【サイバーエージェント、Cygamesに学ぶ急成長組織における10の組織法則と10の事業、サービス作りの法則】
前段
自身、サイバーエージェントにおける売上成長角度が約50億円弱から1,000億円まで急上昇したストリーム時代10年間に属しておりました。またCygameでは2年で従業員800人、驚異的な売上利益をあげ、ユヴェントスF.C.とのスポンサー契約をするまでとなりました。2019年には売上1,000億円突破、経常利益195億円を突破しました。客観的には驚異的な数字ですが、当事者として組織に属していた時は、それが当たり前だったので、驚異的なことにも気づきませんでした。
ただ思えば、その当たり前が凄いことだったと気づかされます。
「そりゃ成長できたはずだと!」思い返すことが多くあります。
外から見るのと中にいるのでは、全く見る世界も感じ方も異なりますし、ディテールに触れる機会も異なります。
今回は、その当たり前だが、成長のポイントに関して「組織論」と「サービス論(BtoB、BtoC共に)」それぞれ10項目に渡って、お伝えできればと思います(勿論言えないことは控えます)
■組織面
①採用と育成はあくまでセット
まず採用には全力を尽くすことです。具体的に言うと、役員レベルが良い求人者のためなら、社内会議より面接を優先します。なぜならは最初のきっかけとして、活躍できる人材を採用すると、ある意味半分は勝利だからです。
さらに採用が強くても育成が微妙だと、全く業績は伸びません。むしろ大事なのは育成だったりすると思うこともありました。
まず、育成でいうと、採用で一定のフィルターをかけるため、どういう人を採用するかの共通認識を面接者は持つべきかの研修も当初ありました。そのための面接のテクニック、方法を面接者全員が身につけているので、入社する方の一定のレベルは担保できています。スキルチェックはもちろんあるのですが、それ以上にカルチャーフィット、仕事に関する考え方で採用するのは言うまでもありません。スキルはよほどの専門性がある場合を除き、身につくものだからです。中途半端なスキルを持っていて、その後、成長のない人より、少しスキルは足りなくても短期的に大幅にスキルを伸ばせる人の方が組織にとっては有益な人です。
さて、その後の育成ですが、配属初日から一週間が最も大事です。
キャリア入社の人だと、どうしても今までの経験、前職の価値観を引きずります。それがその会社にとってシンクロするもの、親和性のあるものであれば良いのですが、全てがそうとは限りません。面接を突破してきているので、最低限の素養は問題ないとして、いざ仕事をし始める初日に「人事×上司×該当部門の責任者」この三つ巴が全く同じ価値観かつ異なるアプローチで育成コミュニケーションに望むことが大事です。
最初に人事制度などの情報に加えて、なぜそうしているのか、我々は何を目指しているのかを繰り返し、それを強制ではなく、入社者がハラオチするまで伝えるのです。
人事は会社全体の健全性と成長していく戦略と、組織が大事にするもの、そして何かあれば人事としてサポートするということ。
上司は貴方の成長をサポートしていうこと、一緒に進んでいこうということ、そして期待を大いにしているということ。
該当部門の責任者は、その部門がどういうポジションに組織の中であるかということ、それが組織の中で最も重要なポジションであるということを。
全て前向きかつ真剣に伝えることです。
②マネージャーのあるべき姿
組織でマネージメント層が強いこと、その組織流のマネージメント手法が確執していること、それらは前提として必要で、そうあるべきことは素晴らしいことです。ただ、基本リーダーシップの取り方として、個性を活かした方がパフォーマンスが発揮されやすいケースもあります。優しいマイルドなマネージャーがいても良いし、厳しい静かなマネージャーがいても良いし、要は「チームとして成果が上がることが最も重要」という考えが大前提です。極論、メンバーに対して敬語でも良いですし、ある程度上目線の伝え方でも良いわけです。しいて言うと甘すぎるリーダーが正直微妙かもしれません。またメンバーに何とかして好かれようとするマネージャーも同じくらい微妙です(結果好かれるのであれば素敵なことです)
そしてマネージャーはモチベーターでもないといけません。組織の向かうべき方向を、何度も繰り返しメンバーに伝え、方向を誤ったら、然るべく方向に導く姿勢を貫きます。
※マネージャーとリーダーの定義は組織毎に色々あるので置いておきますが、それぞれの定義は別にした方が間違いなく良いと思います。
