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キセツ。第3話

病院からの帰り道、青木は夕飯の食材を求めて近くのスーパーに寄った。
ふんわりと香る焼き鳥の匂いが、夕方の色とやたらとマッチすると感じるのはきっと私だけじゃ無いはずだ。と青木はどうでも良い事を頭に浮かべていた。

このスーパーは青木が学生の頃から通っていて、顔馴染みとなった惣菜売り場のおばちゃんがいる。惣菜売り場の横を通り過ぎようとしたその時
「そうちゃん、そうちゃん」と青木は後ろから声をかけられた。
振り向くといつものおばちゃんがいた。
「今日も元気そうだねぇ、おばちゃん」
「あんたはいつもそれから始まるね」とおばちゃんはいつも通りゲラゲラと笑って見せた。
「で、今日はあいちゃん迎えにいかなくていいのかい?」おばちゃんは唐突に訪ねてきた。あいちゃんとは、青木の娘の事である。

「今日は塾で遅くなるみたいだから。」とボソっと青木は言った。
青木は最近、高校受験を控えた娘とうまく話せていない。
なぜかいつも余計な事を言ってしまい、娘をイラつかせているのだ。
「あいちゃん、北高目指しているんでしょ?夜まで頑張ってるって言ってたし、これ。売り物にならなかった失敗作のコロッケだけど、持ってきなさいよ」と言ってプラスチックの容器に入った形の悪いコロッケを渡された。
そんな笑顔で渡されたら受け取るしか無いじゃあないか。と思いつつも、青木も笑顔で、「おばちゃんありがとね」と伝え、その後、おばちゃんの最近の趣味を聞かされ、15分も話し、おばちゃんは満足気に、「あいちゃんによろしくね〜」と言って帰って行った。

夕食の買い物を終え、青木は自宅へ着いた。
自宅は、築20年となかなか古いアパートではあるが、風通し、日当たり抜群の晴れの日が最高に気持ちの良い住んでみなきゃ分からない良さのある物件であり、何にでも良いところを探すのが上手い青木にとっては、かなり満足のいく家である。

夕飯の支度をし、娘の帰りを待ちながら、仕事を始めた。



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