詩 眠れる溶融
詩 眠れる溶融
痛々しい無痛さを
未練がましく眺めては
仰々しい律儀さを
必要を超えて謳ってる
あの夏に飛び込んでみてよ
そしたらきっと
これまでの何より美しく死ねる
あの夢を堕ちてゆけ
それならきっと
これまでの何より尊んで朽ちる
枯れた舌が糸を引いて
瓦解した言葉がごろり
液体として拡がって
これはわたしの脳漿
から
ついぞ吐き出されなかった
積年の嗚咽だ
楽園は
その憧憬だけを神経に刻んで
その門扉さえも固く閉ざした
泡沫の夢、と吐き捨てられたら
現実の生、に向き合えただろう
どうしようもない理不尽には
どうにかできた極小の裁量が
悪夢の日記のように付いて回る
あの夏に飛び込んでみろよ
そしたらきっと
これまでのどの瞬間より
きみたちを目に焼き付けるから
『東方深秘録』に登場する現代人『宇佐見菫子』を基にした詩