さらに、マネージャーは正しい評価ができることも大事です。部下に嫌われることを恐れ、厳しい評価ができないマネージャーは無能です。さらにそのマネージャーの厳しい評価を、さらに上が認めない場合は、その上も無能です。
③業績を伸ばし、退職率減少につながる、カルチャー(風土)の考え方
会社は株主のものであったり(株式会社の場合)、経営陣のものであったりという考えもありますが、法人という名の通り法人格があり、人でいう性格にあたる、カルチャー(風土)が存在します。
会社に合った人材を採用して適した部署に配置し、その時々にあった仕事と責任を与えられれば、自ずと社員は成長できる=事業成長ができます。
ITベンチャーはスピード感を持って、ストレスなく、ヘイトが生まれず、社内で円滑なコミュニケーションをとり、意思決定を行い、業務を進めていくことが 求められます。=「阿吽の呼吸」でコミュニケーションが円滑にとれることが大事です。
よって、合う=マッチという意味で、阿吽の呼吸のコミュニケーションを実現するために、会社に特に共通して見られる「○○」を重視したカルチャーづくりや採用を行う必要があるのです。この○○は経営陣、トップが決めるものです。
例)リクルート
社内用語「会社がどうしたいかなんてどうでもいいんだよ。おまえはどうしたいんだよ」
⇒自分が社会をどうしたいかと考えている人が採用され、育成も行い、活躍し、要職を与えられる。
例)サイバーエージェント
社内用語「21世紀を代表する会社をつくるために仕事をしている」
⇒組織を自身でどう成長させるか、むしろ求心力としてさせたい。ビジョンを実現したいと考えている人が採用され、育成も任せられ、パフォーマンスも発揮し、要職を与えられる。
ここで勘違いしないでいただきたいのが、金太郎飴のようにどこを切っても個性が無いヒトの集団ではなく、最も大事とする、共通の考え、価値観、言動特性を持ったヒトの集団とするということです。
ダイバーシティを掲げている企業で、このあたりを勘違いしていることが結構多いかなと思います。共通の価値観がない個性の集まりは、むしろマイナスです。であれば、まだ兵隊組織の方がましです。
このカルチャー(風土)の考え方において、大事なことは出来るだけ、会社の創業時期、もしくは途中であっても、成長フェーズで必要な場合は、ある程度ダイナミックに変えることです。長い期間をかけて確固たるものしていくカルチャー(風土)醸成においては必要です。とはいえ、定点的な改革も場合によっては必要です。
極端な話ですが、能力が高くても、カルチャー(風土)に合わない人には早めの退職勧告を勇気を持って行うこと。またそのような人は評価しない。それに準ずる人も評価しないということもしていかないと、成長スピードが鈍化してしまいます。
④権限と責任の範囲
約40名を超えると第一の組織成長痛が発生します。その時に、権限と責任の範囲がしっかりしていないと、組織がなかなかスケールしません。ここはサイバーエージェントも、Cygamesも秀逸です。権限と責任というと、勝手に裁量を持って業務を進めるイメージもありますが、あくまで、経営陣とシンクロし、その業務において最も相応しい人間が、権限と責任を持つので、経営陣が思う方向にモノゴトが進みます。
まず「誰に任せるか」を誤ると、何をしてもダメですが、シンクロするのがうまい人、つまり、経営陣が何を考えているかを、自分ゴトとしてイメージできている人が、権限と責任を持ち、業務に携わります。
その上で、任せられた人間は報告は行いますが、その上長は、目標達成まで何を考えているかを、任せた人間にヒアリングを定期的にしつつ、アドバイスをします。基本、よほどのことがない限り決定権と裁量を持って成果にコミットします。その上長がアドバイス以上のことをしてしまいすぎると、一気にコトがうまく進まなくなるので注意しましょう。
一見自由に思えますが、権限に責任がセットでついてくるので、プレッシャーは相当です。
⑤役員同士のコミュニケーション
前項④と被りますが「管掌者以外に必要以上に口を出さない」ということを徹底しています。トップも人間で事業拡大フェーズにおいては、全てを見ることができません。そこで該当分野に強いかつコミット出来る役員に任せることになります。(もちろん質問や意見は言う)
役員同士のコミュニケーションにおいては、相性も大事です。ただ仕事上の相性です。プレイベートで飲みに行くことがあってもそれはあくまで仕事のためで、役員同士プライベートで仲が良いというのは、全く関係ありません。むしろプライベートが仲が悪く(決して友人ではない)ても、仕事上のパートナーとして成立すれば組織として問題ありません。
