肝膿瘍の話
肝膿瘍って何だ?
肝臓に膿が溜まっ状態を指します。膿は白血球等の免疫細胞の死骸や壊れた組織、死んだ細菌などを含む不透明は液状のもので、時に悪臭を放つことがあります。一般に傷口があって、そこから侵入した細菌などの感染によって生じるのですが、免疫の防御反応の結果なので、これ自体が異常なわけではありませんが、膿によって痛みを感じたり、量が多いと周囲を圧迫したりすることもあります。膿が出ている場合は、その原因となる感染の場所があるので、そちらの治療を中心に行われます。
肝膿瘍とは、肝臓の中に膿が溜まった場所(膿瘍)があるという状態を表現しており、場合によってはこの膿瘍によって肝臓の周囲の組織が圧迫されたりします。肝臓で起きた感染といったものなので、治療も感染に対する処置が行われることになりますね。
肝膿瘍は大きく分けて、細菌などの微生物によるものと、アメーバによるものとの2種類が存在します。
細菌性肝膿瘍
化膿性肝膿瘍とも呼ばれ、文字通り細菌を中心とした微生物が原因で引き起こされるものです。直接の原因は細菌などが肝臓に入り込むことで感染し、化膿して膿を出すことによりますが、なぜ細菌などが肝に侵入するかというと、いろいろな原因が考えられます。
胆管が何らかの理由で閉塞を起こして胆汁がうっ滞して、腸内細菌が悪さをした挙句に胆管炎を引き起こし、そのままその菌が上流である肝に侵入して膿瘍を起こすことがあります。胆管が閉塞する理由は、胆管結石や肝胆道系の辺りにできた腫瘍などです。
他の理由としては、腸管で何らかの感染が生じ、門脈を通じて肝に侵入して膿瘍が生じる例もあります。こちらの原因は虫垂炎、潰瘍性大腸炎等が挙がっているようです。
実際には、原因が特定できないような肝膿瘍も多々あるとのことで、いずれの場合も、細菌性の肝膿瘍は多発することが多いとされています。
アメーバ性肝膿瘍
こちらは細菌ではなく、アメーバ(原虫)によるもので、主に赤痢アメーバによるとされていますが、もちろんこれ以外にアメーバも原因となることがあります。
赤痢アメーバですから、赤痢の症状を呈することになります。まず、赤痢アメーバのシスト(休眠している状態)に汚染された食物を口にすることで感染します。これが小腸で栄養型(つまり活動型)に変わり、大腸で潰瘍を作って血便や下痢、腹痛などを起こします(腸管アメーバ症の状態)。そして皮膚や肺などの腸管以外の場所でも病変を起こすことがあります。肝膿瘍はこのアメーバが血流を通って肝に達したのちに膿瘍を作った状態です。
肝膿瘍の症状・検査・治療
肝臓は全身の代謝に関わる臓器ですから、ここがトラブルを起こすことで全身の倦怠感、悪心、発熱、あるいは嘔吐などが症状として見られます。ただ、これらは特定のものではありませんので、症状だけで判断することは困難です。また、右側の上腹部痛、胆管閉塞などがある場合は黄疸も、症状として現れます。
アメーバ性の場合、血便の症状がみられるのが一般的ですが、必ずしも全ての症例で血便があるかというと、どうやらそうとも限らないようです。また、先に書いた症状なども、全ての症例で出てくるとは限りません。
肝膿瘍は細菌やアメーバの感染で引き起こされるものなので、炎症に対する反応が見られます。白血球が増えてくるとか、CRPが上昇するとか、他にも肝胆道系の酵素項目の数値が上昇するなどが見られます。画像診断として、腹部超音波検査や腹部CT等も活用されます。
肝膿瘍はいずれも場合も感染症ですから、抗菌薬などを使用して原因となる感染に対処する事に加えて、膿瘍に溜まった膿を抜き出すことも行なわれます。
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