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デキストリン
今回はデキストリンを取り上げます。この名前も食品添加物のリストの中でよく目にするものですね。糖質関連のものが並んでいるような印象のある名前ですが、いったいどのようなものなんでしょう。
デキストリンは、トウモロコシやイモ類などに含まれるデンプンを酵素などで分解してサイズを小さくしたものです。だから聞いたことがある名前だったんだ。デンプンは糖の分子がズラリと多数並んだ構造をしていますから、これをある程度細かく切って分解していったとしても、複数の糖が並ぶことには変わりありません。そのため、多糖類といった表現をすることもあるようです。
デンプンの分子を分解する方法ですが、一般的には酵素を用いての反応を行う事になります。とは言っても、他にも酸や加熱処理による方法もあるようです。このデキストリン、前回取り上げたたん白加水分解物と同様に、分類上は食品という事になっていて、食品添加物になっていないのだそうです。なんで? 調べてみましたが、キチンとした理由までは分かりませんでした。
食品とされる理由はともかくという事で横に置いて、どの様な理由でデキストリンは用いられるのでしょうか。この辺りはデキストリンがどのような働きを持つかが分かれば解明できるでしょう。デキストリンには次に挙げるような特徴があります。
・食品に適度な粘りをつける
・分離を防ぐ
・粉末食品をサラサラで均一の状態に保つ
分離を防ぐというのは、食品の組成を均一にするといった意味なのでしょう。この件について調べていると、同じような名前の物質で「難消化性デキストリン」というものが出て来ました。これはいったい何だ?
どうやらデキストリンという多糖類のグループの中の小さなグループとして、難消化性デキストリンというものがあるということでした。という事は、広い意味では同じグループという事なんですね。だから同じような名前になっているという事でした。
同じグループですから、どちらもデンプンを分解して作られる物質です。この場合は食物繊維と言ってもよいでしょう。大きなグループのデキストリンが食品の扱いになっているわけですから、難消化性デキストリンも同様に食品添加物ではなく食品として扱われるという事でした。
難消化性デキストリンは小腸では吸収されにくいという性質があるようです。そのため、小腸ではどちらかというとスルーされるようですが、大腸に至ると難消化性デキストリンは発酵されて、腸内環境を整える働きを発揮します。それに加えて、糖や脂肪の吸収を抑える作用があるともいわれています。これは、食後は必ず血糖値や中性脂肪値が上昇するのですが、こういった血中濃度の上昇が気になる人にとっては、別の意味で注目したい成分ですね。
さて、難消化性デキストリンは食物繊維の一種ですので、こちらも以下のような特徴を持っています。
・水に溶ける
・消化されにくい
・腸内環境を整える機能があり、便秘などの解消に役立つ
・糖や脂肪の吸収を穏やかにする
これによって、食後の血糖値や中性脂肪の値の上昇を抑える機能がある
最後の機能は食物繊維に期待される働きとして注目を集めているものですね。加工食品を製造する企業などにとっては、外すことのできない物質でしょう。実際に、ほぼ無色で無味無臭という事ですから、飲料に混ぜて摂取しやすくしているものなどが市販されたりしています。
話は戻りますが、デキストリンはデンプンの分解産物ですが、糖類ほど細かくなっていません。デンプンと糖類の中間辺りになります。そのため、血糖値の上昇も生じます。といっても糖類ほどの強さではありませんが、それでもデンプンよりは強いという事でした。
一方で難消化性デキストリンですが、栄養強化の目的で食物繊維として加える他にも、増粘剤や安定剤としての働きで加える場合もあるということです。それじゃ食品添加物じゃんと思うのですが、私たちには分からない、化学的なのか栄養的な意味なのか、それとも製造上の問題なのか、詳細は分かりませんが、もっと突っ込んだ理由があるんでしょうね。
そのうえでの話ですが、難消化性デキストリンは、日本の厚生労働省や米国FDA(食品医薬品局)で、摂取量の上限値を明確に定めないほどに安全だとされています。ただ、過剰に摂取をするとお腹を壊すといった可能性があるとの指摘もありますので、摂取の量は過剰にならないような範囲になるよう注意してください。