Sleeptalk - Dayseeker【和訳】
"君の痛みを、同じように感じる"
"でもそれは一方通行で、君には伝わらない"
You feel the pain, I feel the same
But we cannot repeat this cycle
Title: Sleeptalk
Band: Dayseeker (2012-present)
Album: 4th Album "Sleeptalk" (2019)
Vocal: Rory Rodriguez
[Verse]
The blood stains on my hands
Our three year, one night stand
手に残る血の痕
三年にも及んだ、一夜限りの関係
Love is bitter when it's spent
Lying next to me in bed
Say her name under my breath
(Sleeptalk)
隣で寝転ぶ人の前では
愛は苦痛となる
僕は彼女の名前を囁く……(眠りながらに)
It's toxic, the same dance
Our feet firm in quicksand
まったく同じことを繰り返す
それは酷く苦しい事実だ
僕らの足は流砂に飲まれる
Love is bitter when I see
How much I can make you bleed
‘Til you feel like you’re deceased
(Sleeptalk)
君に、もう死んでしまうって思わせるために
必要な傷の量
それが理解できたなら、愛は苦痛となる
[Chorus]
Into the night, I drink and drive
Anything to help me let go, let go
You feel the pain, I feel the same
But we cannot repeat this cycle
飲んで暴れる、夜を通して
自由にしてくれるものに跨って
君の痛みを、同じように感じる
でもそれは一方通行で、君には伝わらない
The worst is yet to come
The worst is yet to come
これから起こるよ、最悪なことは
まだ起きてない、最悪なことは……
[Verse]
No, please don't be alarmed
We tend to fall apart
怖がって、取り乱さないで
僕らはすれ違いを繰り返しただろ
I'm entirely to blame
No, I couldn't keep you safe
If there's trust I will betray
(Sleeptalk)
疑いようもなく僕が悪い
君を守ることはできないだろう
信頼があれば裏切ってしまうから
Sunset, sunrise
It's better you're not mine
陽は落ちて、また昇る
君は僕のそばに居ない方がいい
I had everything to lose,
Always find a way to prove
That I'm undeserving of you
すべてを失った僕は
証拠ばかりを探している
僕は君に相応しくないと
[Chorus]
Into the night, I drink and drive
Anything to help me let go, let go
You feel the pain, I feel the same
But we cannot repeat this cycle
飲んで暴れる、夜を通して
自由にしてくれるものに跨って
君の痛みを、同じように感じる
でもそれは一方通行で、君には伝わらない
The worst is yet to come
The worst is yet to come
これから起こるよ、最悪なことは
まだ起きてない、最悪なことは……
I play the victim like it's tradition
Now I can see that I should have left you alone
相変わらずに被害者面の自分
僕は離れるべきだったと、ようやく気付いた
The worst is yet to come
まだ起きてない、最悪なことは……
[Bridge]
One day you'll see
That the truth is, I am just a disease
(I am just a disease
I am just a disease)
いつか君は知る
僕はただの病人だと
[Chorus]
The worst is yet to come
これから起こるよ、最悪なことは
I play the victim like it's tradition
Now I can see that I should have left you alone
これまで通り、僕は被害者ぶる
僕は離れるべきだったと、ようやく気付いた
The worst is yet to come
まだ起きてない、最悪なことは……
【訳について】
■MVの青い液体は"blood stains on my hand"
・MV中では、歌詞をVocalではなく女性が歌っている描写がある
・MVの描写を根拠として、ここのmyは、
歌い手ではなく"you"の意と捉えられる
→ 流血しているのはyou。
歌い手も流血しているのかもしれないが、
少なくとも歌い手は、「youが流血している」と認識している。
ひいては「彼女を傷つけている」(後述)。
■世間的には健全とは言えない、「三年に及ぶ一夜限りの関係」
・Our three years, one night stand:「僕らの三年間、一夜限りの関係」
「三年」と「一夜限りの関係」はまるで矛盾するような表現だが……
・Vocalがバンド名義で投稿した、本楽曲のインタビュー動画がある
これを要約した内容が下記
要約すると、
・バンドのヴォーカルRory Rodriguezは、
自身のガールフレンドである女性と破局した後、
3年もの間、その女性と肉体関係にあった。
・その間、別の女性と自由に出会っていた。
・次第に、「元ガールフレンドと一緒に寝ている時、
"別の女性の名前を寝言で呟いてしまう"恐怖」に駆られた
個人的には、身近になさすぎるケースが語られていて衝撃を受けた……。
同時に、歌い手への感情移入を難しくもした(ある種の僻みである)。
ただ、
これは筆者である自分の知らない世界であるものの、
確かに存在する(存在してしまう)感情・状況・現実であり、
人間が持つ苦悩の一つを誠実に表しているのだと思う。
■歌い手はyouを傷つけている自覚がある
この歌詞は3行で1文になっている
"Love is bitter when I see how much I can make you bleed til you feel like deceased"
(君に「もう死んでしまう」と思わせるだけの傷の量、
それを知ってしまったら、愛は苦痛となる)
→ 前述の"blood stains on my hands"と同様、
歌い手は「彼女を傷つけてしまった」という意識に囚われている。
■2Verseの歌詞は全て"to prove that I'm undeserving of you"の材料?
