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【和訳】Without a Whisper - Invent Animate

きみが去っていったのは
ぼくらが夢見た世界のほうだろうか?

Are you going away
To the place we used to dream of?



Band: Invent Animate (2011-)
Album: Heavener (2023)
Vocal: Marcus Vik
Compose: Trey Celaya, Keaton Goldwire, Marcus Vik
     & Caleb Sherraden
Produce: Invent Animate & Landon Tewers



Are you going away
To the place we used to dream of?
Radiance and grace
The only warmth I knew

きみが去っていったのは
ぼくらが夢見た世界のほうだろうか?
耀きと恩寵
ぼくが知っていた、唯一の温もり

I know I've been there before with you (You are)
Now you're fading from me, fading from me

きみとぼくはそこにいたはずで
いまきみは、消えていく、ぼくのもとから

You
Yeah, you (You're fading out of view)
Yeah, you

きみが
きみが、視界から消えていく
きみが

And like some kind of heaven
We let the light in
Like some kind of heaven
We disappear

そして、
まるで天国のように
ぼくらは光に満ちていく
まるで天国のように
ぼくらは姿を消していく

Fading as you sink
So covered in clear
Steering through the sea
Don't wait to breathe
The sun is setting still

きみは沈むように消えていく
それは光に包まれるようで
だから海を突っ切るんだ
息を継ぐよりも早く
陽はまだ沈んではいない

I know I've been there before with you (You are)
Now you're fading from me, fading from me

きみとぼくはそこにいたはずで
いまきみは、消えていく、ぼくのもとから

You
Yeah, you (You're fading out of view)
Yeah, you

きみが
きみが、視界から消えていく
きみが

And like some kind of heaven
We let the light in
Like some kind of heaven
We disappear

そして、
まるで天国のように
ぼくらは光に満ちていく
まるで天国のように
ぼくらは姿を消していく

In the garden grown just for you
A constant dream
Below the earth

きみのために在る庭園の中
この大地より下方にある
絶えない夢

Without the feeling of falling deep
It's in you I drown, in you I dream

落ちていく感覚さえもなく
きみへと溺れ、きみのみる夢の中にいる

I know you're fading
You let the light in

きみは消えていくのだ
光に包まれて

And like some kind of heaven
We let the light in
Like some kind of heaven
We disappear

そして、
まるで天国のように
ぼくらは光に満ちていく
まるで天国のように
ぼくらは姿を消していく

You
Yeah, you (You're fading out of view)
Yeah, you

きみが
きみが、視界から消えていく
きみが

And like some kind of heaven
We let the light in
Like some kind of heaven
We disappear

そして、
まるで天国のように
ぼくらは光に満ちていく
まるで天国のように
ぼくらは姿を消していく






 「天国」のイメージを持ちながら読むと、平易な、あまり具体的ではない、普遍的または私的な想像に基づいた歌詞のようにも見えますが、リードギターのKeaton Goldwireがインタビューで答える内容を見ると解像度を得られます。

‘Without a Whisper’ is about my grandmother dying, and me having to confront death for the first time. As someone who’s not religious, it was the first time I had to really ask myself what happens in the after life. The song is me hoping, even though I don’t believe, that she’s in a place like heaven. ‘I know I’ve been there before with you’ is my way of saying I know we’ve been together in happiness, in a state I imagine as heaven before.
"Without a Whisper"は、祖母が亡くなって、僕が初めて死に直面することについての曲です。無宗教の自分にとって、死後に何が起きるのかを真剣に自問するのは初めてのことでした。この曲にあるのは、たとえ天国なんて場所を信じられなくても、祖母にはそんな場所にいてほしい、という僕の願いです。"I know I've been there before with you"は、僕が以前から想像していた天国のような世界に、僕らはただ幸せに暮らしていた、という歌詞なのです。

