詩 ソーダ水の甘味たち
詩 ソーダ水の甘味たち
放逸するから求める甘味を
彼方の国へ 葬ってしまった
ぼくのつまらない心象に
注がれる清水は
狭い側溝に落ちて 掴めることはない
口を伝って 喉を降りて
胃酸に墜ちたら
それきり光らなくなる
どんな奇跡も
七階の窓を横切るだけで
残る煌めきを 生かすことも殺すことも
できやしない
何してたんだろうな
という呆れは 藻掻けば変わったかもしれない
という期待だった
あれはよかったな
という望郷は かつてぼくにも可能性があった
という訴えだった
それがひどく しょうもないことに思えて
視界を閉ざすと
五つの味わいは喪われた
色もない 温度もない
弾力のないしわがれの心臓が
虫の息の神経が繋がった肉が
小道具のように横たわる
永い失望の海底で
慣れた諦念の傍らで
酸素の夢が
呼吸の渇望が
なにかのきっかけに
湧いてでるとき
翼が生えるように
地上に打ち上げられるように
昏い世界を抜け出す
太陽光と塩分が
口元を迸るとき
思い出が誕生し
記憶の精霊たちがつきまとう
それがかつて
くたびれたぼくが
脳裏から追い出してしまった
友人たちだと
ぼくは知らない
けれど彼らは
思い上がりと絶望を
幻想と閉塞を
往復する 愚かな肉体に
何度でも連れ立つ
付き人だった
束の間の夢想の
薪を焚べる
火守りだった