見出し画像

黄疸の話

黄疸とは

黄疸という言葉、最近あまり耳にしなくなった気がしますが、どうでしょうか。新生児黄疸という言葉は存在しますが、今話題にしているのは肝臓ですから、対象は大人です。大人の場合、何も問題が無ければ黄疸は起きませんから、これが起きた時は肝臓に何かトラブルが起きているはず、そういうことになりますね。

黄疸というのは症状で、見た目にも体に何かが起きていることが分かる、そんな状態になります。黄疸を引き起こす原因物質は「ビリルビン」と呼ばれる黄色い色素のようなもので、肝臓に何もトラブルが起きていない時でも、少量が血液中に存在します。これが、何か肝臓に疾患が起きたり、肝機能が低下したりした時に、発症することがある、そんな症状です。

ビリルビン、胆汁、油の消化

黄疸を引き起こす原因となる物質ですが、ビリルビンと呼ばれています。臨床検査項目ではごく一般的なもので、血液(血清)を使って普通に測定されているものです。一般的に、患者には関わらない事ですが、ビリルビンは紫外線に弱いという性質があって、仮に血清を保存するに必要がある場合は、アルミホイルを巻くなどの処理をして遮光する必要があります。そのうえでフリーザーに保存しますが、これはあくまでも臨床検査室の中での処理の話です。

ビリルビンは何からできるかというと、古くなって壊された赤血球を処理する時にできる黄色い色素物質で、元はヘモグロビンです。これは肝臓を経て胆汁中に捨てられるのですが、血液中を通って肝臓に流れれていくので、通常の血液(測定は血清で行う)中にも少量含まれることになります。

ビリルビンは全体量を「総ビリルビン」と呼びますが、あえて「総」と付くだけあって、2種類存在します。一つは肝臓に行くために流れているもので、これを「間接ビリルビン」と呼びます。また、肝臓で処理された後に血液中を流れているものを「直接ビリルビン」と呼んで区別しています。この両者を合わせたものが「総ビリルビン」で、肝臓が正常であれば血液中には多くても 1.0 ㎎/dlほどしかありません。

そしてこのビリルビン、肝臓から多くは胆嚢に行って胆汁酸の成分になります。胆汁の中に捨てられるといった感じですが、それはそれでちゃんと役割を果たしています。胆汁は食餌として摂取したモノの中に含まれる油の成分を分解する所に関わって、消化吸収を助ける働きを持っているのですが、ビリルビンは別名胆汁色素とも呼ばれ、この油分の処理を助ける役割を受け持っているんです。

そのためでしょうか、胆嚢を取った人はてんぷらを食べると必ずお腹を壊すといった人が昔はいました。おそらく、油分の処理が上手くいかなくなっているからでしょう。胆嚢では胆汁を濃縮してから消化管に分泌しますが、胆嚢を摘出した人は濃縮前の状態で肝臓からそのまま分泌されます。ですから、あまり大きな影響はないと考えてよいのですが、油分が多いものを食べるとお腹を壊しやすくなるのは事実です。実際、医療機関では胆嚢を摘出した人には、脂肪分の摂取に注意するようにと指導しています。普通の食事であれば特に問題はありませんが、ポテトチップスや天ぷらといったものには注意が必要になるようです。

話を戻すと・・・

話が逸れたので戻します。黄疸はそのビリルビンの量が増えて、血液中の濃度が高くなってきた状態です。よく言われるのが白目の部分。ここが黄色味を帯びてくるので、見た目で分かりやすい場所です。ビリルビンの流れが「赤血球が壊れる」→「肝臓」→「胆汁」→「消化管」の順ですから、特に「肝臓→胆汁」や「胆汁→消化管」のあたりで管が詰まって逆流した時に、血液中に量が多くなります。胆管閉塞と呼ばれるような状態が、それに当たります。胆汁のうっ滞と呼ばれる状態でもありますね。

肝硬変のように、肝機能が非常に悪くなった時にも、ビリルビンは処理が出来なくなって血液中に増えてきます。その原因を取り除くことが、基本的な治療として行われます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?