
思いやることは難しい。
今日、仕事中に郵便物が届いた。
郵便物が届くといっても、うちの職場は、たくさんの書類が届く部署だから、いつも通りの光景だ。
慢性的な人手不足を抱えている、うちの部署。
毎日届く大量の郵便物は、アルバイトの方が開封してくれている。
ただ、今日に限っては珍しく、いつも休まないアルバイトさんがお休みだった。
じゃあ、私が開封作業をやっちゃおう。
そう思い、上司に話しをつけて、郵便物を開封することにした。
「今日も大量だ~。早く終わらせちゃおう。」
そんなことを考えながら、開封作業を進めていた。しばらくすると、ある封筒で作業の手が止まった。
「何これ…?」
見た目は、A4サイズが入るごく普通の茶封筒。開封してみると、中に入っている書類も何も問題がなさそうだった。
ただ、何かがおかしい。
「わかった…。匂いだ。」
たまに、ほんのり匂いがついた紙が売られていたりもするけど、そんなレベルではない。明らかに、意図的な匂いが付着していた。
封筒と書類を持った私の手に匂いが残る。
「なんだろう。もしかして、香水…?いや、私の鼻がおかしくなった…?」
いろいろなことを考えているうち、次第にその匂いに私の体が汚染されていくのが分かった。
時間はお昼頃。もうすぐ休憩だし、今日はランチに何を食べようかな?なんて考えるはずが、徐々に食欲を失っていく自分に気がついた。
「だめだ…この書類から早く手を離そう。」
もしかしたら、自分だけが変な匂いに感じるだけかもしれない。何かの間違いかもしれないから、あえて誰にもこの件は伝えないでおこう。
そう誓って、素早く作業を終えることだけに集中した。
「ふぅ~。やっと開封終わった~。」
作業を完了させる頃には、集中したからだろうか。例の匂いからは解放されて、食欲も回復していた。
「今日のランチはカレーにしよ~。」
そこには、匂いを匂いで打ち消すかのように自然とカレーを思い浮かべている、自分がいた。
休憩時間に入り、カレーランチを楽しんだ私は、職場に戻ることにした。自分の席につくと、いつもは静かな職場がざわついていることに気づいた。
なんだろう…。
「香水は物によっては、匂いがきつかったりするよな~。」
例の匂いつきの書類のことで、ざわついているようだった。
どうやら、先輩たちの見解も、香水が付着しているのではないかということだった。
なぜ、送り主はそんなことしたのだろう。
分からなかったので、家に帰ってから、Google先生で調べてみることにした。
「手紙 書類 匂い なぜ」
適当なキーワードで検索したところ、いくつかキーワードに関連したページを見つけることができた。
読んでみると、手紙に香水をふりかけて送る文化があることが分かった。そして、そのページには、相手を思いやって手紙に匂いをふりかけましょう。といったことも書かれてあった。
普段、私は香水をつけないからか、手紙にわざわざ香水をふりかけるなんて思いもしなかった。
「そんな文化もあるんだな。今回の書類の送り主も、私たちのことを思いやってくださってるんだな。ありがたいな。」と思った。
ただ、その一方で、匂いの選び方には注意が必要かもしれないとも思った。
好む匂いは、人によって違うからだ。
香水をつけない私でも、家でアロマはたいたことがある。だから、アロマに置き換えて考えてみる。
アロマをたくさん置いているような、お店に行くと、いろいろな種類の匂いがあることに気づく。
テスターと書かれた、匂い入りのビンを手に取って開けてみると、どれも匂いが違うから面白い。
店員さんに 「おすすめはどれですか?」と聞くと、「これが1番人気で~。」とか「私は個人的にはこれが好きなんです~。」とか会話に花が咲く。
でも、私の場合、誰かが良いと思ったアロマより、自分が好むアロマを買ってしまうことの方が多いように思う。
自分の好みの匂いってある気がする。
万人受けする匂いが何なのかは、よく分からない。お茶とかヒノキになるのだろうか。
でもきっとそんな匂いでも、あんまり好まない人も中にはいるのだろう。
そう考えると、手紙を送る時、あえて何かの匂いをつけたいのであれば、自分が好きな匂いをつけるよりも、相手が好む匂いをつけて送った方が喜ばれるのではないだろうか。
そして、相手の好む匂いを把握するためには、相手のことをよく知る必要があるようにも思う。好きな匂いの話は、普段の会話で頻繁に出てくる話しではないように思うから、ある程度仲良くなって話すことが必要かもしれない。
今回、私が出会った匂いつきの書類は、仕事上のものだった。だから、誰が開封するかなんて分からないし、誰が手に取るか分からない。
匂いをふりかけるには危険を伴うものだったように思う。
誰かが良かれと思ってやっている文化を否定しようとは思わない。受け入れて、共存していけばいいのではないかとも感じる。
ただ、不特定多数に送るものの場合は、匂いを最小限度にするか、ふりかけない方がもしかすると無難かもしれない。
誰かを思いやる気持ちを無下にしないためにも。
思いやることは、難しい。
そんなことを考えさせられた日だった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
以上、みいちゃろでした!