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詩 無色透明の烙印
詩 無色透明の烙印
知らなかった、で済まされない
はずだった、ことが生涯に横溢してる
井戸を埋め尽くす債務不履行の残滓たちが
ふだんは秘かに、存在さえ疑わしいほど
きわめて静かに、まるでいないかのように
けれどけっして消せも落とせもしない烙印として
壁面にも水中にも漂い尽くしている
無色透明で無臭な存在が
あるとき、炎色反応を起こして
色づいたら 急峻に 爆発を遂げる
それは 眠れる猛獣
それは 静謐な悪魔
それがいまだに息づいているのは
あの日の違和感に 止めをさせなかったからだ
あの日の後悔に 終止符を打てなかったからだ
あの年の夏休みの宿題が
まだ終わらずにだらだら続いているらしい
正体を突き止めて
名前をただ与えて
滅ぼさなくちゃならなかった
期限切れの魔物たちが
年代物の古井戸を
ひそかに埋め尽くしてる
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