詩 きみの横断
詩 きみの横断
いままさに朽ちていく
きみのからだが 列車を横切った
ぼくの視線は 手元のモニターに注がれていて
3秒遅れで 過ぎ去る窓を見つめる
また、だ
過ぎ去っていくのは何もかもなのに
“きみ”の横断を見逃したときにだけ
夜はきりなく拡がって
収拾がつかなくなる
どんなに暖かいものを抱いても
最後に謝罪ばかりが零れて
そこでようやく 眠ることができる
朝陽がのぼって やるべきことに埋もれたら
何もかも忘れて モニターに目を注ぐ
そうして
次にきみが横切ったとき
きみの影が 遠くに離れていくとき
また、だ
またぼくは
気付けなかったと
頭を垂れて
こめかみを掴んでいる