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久しぶりにカレーを作った日

息子はカレーは好きだが辛いものが苦手な子で、少しでも辛味を感じると一切食べなくなってしまう敏感な子だった。
だが、今年小学校に入学し、給食でカレーを食べているとの話が本人よりあった。また、給食のカレーは辛いけど何とか食べられるとも。
じゃあ家でも大人用の甘口カレーを作ってみよう。そう思い立った。


カレーは"ごちそうごはん"

材料を日課の散歩がてら買いに行き、早い時間からカレーを作りはじめた。
ふと調理しながら、前に子ども用のカレールーでカレーを作った際にはほとんど食べられずに残されてしまった苦い記憶が蘇る。でも今回はきっと大丈夫なはず。そう自身に思い込ませながらカレーを作り続けた。

息子が帰宅してきての第一声が、
「カレーっぽい匂いがする!」
だった。そうだよ〜とカレーの入った鍋を見せると、
「やった〜!!!今日はごちそうごはんだ〜!!!」
と大喜び。夕食時には美味しい、美味しいと何度も繰り返しながら、おかわりを2回もしてくれた。
食べてくれるかとの不安も少しあったため、とてもほっとした。
息子がこんなに喜んでくれるなら、料理を作ることを頑張れると思えた瞬間だった。


息子に我慢を強いた5年間

息子が0歳の時に保育園入園と共に復職し、その翌年には資格取得のため3年制の学校に入学した。彼が2歳になる年のことだった。

大学生以来の学校生活と勉学の日々に忙殺され、学業と家庭と育児を全て行うことは私には不可能だった。精神的にいっぱいいっぱいになっていた私は、息子に向き合ってあげる時間を取る余裕がほぼなかった。息子の寝かしつけを終えた後に家事をし、そのあと深夜まで勉強。休みの日にも家事をしながら試験のために勉強した、まさに勉強尽くしの日々だった。

晴れて資格試験に合格して仕事が始まると、通勤と残業のために朝6時に家を出て21時頃に帰宅する生活が始まった。仕事がある日は寝かしつけ前の数十分しか息子と話す時間はなかった。また、休みが不定期となり土日休みの夫と息子とは休みが合わないことが多くなった。1人の時間は出来たが、家族で過ごす時間は激減した。休みの日は何もする気力が起きないことも多く、凝った料理を作る機会はだんだんと無くなっていた。

この5年間を振り返ると、夫にも家事、育児ともに多大なる負担をかけたとは思うが、それよりも息子への精神的な負担がとてつもなく大きかったように思う。

息子はいつからか「なんでも良い。」が口癖となった。夕飯に何を食べたいか聞くと、「何でも良い。ママが楽なので良いよ。」と自身の希望を言わなくなっていった。
ひとりっ子なこともあるだろうが、彼は1人で遊ぶことがどんどん上手になっていった。それはおもちゃだったり、Amazonプライムでアニメを見たり、Nintendo Switchでゲームをしたりと成長とともに変わっていった。彼は少しずつ、大人に期待をしなくなってしまっていたのだろうと思う。


産休中は息子との思い出を増やしたかった

やっと仕事に慣れてきた頃、第2子を授かった。
妊娠が分かった時から決めていたことは、産休中は息子に向き合い、息子に楽しい思い出をたくさん増やしてあげたいということだった。
今までたくさん我慢をさせてしまった息子への贖罪のような、そんな気持ちだった。

今までほとんど見てあげられなかった宿題をいっしょに行い、息子と休みの日の予定を立てて、息子のしたいことをいっしょに遊ぶ。息子に尽くそうと自分なりに模索しながら努力した産休期間だった。
母親としては当たり前のことを、やっとしてあげられた気がした。


赤ちゃんが産まれても

正直自分は母親として失格だと思う時がある。それは息子に我慢を強いてしまった5年間があるからに他ならない。
当時たくさん我慢して寂しかっただろう息子との時間を取り戻すことは出来ないけれど、これからの人生は家庭に比重を置いた生活にしていきたいと思っている。
第2子に同じような我慢をさせないために、これからの私に何が出来るのか。変わることを恐れずに行動していくことで、もっと子どもたちとの時間を作っていきたい。
この子たちの母親は私だけなのだ。少し遅くなったけれど、これからは良い母親になるための努力をしていきたいと思う。
レトルトルーで作った、普通の家庭ならいつでも食べられるなんてことないカレーを、ごちそうだと言ってくれた可愛い息子のためにも。

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