なお、役員の中でも、イチ組織のトップになれる資質があるタイプは、子会社やグループ会社を任せた方が良く、役員としては向いていないケースがあります。あくまで役員はトップの意向を飲んで、それを最大のパフォーマンスにつなげる役割が重要で、ボスタイプ(エニアグラムでいう8)ばかりの役員の集まりは、個々の能力は高くても組織としてのスケールを邪魔する要因にもなるので注意しましょう。
⑥評価に関して
評価のノウハウはあふれ、正しく評価されていない、という現場の声はいつの時代もあります。極論、上司と握れていれば、評価は非常に思いタスクではありません。例えば、上司が今期の評価はこうだ、分かってる?と問いかけた際に、部下がハラオチするか否かです。評価が高くても低くても、お互い納得感があることが重要です。ここに乖離があると、チームとしてうまく機能しません。
ここをうまくやっていくには、定期的なコンセンサスを取ること。細かい業務進捗の確認のための1on1はさほど必要なく、定期的に部下から「自分は期待に応えられているか」を上司に確認することです。これを習慣としていれば問題ありません。期待に応えられていれば、今の調子でいこう!になりますし、期待に応えられていない時こそ「何で?何が?」の穴埋め、差分を埋めていく必要があります。これをしていないと、いざ評価の際に、そんなはずでは・・・自分は評価されるはず、と部下からの不満が発生してしまいます。
これがサイバーエージェントもCygamesも、瞬間瞬間で出来ている、かつ出来ている人は組織とシンクロするわけで、必然と昇格、昇給に繋がっている傾向にあります。
評価が贔屓だ、みたいなことを言う人もたまにいますが、贔屓ではなく、上手く上司の期待と、それに応える努力をしている部下が、それを知らない人からはそう見えるのです。
⑦オフラインコミュニケーションに関して
結論、オフラインコミュニケーションは大事です。例えば、仕事後の飲みニケーション。これ自体は業務内なのか業務外なのか、不透明ですが、色々な意見があるでしょう。飲めよの一言はセクシャル・ハラスメントでもありますし。
実はこれ自体に意味はさほどなく、大事なのは、色々なコミュニケーションを通じ、より相手の理解を深めるということで、あくまで飲みニケーションはイチ手段です。ランチ、社内部活やサークル、何でも良いです。
ただ失敗するのは、オフラインコミュニケーションの場があった方が良いということで、そういう場を積極的に作ろうとし過ぎることです。手段が目的になっているということですね。そうするとやらされている感が強くなり、本来の目的が達成されません。「必然とそうしたいと社員が思う」こと自体がもっとも重要です。飲み会代の負担を会社がするなどは良き制度ですが、誤ると、会社が負担している費用が、単に飲み食いする場だけではなく、愚痴の場を設けることにもなりかねません。
管理職の人は、ある程度戦略的にオフラインコミュニケーションも図ることが大事です。そのメンバーと、どのタイミングで、どういうコミュニケーションを取るか、これを良い意味で組織ぐるみで行うことが大事です。目的は、視座感を高くする、抱えている課題を解決する、等で、そのために前向きなメンバー中心の編成とすべきです。また視座感が底辺の人間は、語弊を恐れずに申し上げると見捨てるくらいの勇気も上には必要です。
⑧表彰に関して
表彰制度も各企業、色々工夫しています。表彰に正解はありませんが、表彰の考え方は表彰のされ方と、される人は企業メッセージだということです。サイバーエージェントは、半期総会で、非常に感動的な演出を行い、大きな報酬も出します。
表彰されることが名誉であり、大きい意義とされています。
スポーツ選手でいうとオリンピックの表彰台を夢見ているのと同じく、自分がプロとしてい行っていることを認められる瞬間だからです。(演出ノウハウは別途・・)
演出のコストは、翌日からの表彰者、それを見た人の驚異的「ヤル気」で、結果、売上利益で十分還元されます。それほどモチベーションアップ、仕事をする上での動機づけは大事であると思います。
また、オリンピックだと記録(数字)だけで表彰されるか否かが決まりますが、企業の表彰で重要なのは、企業のビジョン、ミッションに沿った上で、活躍した数字であるかです。数字だけでいうとAさんがトップ、2位のBさんは表彰されないかもしれませんが、あえてBさんを登壇させる場合は、Bさんを模範してもらいたいためです。会社が認める人はBさんなのです(スポットの数字だけではなく継続的な貢献等の理由は必要かもしれませんが)。もしAさんを表彰する場合は、全社に相当なインパクトがある場合なら良いと思います。
