腎臓病でよく見る症状 貧血
腎臓と赤血球
腎臓は尿を作って老廃物を体外に出す働きがある、これはご存じのことですが、それ以外にも数多くの働きを持っています。そして、腎臓の特徴として、大量の血液が流れ込んで処理をするという点が挙げられます。この意味では、心臓も、肝臓も、肺も同じことになるのですが、腎臓に限って言えることがあります。老廃物をこし出す時には、赤血球などはふるいがけをする上で邪魔になるということ(邪魔とは変な言い方ですが)。その邪魔な度合いがすなわち、血液の濃さ、言い換えるなら赤血球の数が多いか少ないかということですね。
赤血球が少ないと感じたら、腎臓としては効率が良いのですが、身体として考えるならこれは困りごとです。これはいけないということで、赤血球を作らせようとする働きが出てきます。エリスロポエチンというホルモンが腎臓から出て、骨髄を刺激して赤血球を作らせようとする、そんな事もしているんです。
本来、貧血とは赤血球の数のことではなく、赤血球の中に存在するヘモグロビンというタンパク質の量が少ないということを意味します。これが少ないと肺で酸素を多く受け取ることが出来ず、そのため運ぶ酸素も少なくなってしまう結果、細胞単位での呼吸がし難くなります。そのため、動悸や息切れといった症状が出てしまうわけです。実際に腎不全を起こして人工透析を受けている患者さんでは、赤血球の数が成人の半分くらいという、かなり強い貧血状態になっていたりします。
エリスロポエチン
何とも奇妙な名前のように感じるかもしれません。赤血球は通常、RBCと略すことが多いので、違和感を感じるかもしれませんね。RBCとはRed Blood Cell(血液中の赤い細胞)という意味ですが、赤血球の別名としてエリスロサイトという名称もありますから、エリスロポエチンは納得の言葉なのです。
エリスロポエチンは腎臓で作られ、先ほど書いたように骨髄を刺激して赤血球を作らせます。反対に、腎臓が悪くなるとエリスロポエチンの量が減ってしまい、赤血球を作る能力が下がってしまって貧血になります。この状態を「腎性貧血」と呼びます。正確には、他の貧血が起きていないこと(例えば鉄欠乏性など)を確認したうえでとなります。
症状としては、先に書いた通り動悸、息切れがありますが、それ以外にも疲れやすくなるとか、めまいを起こしやすくなるとか、一般的な貧血の症状が引き起こされます。ゆっくりと進むためでしょうか、体が慣れてしまうのか、あまり自覚症状を感じないことが多いようですね。腎性かどうかは別にしても、ちょっと疲れやすくなったとか、体がだるくなりいやすいとか、そんな症状があれば一度注意してみることも必要です。
診断と治療
腎性かどうかは別にして、貧血の診断は赤血球ではありません。赤血球中のヘモグロビンの量で行ないます。加えて年齢や性別を加味したうえで行なうことが妥当とされています。
腎性という場合は、貧血を起こす他の要因を除外する必要があるため、いろいろと他の検査を実施することになったりしますが、最終的にはエリスロポエチンの量を測定することになります。減っていれば腎性貧血の可能性が高いということになりますね。
さて、貧血ですから血液を補うということは誰でも思いつくことですが、それ以外に行なうこととして、不足しているエリスロポエチンの補充ということも考えられます。他にも、エリスロポエチン自体の補充以外に、エリスロポエチンを作らせる薬というものを使用することもあるでしょう。
腎性貧血は腎臓自体に何らかの問題があるわけで、それによる貧血ですから、疲れやすいとか体がだるいとか、そのように日常生活にいろいろと支障をきたすことも出てきます。また、貧血の度合いが強いほど、腎不全になってしまう可能性も高くなるとされています。反対に、こういった疲れやすいなどの症状を改善させることで、心臓の方の負担が軽くなります。慢性腎臓病への移行も、それなりに可能性が少なくなるでしょう。