狭心症の話
狭心症とはどんな疾患?
狭心症とは、心臓を形作る筋肉(心筋)を養う血管(冠動脈、冠状動脈)の血流が悪くなって、酸素不足や栄養不足になることで生じる、胸部の痛みや圧迫感を伴う疾患を指します。この痛みは短時間で治まるのが普通で、長くても15分程度、多くはそれよりも短い時間で治まるとされています。
なぜ血流が悪くなるかというと、これまでに何度も出た「動脈硬化」が原因とされています。動脈硬化が起きると血管が硬くなり、しなやかさが失われてしまいます。また、コレステロールなどの沈着で内腔が狭くなるといったことも起きてくるために、普段から血流が悪くなりがちな状態になっています。
そんな時に、もし運動をするとどうなるでしょうか。もし走ったとすると、当然心拍数は上がります。普段は70回くらいだったとしても、一気に100回くらいになることもあるでしょうから、心臓から送り出される血液の量も増えていきます。そのために心臓自体も自分を養う血液が多く必要になりますが、しかし血管の方は狭くなっていて流れがあまり良くないとしたら、心臓は悲鳴を上げるといったことになるでしょう。胸痛などの症状が出てきて不思議ではありません。
狭心症のタイプ
上に書いた通り、運動すると胸痛を起こしやすくなるので、あまり運動しない方が良いかもしれませんが、狭心症には大きく分けていくつかのタイプがあります。
労作性狭心症
運動というほど体を動かさなくても、狭心症の発作として胸痛などを起こす場合があります。たとえば階段や坂道を上るときや、重い荷物を運ぼうとした時、中にはミーティング等で大きなストレスがかかった時、スポーツ観戦などで興奮した時というように、肉体的な労作や精神的な労作が原因となって胸痛が起きることがあります。引き起こす原因がハッキリしているので、この労作を起こす原因を遠ざけたり、安静にしたりすることで治まります。
安静時狭心症
運動やストレスがなくても、睡眠中でも胸痛を起こすことがあります。このタイプの狭心症を「安静時狭心症」と呼んで、労作とは関係なく引き起こされるタイプとして分けています。心拍数などは自律神経の調節を受けていますので、この緊張のバランスが崩れやすい時間帯、言い換えれば緊張が交代するような時間ということになると、早朝辺りになってきます。リラックスして眠っている状態から、起きて活動するように体の状態が変化していく頃合いですから、この時間帯に胸痛の発作が起きやすいとされています。冠動脈が動脈硬化によって内腔が狭くなり、自律神経の失調などで起きることから、冠攣縮型狭心症と呼ばれる事も有ります。攣縮(れんしゅく)とは、けいれんのような状態で起きる収縮といった意味です。
不安定狭心症
胸痛の発作が出て発症したあと、急速に心筋梗塞に移行しやすいというパターンの狭心症の人がいます。これらは上の2つとは別に「不安定狭心症」と呼ばれます。
胸痛発作の回数が増えたとか、発作の持続時間が長くなったとか、あるいは労作時に起きていたものが安静時にも起きるようになったとか、そういった場合もこのグループになるとされています。通常、狭心症の発作の起き方はそれぞれの人で決まったパターンがあるのですが、これが変化していくような例は要注意です。この項の最初に書いた通り、急速に(最初の胸痛発作から早ければ1~2週間で)心筋梗塞に移行する可能性があります。
もし共通の発作が起きたら
先ず症状ですが、締め付けられるような胸の痛みが特徴的とされています。特に前胸部の激しい痛みがありますが、ハッキリとした表現がしにくいものといわれています。その他にも、動悸や息切れ、圧迫感などがありますが、それだけが症状ではありません。冷や汗や吐き気、息苦しさといった症状を伴ったりします。
場所も胸のあたりに限らず、頸やあご、腹部、肩など、広い範囲に及ぶことがあります。反対に「この場所」と指で示せるような狭い範囲の場合は、狭心症ではない可能性が高いようです。
こういった痛みが突然起きたり、冷や汗が出たり吐き気を催したりする場合は、直ちに医師に相談していただくことをお勧めします。