よってある程度意図的に、誰を表彰するかは、表彰者を決める上層部で慎重に決めるべきです。現場の声(推薦)も含めて決めると良いでしょう。
⑨360度広報
売上や採用力、または上場企業であれば株価への影響において重要な要素になるのは、その企業のファクトの魅力です。
うちはこんな制度です、こんな活躍が出来ます、と一辺倒の情報を出しても、ありがちで埋もれて、見向きされないでしょう。
ここで大事なのは「発信者」+「定期的」+「多角的(立体的)」の3ポイントです。情報はスポットではなく情報も資産として積み上げていかないといけません。
■発信者
その企業のトップ、人事、広報、現場の管理職、現場の 五つ巴で、それぞれの目線で発信することです。トップがいうべきこと、人事・広報がいうべきこと、現場管理職がいうべきこと、それぞれのポジションだからこその発信が大事です。これが広報からだけ、社長からだけ、だと一辺倒で、組織としての魅力は感じません。現場も会社の情報をシェアしましょう!ではなく、必然とシェアしたいと思わせる雰囲気を作れていると非常に強いです。
Aさんの友人の優秀な社外のBさんに届くのは、社長の言葉ではなく、Aさんの言葉だったりします。これが出来ているとリファラル採用などに強みを発揮します。
■定期的に
週一でも、月一でも、四半期に一度でも構いません。一過性ではなく、意味を持って定期的に、企業ブランドポリシーの元、発信していくことです。「継続は力なり」と100年前の言葉ですが、1年間はある意味成果が出てくるまで我慢が大事です。数回の発信だけで成果が出ない、発信をやめようかとなってしまうのは、よくハマってしまう即レスポンスを求める、ITベンチャーの悪しきジレンマでもあります。戦略や目的がなく、とりあえず発信しておこう(って何のためだっけ)という場合も同様です。
■多角的に
一時期サイバーエージェントはキラキラ女子ブランディングなどという言葉もありましたが、それ一辺倒だと、まさに意味ないチャラい薄い企業価値に繋がります。あれはちょうど女性がより活躍できるということの示唆であり、良い意味で目立つ人を求めるという裏メッセージでもあります。
技術者の面から見ても、ビジネス職面から見てもという職種毎の広報。プロダクトの魅力を、ユーザー視点から、プロモーション視点からという視点の違いからの広報。トップや役員陣が何を考えているか、どこを目指しているかという企業ビジョンの面からの広報。それらを、どう伝えたいか、ではなく、どう受け取られるかを意識した戦略、施策が大事になってきます。これが出来ると、企業全体が筋肉質になり、着実な成長が期待できます。そのためには、あまりいないですがちゃんとできる「広報」を専任で置くべきです。
(話は脱線しますが、サイバーエージェントは美人が多いというのは、眉唾であり、顔採用はしていません。そう見えるとしたら、露出する人を選定する段階で、多少フィルターをかけているとか、何でも良いので学生時代に熱量を持って自己実現をした人や、自己プレゼンが出来る人を「仕事」というベクトルに同様に向けた場合は成果が出やすいというサイバー流方程式に基づくと、たまたまミス、準ミスみたいな人が紛れ込んで来るだけです)
⑩職種転換
ベースで仕事ができる人というのは、どんな企業においても程度の成果を出します。特にベンチャーではそういう人が大事になってきます。専門スキル以外に仕事の本質を理解し、そのバランスと柔軟性が優れているためです。また初の転職で以外の失敗するパターンとして、前職の価値観を引きずりすぎるパターンです。
何が言いたいかというと、専門性は大事ですが、狭い範囲で仕事をしていると、本当に考えも狭くなり、全くスケールしません。いわゆる昭和の中途半端な大手企業っぽい形で、使い物にならない中年になりえます。
ITベンチャーは職種間の相互理解や別職種の表面上の知見がより重要になってきています。よって、別部署、別職種にはどんどんデキる人ほど社内転職させて、早い段階にで社内のエースや幹部に抜擢すると良いでしょう。営業ができる人事、マーケティングを理解している開発ディレクター、デザインも出来るプロマネ、など、それはマイナスではなくプラスです。
ドラクエⅢでいうと、魔法使いと僧侶を両方を経験して初めて賢者になりえます。またいざという時に回復呪文を使える戦士や、剣を持っても戦える魔法使いなどは、めちゃ強いです。
職種転換されない人は、逆に自分大丈夫かな?くらいに思えることがベンチャーでは健全かもしれません。
プレッシャーを自身の常に与え続け、価値を出し続けていかないといわゆる社内でも社外でも「使えない」人になるので注意しましょう。