Invent Animate - Without a Whisper | Genius Lyrics


 "I know I've been there before with you"の歌詞とその解説からは、現世でその人と一緒に過ごしていた時期のことを天国と捉えているような視座も見受けられて、個人的にはそこが面白いと思います。その人といた時間はかけがえもなく天国のようであって、そこで共に過ごせるだろうという想像もまさに天国のようであって、つまりその人がいなくて自分だけが取り残された、残りの人生だけが、天国と呼べる状態から遠い……というようにも見受けられます。天国というのはあくまで想像の世界なのですが、現世でその人と一緒にいた時間も天国と同等の幸せにあふれていて、つまりはこの歌詞において天国とは現実逃避な想像だけの世界なのではなく、かつて在ったものを取り戻せる場所、とも言えそうです。
 俺は、「ここではないどこか」を夢見て、そんな曖昧模糊な場所を天国と捉える向きがあるように自分のことを思います。けれどこの歌詞は、かつて確実に在ったものを天国と捉え、今はそれは失われてしまったけれど、死後の世界のような場所できっとそれはもう一度手に入る、というような、俺が捉える「夢」よりも確かさのある希望を歌っているように思えるな……と思います。


 そんな想像もありつつ、下記の歌詞は少し意訳しました。

Fading as you sink
So covered in clear
Steering through the sea
Don't wait to breathe
The sun is setting still

きみは沈むように消えていく
それは光に包まれるようで
だから海を突っ切るんだ
息を継ぐよりも早く
陽はまだ沈んではいない

 一行目のsinkと五行目のsunに関連を見出したのがこの訳詞の理由の一つになっています。
 sunとsinkというとthe sun has just sunk into oceanという風に、太陽が沈んだところ、という表現ができます。ここでこの歌詞の一行目がyou sinkになっていることから、五行目のthe sunは太陽のことをyouになぞらえているのでは、と考えました(あくまで想像です)。
 そうすると、一見つよい繋がりの無いように見えるこの五行が、少し流れを伴って見えました。youはいま消えて行っているけれど、それは太陽が夕陽となり水平線へと沈んでいくまさにその瞬間なのであって、つまりはまだ消えていない、だから今、水平線の向こうに辿り着くためにこの海を渡り切るのだ、息継ぎの間さえも惜しい、今ならまだ太陽は沈んでいない……という風な、切迫した希望を感じました。
 インタビューの内容どおりならば、この曲の由来となっているKeaton Goldwireの祖母は、既にこの世には存在しません。けれどこの曲にはfading、the sun is settingという風に、現在進行形の歌詞が頻出します。つまりは、亡くなった人、失ったものというのは今もまだどこかにいる。それは歌い手の心の中なのか、天国のような楽園なのか、それは分からないけれど、少なくとも歌い手自身が、その人は今消えて行っているが、まだその人のような何かはいくぶん存在していて、その存在を感じること自体が肝要なのだ、と言っているように見えます。
 大切と思うもの、失いたくないもの、それがこの世を去ってしまい二度と目の前には現れない。現実のものには二度とならない。それでも、その人と過ごしその人を想う日々は確かにあったし、その想い自体が途絶えていないのなら、まだその人は完全には消えていないのだ、という、忘れないための決意を感じるのです。The only warmth I knewも、the place we used to dream ofも、忘れてしまえば水平線の向こうに沈んでもう戻ってこないように見えるけれど、忘れなければまだ沈んではいない、完全になくなってはいないのだ、という、あくまでその人と過ごして得たすべてを大切にしたい、という、絶望だけではない気持ちを感じます。

 曲名のWithout a Whisperというのは、その人からの直接のささやきや息遣いは、生きている間もう二度と感じられないけれど、もう二度とそれを得られないとしても、それでもその人と共に得た恩寵をもとに生きていくという決意じゃないか、と俺は思います。



 遺されたもの、に対してイメージするものは人によって様々と思いますが、俺が思い出したもの2つを引用して終わりにします。


 悲しみと憎しみばかりを繰り返す、救いようのない世界だけれど
 だとしてもここは、かつてあの子が守ろうとした場所なんだ
 それを、憶えてる
 決して、忘れたりしない
 だから私は、戦い続ける

魔法少女まどか☆マギカ - 暁美ほむら



いつかはさよならが
この胸を貫いて
いつかは思入れが
風景に馴染んで
色褪せて目が醒めて    
思い出になったとしても
もう二度と忘れも後悔もしないと
ずっとここで叫び続ける