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詩 三次元空間における二象限間の距離について



あなたの知らないものを丁寧に包装して受け渡すことが誠実な仕事なのだと思いました。

投げやりに放りだしたことが床に散らばるたびに、もういいの、と言っている水面が脳裏にちらつく。自分自身で書いたカルテが諦めの烙印を押している。許さないってつぶやいても弱々しさは隠せなくて。稚さを自覚してもただちに解消できることなんか到底なくて。

冷たい溶融が歯茎にしみるとして、声帯を凍らせる理由にはならない。背たけが低いからといって、少年院送りが免除されるわけでもない。わたしの青色がきみの絶望なのだとして、丁重に抱きしめて持ってゆくことが、無意味だとは思わない。毒蜘蛛にみえるだろうか。腸の襞にみえるだろうか。下水道のにおいと近似だろうか。そうじゃなかったらいいって、奥歯が割れそうなくらい願っている。

わたしたちが小数点無限遠にいたるまで同じ座標にいたならば、現世に見切りをつけていたでしょう。太陽と月くらいの距離にあなたがいて、おなじ地上を眺めていられますように。ねえ、アステロイドベルトがみえるでしょう。どんな色にみえますか。小川にかかる橋桁から足をなげだすふたりでいたい。隣にいたい。わたしたちの違いが、たがいにとって許せるものであってほしい。