(話は脱線しますが、ベンチャーでCMOを名乗る人で、Webマーケしかもダイレクトレスポンスしかしらない、マスだけしか知らない、プロダクト戦略を全く知らない、事業サイド視点でエージェント、メディア視点が無いなどの人が多くおりますが、そのあたりはちょっと微妙だなと思っております。CEOがCMOを兼任するくらい、CMOは経営全体に影響を及ぼす重要なものです。逆にフロントエンドだけ、バックエンドだけ、Webだけ、Appだけ、マネージメントできないCTOも同様です)
■BtoC編
①売上を伸ばすという発想をあえて現場にさせない
この施策をしたら「売上(利益)が伸びる」この発想自体、全くユーザー、消費者にとってどうでも良いことです。この発想をもって仕事をしていると、結果として企業本位のサービスとなり、ユーザーや消費者は、その微妙な加減に気づきます。ユーザーは企業の売上貢献のためにお金を使うわけではありません。
この施策をしたら売上(利益)が伸びる、ではなく、何をしたらユーザーが喜んで、使いやすいか、この発想で仕事をすることが結果として、一定のサービス規模になり、その後の利用者の定着にも繋がります(結果売上(利益につながる))
なお、管理職以上はPL | BSベースで、売上、利益をしっかり見ていくことが大事ですが、現場にそれを共有は良いものの、売上自体を上げるためにという指示はしないことをオススメします。
(話は脱線しますが、管理職以上は売上、利益を見ていくといっても、そもそもが金儲け主義の人間を幹部に添えると、見事に上手くいきません。私腹を肥やすために企業を利用する、顧客、社員をないがしろにするお金の使い方をしている人も見たことはありますが、必ずや淘汰されていき、本当の意味で優秀な人は着いて来ません。)
当時対象的だったのは、某マーケティングメディアの取材でCygamesのゲームタイトルA、サイバーエージェントのゲームタイトルBが取り上げられた。両方プロデューサーのインタビューです。
施策において、Cygamesは何をもってユーザーにいかに楽しんでもらうか、にフォーカス。サイバーエージェント何をもってユーザーにいかに売上をあげるか、にフォーカス。サイバーエージェントはAbemaTV他、AWAに代表されるようBtoCサービスで多くのユーザーに指示を得ているが、なかなかそうでなかったサービスも多くあります。特にゲームにおいては、よりその傾向が強いです。
記事を見て「だからサイバーエージェントのゲームタイトルはヒットしないんだよ」と、某Cygamesの経営陣がつぶやいたのは新鮮でした。その通りで、サイバーエージェントで残念ながらゲームにおいてはヒットといえるタイトルが出なかったのはそういった一面もあります(いわゆる開発の思想の相違)
Cygamesが圧倒的スマホゲームタイトルの中で、今の地位にいられる一番の要因は、完全なるユーザーへの価値体験提供です(それだけではなくブランドの作り方や、マスコミュニケーション他、色々な要素は無限にあるのですが)売上を伸ばすという発想を現場にさせないといいうのは、CygamesのDNAとして、いくつかの子会社に伝わり、それらの子会社で、早々に月10億以上のタイトルは2本出たのは、その証拠でもあります。
②時代の流れに非常に敏感、古いことに固執しない
何でも新しいものは良いわけではない、藤田社長の一馬身の差が、気づくと十馬身の差の名文句の通り、サービスに取り入れることも、プロモーション手法も、非常に的を得た、まさに「今」のユーザーに共感されるものを「速攻」取り入れ「即効」成果を出していく。
当たり前だが、時代は変わる。過去の成功体験は無意味なものが多い。昨日のナレッジはもう古い。社内においてもままさに「今」何が必要かを常に見据え絶妙な制度や人材配置、教育体制をしいていく。
自身はプロモーションに携わることが非常に多かったのですが、オールドな無意味なものは全く無視、採用するにしても意味を持って行っていけたことは、非常に成果が出しやすい状況であった。他社に勝てる要素はここにもある。もちろんオールドでも良いものはそのままノウハウとして利用します。
③PDCAのPは左脳も右脳もバランス良く
大ヒット番組を作れるプロデューサーは非常にロジカルな人か、クレイジーな人とは、TV業界で以前言われてたことですが、まさにその通りだと思います。Pのタイミングも含めて、事例なきことは、仮説をいかに立て、それをDCAにつなげていくことであることは言うまでもありません。
