腎臓の病気 糖尿病性腎症の話
腎臓と糖尿病との関わり
以前、今年の6月頃に取り上げていました糖尿病の話題の中で、合併症の一つとして糖尿病性腎症(または糖尿病腎症、ここでは糖尿病性腎症に統一します)に触れていたことがありました。糖尿病の3大合併症の一つとして一通り書いていましたね。今回もう少し詳しく書こうと思います。
まず、糖尿病の3大合併症、「しめじ」の中の「じ」が腎疾患というものでした。合併症では他にも「えのき」なるものがあるとか、脳で起きる糖尿病の合併症の一つとして認知症を挙げる人もいるといった話題も書いています。
昨日も書いた通り、糖尿病性腎症(に限りませんが)は悪化すると人工透析の導入が必要になる場合が出てきます。実際に透析中の患者さんがなぜ人工透析が必要になったのか、その理由を調べた結果、4割近くの人が糖尿病性腎症だったということですから、絶対にこれは侮ってはいけません。
糖尿病が関連する腎症とはどのようなものかということですが、腎臓の病気ですから、この場合もすぐに発症するわけではありません。高血糖状態が続くことで腎臓の中の細い血管(例えば糸球体のような場所)が傷ついていきます。そのため、糖尿病があって腎臓にダメージが溜まりつつあっても、最初は無症状といった例が多くみられます。ただ腎臓の機能は老廃物を体外に出すことで体内を良い状態に維持することですから、腎機能の低下によってこの調節が上手く出来なくなっていきます。
こうなると、様々な症状が出てきます。合併症も出てきやすくなります。機能低下がどんどん進んで末期腎不全にまでなってしまうと、腎臓はもう自らの機能を十分に果たせなくなり、人工透析を受けることで腎機能を肩代わりさせなければならなくなります。
症状や検査について
糖尿病が原因ですから、そちらの治療や処置が必要になります。具体的には血糖のコントロールをしっかりと行なう事です。最初のうちは腎機能は特に低下はしませんので、この間にしっかりと糖尿病の方の処置を行なえば、腎機能を悪化させずに済むことも出来るでしょう。
しかし血糖値のコントロールが思わしくなかったり、患者さんご本人の病識に問題があったりしないとも限りません。そうなると腎機能は次第に低下していきます。そして、血管の動脈硬化が進んでいくので、血圧の方の処置も必要になってきます。この頃になると、尿中にタンパク質が少しずつ認められるようになってきます。
尿中タンパク質は腎機能の低下に伴い、次第に増えていきます。そうなると血糖コントロールや血圧の処置以外に、タンパク質の摂取を制限するような食事療法も加わって来ることになります。やがて尿量も減っていき、腎機能の回復が見込めなくなると、人工透析の導入を検討することになります。
糖尿病性腎症も、最初のうちは特に症状はありません。自覚症状も、特にはない例が多くみられます。ですから、この時点で発見するためには、尿の検査が必要になります。それも普通に行う尿検査以外に、微量アルブミン測定と称する検査なども行なわないと、判断できなくなってきます。
通常の尿検査でも尿タンパクが検出できるようになる頃には、腎機能の低下で見られるような自覚症状が出てきます。たとえば、むくみや息切れ、胸苦しさ、食欲不振などであり、腎機能の低下が進むにつれて、体がだるくなったり疲れやすくなったり、吐き気、手足がつりやすくなるなどの自覚症状も現れてきます。
ここまで腎機能が悪化すると、腎臓の回復は見込めなくなってしまいます。ですから、出来るだけ早く、糖尿病性腎症をみつけることが必要になります。
あと食事療法ですが、最初のうちは血糖コントロールのための食事療法ということになりますが、腎機能が低下するにつれて、カリウムや塩分摂取の制限が加わります。腎臓の悪化に伴って制限される量も増えていき、同様にたんぱく質の摂取量も制限されることで、摂取してよい量が減らされていきます。
何よりも、生活習慣の見直しや改善、体重を適正な状態に維持するなど、当人の努力も必要です。