詩 対価
詩 対価
夜も灯り続ける街の明かりを
いくぶん食らって 詩を吐き出す
火に焚べる燃料を取るため
摩耗する人々の生気を
いくぶん食らって 詩を吐き出す
眠る我が子の限られた表情を
記憶に刻むための 上司の時間を
いくぶん食らって 詩を吐き出す
世話になった親からかけられた
期待と安心を売り払い
いくぶん細って 詩を吐き出す
だから
そこに意義を求める心が生まれて
そこに成果を要する概念が生まれて
そいつらは ひとりでにぼくが生んで
ぼく自身を食らっている
けど 義理立てを無意味と断じ
犠牲を正当化するだけの理屈によって
この貪欲な赤子たちを
手放す気には到底なれなかった
ぼくは食らわれている
詩を吐き出し続ける限り
ぼくがなるべきだった未来の
ぼくが賭すべきだった価値の
恨めしい亡き骸たちの視線に
ぼくは食らわれている
文字を 吐き出し続ける限り