そのPを誰に任せるか、これで半分は決まります。最終的にはこうしたいの熱量が大事ですが、前提として、客観的にこれは面白い面白くない、そして、なぜあれはヒットしたのか、理由や背景を分かっているような人が圧倒的に成功率が最も高いです。客観的にこれは面白い面白くないかの判断は一定トレーニングで身につけることができます。
とはいえ実際にセンスというスキルは存在します。時間とコストをかけた、100回のABテストより、わずか1ヶ月でそれを超す結果を出せることがベンチャーには必要な場面もあると思います。あとはそういう人を、どうチームに取り入れ、意見を通すという慣習を各分野で持っているかが、サイバーエージェントの強みでもあります。そうすると若手もそれを見て育つので、横展開が可能となります。このあたりはDeNA社も左脳のイメージが強いですが、同じく強いと思います。
④改善の速度とディテール
ベンチャーはスピード命、細部に神が宿るという言葉も懐かしいですが、これはその通りだと思います。
まず、リニューアルや回収はダラダラしない。一般ベンチャーが1週間かかるレベルのことを、サイバーエージェントも、Cygamesも1〜2日間で完了します。わたくしはそれが普通だと思っていたので、他企業が普通というより、他企業が遅すぎると感じています。WebやAppに関して、エンジニアやデザイナーがコトに向かうため、協力的なので、サービスを主導する側からすると、確実に「良くなっていく」ことが分かり、チームの雰囲気も良くなります。セクショナリズムがほぼ存在しません。何かあると、すぐ工数が、、と言われるとちょっと萎えます(無理やり稼働すべきであるということを言いたいわけではなく、時には瞬発力を持って、コトに向かうこともチームとしては必要なこともあるということです)
⑤ブランドの一貫性
どういうサービスを作るために○○をする、○○であること。当たり前のことですが、これが「ブレない」のと、このために「正しいこと」をする。このシンプルなことが、出来ていない企業が多すぎだなという印象が垣間見られます。
○○は事業のトップが決めないといけません。ビジョンはもちろんブランドアイデンティ、それがイコールマーケティングになります。正解はなく、その企業が好きなように作って良いといえば良いですが、これがおろそかだと、いわゆるショボいサービスになりえることは言うのまでもありません。何かあっても立ち返るものがないので、いわゆる施策が点になりバラバラになるためです。
このブランドのWhy、What、Howは非常に大事です(Apple社の事例は言うまでもなく分かりやすい)
マーケティングも、デザインも、開発制作も、広報も、場合によっては人事制度も踏まえてシンクロしていないと意味がないのです。それぞれの部門がどんなに尖っていても、消費者、ユーザーが使うサービスとしては、ぼやけて見えて、各購買心理におけるプレファレンスのスコアが低いのも特徴です。それくらい一貫性は大事です。
そして「ブレない」こと。言葉は風化するので、例えばベタですが、見える化して、オフィスの壁に貼っておく、常にメンバーに繰り返し伝えるなどが非常に大事です。カルチャーとして、決まったことに、あーだこーだいう企業文化だと結構辛つらいかなと思います。またブランドのアイデンティティを、いかに社員がハラオチできるものか、ハラオチしてもらうかも大事となります。突貫工事で何となく、それっぽいフレームで作ったブランドは非常に薄く、浸透しずらいので、しっかり最初に決めておくべきでしょう。
■BtoB編
①取引先に対するコミュニケーション
BtoBにおける取引においては、実績がないうちは、非常にハードルが高いことが多いです。今やサイバーエージェントといえば話を聞いてくれるところが増えましたが、当時は大変でした。良く営業力アップの本などもありますが、結構内容が薄いなといつも思います(基本は網羅されていても全てに再現性があるわけではないので)サイバー社内にいた方が本を10冊読むより実用的です。
2つほどお話すると、1つ目は基礎力を徹底的につけるのは当たり前とし、さらに応用力も身につけるというのも当たり前として、大事なのは「空気を読む」ということです。決裁者が50代であれば、そこに必要な空気を読む必要もあります。同じ50代でも、どういう属性の人かを知ってのコミュニケーションをが効果的です。
自身営業を受けることが多いのですが、それが出来ていない営業はいかに世の中に多いなという印象です。いきなり資料の棒読みをされると、本当眠くなります。とはいえアポに来ていただいた相手も顧客になり得るので、あからさまな態度には出しませんが。
これらは、もちろん言うほど簡単ではないのかもしれませんが・・
