も目まぐるしい日々だったと思う。
娘さんは覚悟できていたのだと思う。

娘さん、息子さんに声をかけ、
一緒に体を拭いて、着替えを手伝って頂く。

髭も剃って、眉毛や髪も整える。
娘さんが選んで用意してくださった
紺色のシャツのおしゃれなセットアップに着替えたお父さん。
とても素敵だ。
眠っている様で、本当に穏やかなお顔。


ご家族が拒否しなければ、
私はいつもご家族と一緒に最期のケアをする。

ご家族にとっても、最期のケアになる。
最期のケアの時間を通して、大切な人が旅立ったのを受け入れ、見送る気持ちの準備ができる時間になると思っている。
この時間はそれほど長くはないけれど、
ご家族にとっては、
色々な思いが巡る時間なんだろうと思う。
涙しながら、
様々な思い出を振り返る時間になる。
哀しみの中でも、
決して暗い雰囲気ではなく、
穏やかで、あたたかい時間だなと思う事が多い。

素敵になったお父さんを見た娘さん。
とても喜んでくれた。
「短い時間でしたけれど、訪問看護さんに来てもらって本当に良かったと思います。
ありがとうございました。本当に穏やかな最期でした。眠ってるみたいで…良かったです。」と。

このような言葉を頂けた時、ほっとする。

利用者さんが穏やかに旅立ち、そしてご家族が、しっかり最期を見送れたと感じとれた時に、看護師としての役割を果たせたのかなと思える。


最期までのケアを、
ご家族と共にできるのも
訪問看護の醍醐味かなと思う。

翌朝の空は真っ青で清々しい。








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