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詩 殻の中


詩 からなか


 きみのこころさったささくれをいてあげるのに、つよ拒絶きょぜつをするのはどうして。
 皮膚ひふ縫合ほうごうこんも、真新まあたらしい切創せっそうも、すっかりまれたもとのままにしてあげようっていうのに、あれほどうらめしげにていた傷跡きずあと手放てばなそうとしないのはどうして。
 はやわってくれって、いのっていたこと、ってるよ。そのときってしまったかなしみが、きみのからだをいまもけていること、ってるよ。
 心臓しんぞうして、そのいたみに絶命ぜつめいしてもいいから、もとにもどしてよっていのってたこと、ってるよ。
 こんなかりかた、もうやめにしたいのにって。甘味かんみのうかれるまえもどりたいって、いのってたこと、ってるよ。
 なのに。
 どうして、いまになってきみは、ずたずたにきつくされたであろうからだを、手放てばなすことをこばむの。