空気を読むには先輩の同行、先輩のアドバイス、そして何より徹底的に考えさせる文化が必要かなと思います。失注理由を決して相手先のせいにせず、何がいけなかったのか、どうすれば良いのかファネル式をで自分で考えないとなかなか力がつきません。
また、サイバーエージェントでは、歴代の先輩の多くのナレッジが活きているのも、ある程度、素直な人を採用しているからだと思います。
2つ目は「相手にコミットする」こと。言わずもがなですが、コミットを軽く考えず、当事者意識を持って、本当のコミットはクライアントには伝わります。これが出来る人も少ないですが、サイバーエージェントは、タイミングを大事にしています。いつ、どういうコミュニケーションを取るべきか、いつが早すぎても遅すぎてもダメで、ここぞという時に、営業っぽくないコミュニケーションを取るのが大事です。それが徐々に信頼に繋がり、長い付き合いに繋がります。
蛇足ですが、CygamesはBtoBコミュニケーションが得意な人が少なく結構苦労しました。
②ひたすら達成の方法を考える
例えば広告営業に関して。クライアント課題を解決するために、提供できるものを提供するという発想ありき(媒体社に多いパターン)というより、クライアント課題を解決することから逆算した提案を行う(全員ではないが、出来る営業は)それが必要であれば周りが協力する。そして強烈なアウトプット。クライアントから予算を預かる。それが社内のナレッジとなり、次のアカウント開拓に繋がるという好循環。これもあるものを売るではなく、クライアント課題の解決がファースト思考にあるためです。
☓「このサービスはこういう機能があって便利です」
◯「御社のこの課題を解決するに、このサービスのこの部分が貢献できます」
あと情報に敏感であること。あわよくばトレンドを自分たちが創っていくという文化。新しい情報=イコールクライアント課題を解決するとは言い難いですが、新しい情報には意味があるものが多いです。「今」の情報は明日には古くなっています。それを敏感に感じているか?感じている人と感じていない人は10年くらい時間差があります。
クライアント課題が起きているのは今なので、それに合わせた今のベストソリューションをアウトプットするべきです。未だに化石のような広告代理店で、純広告を扱っているところもありますし。ADNW(アドネットワーク)も古い概念です。デモグラターゲティングという言葉も化石です。既に意味がないためです。さらにいうと、広告自体の考えも自分の中では古いです。広告とPRの垣根は既に無い時代で、どうコミュニケーションを取っていくか、が全てで広告もPRも手段に過ぎません。それが分かっている代理店とクライアントが両社で業績を伸ばしています。サイバーエージェントでも一部の営業はそれが出来ています。エース級ですね。
あわよくばトレンドを自分たちが創っていくというというところでいうと、当時Cygamesで広報を担当しており面白かったのが、スマホゲーム(のカードが)美麗という発想。ビジュアルはゲームの一要素でしかないという概念を無視し、スマホのハードの性能にも準じて、コンシューマー同様に、徹底的に美麗というメッセージを打ち出し続けました(真似したデベロッパーはことごとく表面上の真似ないし、言葉だけで中身は伴っていないので失敗に終わっていました)
さらにダイレクトレスポンス系の広告はあえて抑えて、ブランドメッセージ醸成のためだけの、広告・広報クリエイティブに注力をし、コンシューマー同様、コンテンツの枕詞に必ずCygamesの◯◯というメッセージを一貫して設けました。
結果会社設立2年で800名、売上50億円以上、3年目で100億という、ありえない加速度で市場を席巻出来たと思っています。とはいえモノが良いのが大前提です(モノが良くてもマーケティングがダメだと結果ダメなので難しいところですが)
話を戻すと、今ある価値の提供に留まっているだけでは、達成、成長は望めないということです。
③案件毎の優秀なチーム制
1名で担当する案件もあれば、当時某大手飲料メーカーの億のキャンペーンを、某国内No.1代理店よりメンバーに入ってリプレイスしたことがあります。この時の体制は20名強です。Aさんは○○担当だからアサインできない、と、前述でも軽く触れましたが、すぐに"工数"を口癖にするベンチャーが言いがちなことですが、サイバーエージェントは、現場が率先して、色々なことにアサインされることを望む人が多いので、上も協力は率先して、ご自由に、でも自身のミッションは達成してねということで、下手に干渉しません。それが現場で自由な空気を作り、必要に応じてスペシャリストが集まり、最高のクライアントワークにつながります。アカウントプランナー(営業)は優秀なプロデューサーといえるでしょう。
