見出し画像

【詩】美少女のファンタジー




 美少女なんていはしない
 少女でさえ存在は怪しい
 言葉の中にしか
 理想の中にしか
 いはしない 見たことがない
 きみにとって体のいい
 所作のすべてにロマンスを見出す
 言動のすべてにはげましを貰える
 木漏れ日のようなひとなんて

 リアリストになるんだ
 物質的な問題をぼうっと見過ごして
 限られた生涯を浪費するのは
 もうやめにするよ、と
 少女を夢見たあばら屋に 火をつけた
 クソくらえのいとけない青年を
 卒業し損ねたファンタジーごと
 葬った いいや
 息の根を止めて 殺した

 あらゆる現実が与えた
 濁流のごとき要求は
 余裕などくれもせず
 感傷さえも流しきり
 眼前を見るので手一杯
 それでいいよ
 きみのことは忘れたよ
 視界に 他人のえがいた美少女が過っても
 別にそれは、もう関係のないことで
 悪いけどそんなに暇じゃないんです、と
 盾を得たように あしらうだけです
 その夢に あともさきもないって
 痛いくらい知っているから
 
 けれどいずれ知るのです
 他人の描く少女の像は
 ぼくの理想とは違っているのだけど
 その違いが徐々にはっきりしてきたと
 いまなら、その少女の姿を
 夢見た姿を より精緻に、ありのままに
 描けるかもしれないと
 夢想じみた希求に突き動かされるように
 また、美少女の夢を見る日が来ると

 そのときはどうか、現実よ
 ぼくを、目の前の問題を解決するための
 手段にするだけじゃなくて
 ぼくの、夢想を具現させるための
 手段となってくれないか
 そういう取引がいいと思うのだけど
 どうかな だめかな