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詩 いてついた記憶より



いてついた記憶より


おもいだせない時間の
いてつきに
息ができなくなる

あったはずの構造物が
ぬけおちて
満足に笑えもしない

代わりを見つける試みは
とうにし尽くされて
空洞なのにはち切れている

きみは、
雪、
鴎、
漣、
颪、
であり、
夢、
熱、
頤、
底、
であり、
鬣、
髭、
麦、
唄、
である
そして
香りがする
気道が塞がれても
貫いてくる
源が流し込まれる
さかしまになる
頭頂がつま先になり
わたしは
吊るされてなお直立している

立ち直れるはずないし、
忘れられるはずないし、
愛してないはずないよ

きみは
この世界から取り上げられた
あの、雪原だ