どうしても、一人では限界があるので、案件に応じた柔軟なチーム制、これが有名なナショクラ、大型案件受注に繋がるものだと思います。またそれで良い事例が出来ることで、社内で同様にプロジェクトチームが自然と出来上がり個々の能力が掛け算で発揮されます。
④現場の裁量
対クライアントさんへの提案内容は現場裁量が大きい。ベースのノウハウだけは全体共有されており、ディテールは全て現場任せである。至ってシンプルです。上は下手に口を出さない、アドバイスや必要に応じた指導はするが、どう提案したいかは現場にある程度任せてしまう。
ダメなのが、アドバイスが、アドバイスになっておらず、暗にそうしてという上からの中途半端なコミュニケーションになっているケース、現場は迷います(言うことを聞いた方が良いのか否か?)また、分かっていないくせにうるさいなの見えないヘイトにつながってしまいます(口を出したいだけ上司で信頼関係がなかなか構築されない)
さらにアドバイスをする際は、上が、背景を温度感も含め理解できていなかったり、現場より該当分野に弱い場合も少々微妙です意味がありません(あまり無いですが)その場合は、なぜそのような提案にしたのか?の意図を把握する質問だけに留めておく方が良いケースもあります。
上が該当分野に詳しいと、通るべきものは通る、通らないものは通らないという分かりやすい図式。もしくは上が該当分野に詳しくない場合は、任せる(権限と責任をセットで報告はしっかりさせる)のどちらかが良いなと思います。
なお、現場に気を使い、現場がやりやすい環境を優先するケースも多々ありますが、それは危険です。現場のために組織があるわけではないので、ある程度マネージメント層がやりやすい編成が良いです。
人と人なので、どうしても相性というものは存在しますので、そこは柔軟にチームを変える等はポジティブに検討していって良いと思います。とはいえ、学校ではないので、苦手なタイプであっても、目指すゴールは一緒という大前提のもの仕事のやり方に柔軟性を持つことも大事であります。
⑤インバウンド案件とコンペの数を増やす
広報と連携となりますが、ある程度のノウハウは隠さず、どんどん出していく、そういうことでインバウンドが増える、インバウンドも微妙な案件は力を入れませんが、リプレイスチャンスが増えます。
ノウハウ流出といっても、全く別の会社で同じようにやろうと思ってもなかなか同じようには行かないのと、率先したリーディングカンパニーとして業界を牽引する方が、BtoBの場合は事業が伸びる傾向もあります(※とはいえ、何でもノウハウを闇雲に出すのはNG)
まずは自社サイトでの掲載、ただ自社サイトだと、宣伝要素が強いので、やはり外部第三者メディアにおける「定期的な資産化していく露出」が大事です。(=イチ例だと、クライアントが見ているメディア、マーケ関連ならMarkeZineなど)その動きは広報がベストですが、事業広報がいない会社は、兼務でも誰かにやらせた方が良いと思います。ただ広報と営業は全く別モノなので、下手をするとメディアさんから嫌われて、事例紹介どころではなくなるので、気をつけましょう。
最後に
サイバーエージェント、あとはディー・エヌ・エー、リクルートあたりがそうだと思いますが、卒業生に良い会社だったと言われる率が非常に高いです(リンクアンドモチベーション調査)そして卒業生からの発注などもあり、影でOB・OGに支えられているというのも隠れた強みでしょう。
その要素としては、在職中の成長支援に惜しみないのと、人の教育に力を入れており、自分の原点として、振り返る場所であるからというところが大きいと思います。
なお、サイバーエージェントはカルチャー軸(事業がうどん屋であっても、企業文化に賛同する人集まれ)、ディー・エヌ・エーは仕事の内容軸(こういうレベルの仕事をしたい人集まれ)、ZOZOは事業内容軸(服好き集まれ)、キーエンスは報酬軸(成果は報酬で還元、稼ぎたい人集まれ)、スタートアップでは目標軸(本気でGAFAを超えたい人集まれ)など、何の「軸」で組織を牽引しているか分かりやすい軸を設けて、それをもって各種組織開発に活かすとその企業のカラーが分かりやすく、採用も育成もミスマッチが少ないと言われています。
100社あれば、100社全て異なる企業なので、他社を参考にするには良くとも、まずが自分たちが、なぜ、なにを目指していくかを明瞭とし、トップを中心とし、同じ志の人をちゃんと集められるかが本当に大事だなと体感してきました。
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