(僕が君にふさわしくないということの証明)
この部分に至るまでの2Verseの歌詞は、
・we tend to fall apart:僕らは仲違いしがちだ
・I'm entirely to blame:僕が全て悪い
・I couldn't keep you safe:君を守ることはできない
・If there's trust I will betray:信頼されれば僕は裏切ってしまう
そして最後に
・I always find a way to prove that I'm undeserving of you:
僕が君に相応しくない、という証拠を常に探している
→ youと早く離れたがっている?
youに対する罪悪感から、youを避け、
「相応しくない」という証拠を、
際限なく見つかる「やらない理由」のように探し続けている?
■この歌詞だけ、両者が互いに言い放った言葉であり真実ではないか?
下記の理由からそう考える。
・この部分に至るまで全てのVerseで(Sleeptalk)があるが、
この部分だけはない。
後述するが、
sleeptalkは「実際には起きなかった歌い手自身の懸念」を示している。
→ この部分の歌詞だけが現実に起こったことではないか?
・MV中のカットで、you(女性)の素振りが、
I(歌い手)に対して言った言葉にも見える。
→ この歌詞(僕は君に相応しくない)は、
「歌い手自身が思っていたこと」でありながら、
「youも言い放ったこと」ではないか?
ここから色々想像ができる。どれも断定できないが。
・3年もの浮気関係からの「真の破局」を迎えた。
・youと歌い手が付き合っていた頃の「破局」の場面で言われた言葉。
その時のことを思い返している。
・youが"I'm undeserving of you"と言った、と言うことは、
youも「私はあなた(歌い手)に相応しくない」と、
you自身も何かしら過失を認めている……あるいは、謙虚な人?
もし何かを意図した描写だとしたら、歌詞もMVも凄まじい。
■二人の関係の終わりを示すようなパート、
"The worst"(最悪の事態)とは何だったのか?
youtubeの概要欄の歌詞では、
Chorusなど繰り返しの部分が省略され記載されているため、
ある意味、ここが曲の終わりの歌詞となる。
Chorusで頻繁に繰り返される"The worst is yet to come"だが、
歌い手にとって「来るべき最悪の事態」とは何かというと、
おそらく歌詞の最後の部分、「君が、僕がただの病気であることに気付
くこと」だったと推測される。
不貞を働いていること、それが明るみになること、何よりも尊敬する
(※「尊敬する」の根拠は後述)youにそれが知られること……。
それが歌い手にとって最も恐ろしいことで、そのために「僕は君から離
れるべき」という結論に至ったと推測される。
そして何より、それが知られる最大のトリガとして、歌い手が恐れてい
たのが"Sleeptalk"(別の女性の名前を寝言で呟いてしまう)だった。
■尊敬すべき女性に対して働く不貞行為(Our three year, one night stand)
時間が積もるほど募る罪悪感(My guilt and my feelings)
そして何も起きなかった(The worst is yet to come)
この楽曲を読み解いた道すじを結論的にまとめる。
インタビュー動画を見るに、寝言(sleeptalk)は実際には起きていない。
それは彼が恐れていたことにすぎない。
そんなSleeptalkが、なぜ曲名になるほどのモチーフとなったのか?
→ キーワードはmy guilt and my feelings(罪悪感)。
インタビューを見るに、
この楽曲は、極めて個人的な問題・感情を取り扱っているものの、
これを極力誤魔化すことなく、誠実に描写していると思った。
①恋愛関係においても稀なケースが発生している
(破局してからも肉体関係を保ち、さらに浮気行為を働く)
➁破局した相手を未だに尊敬している
→ ネガティブに捉えれば、一種の未練とも考えられる。
関係をずるずると引き延ばさせた原因の一端。
③浮気がばれるといったような決定的瞬間が発生していない
→ 歌い手は、抱いた罪悪感を罰されないまま。
罪悪感を罰したい/罰されたいという気持ちが浮いたまま……。
余談:
個人的には、この曲が広く共感足り得る理由は上記③だと感じる。
「罪悪感」というのは人間関係の性質におけるトリガになりやすい。
とりわけ罪悪感の解消方法が、トリガとなる……。
罪悪感の解消はいくつか方法があるが、大きい区分で言うと、
自罰的:自身で(理想と異なる)自身を罰する。
他罰的:(理想と異なる)他人を罰する。
※一人の人間の中で、自罰性/他罰性が入れ替わることもある。
時と状況によって、相手によって……。
→ 結局は、自罰/他罰ともに、間違いを、他者を、恐れている。
「なぜ、自分/他人はああじゃない」
「なぜ、自分/他人は理想的な形ではない」
「なぜ、自分/他人は、他人/自分と違うのだ」
という、選民主義・画一的な捉え方をしなければ落ち着かない。
本来の現実の多くは、
正義/悪を決められるものでも、
白黒で分けられるものでも、
なにか一色で染められるものでもないのに……。
男女・先輩後輩・親子など、複数の関係において、
自罰/他罰的な人は惹かれ合い、共依存の関係になる。
互いに、恐怖の感情で繋がる人間関係となり、
安心のために、支配/被支配的な関係が続く……。
この楽曲で描かれる2人が、自罰/他罰という束縛関係であったという材 料はなく、当記事の筆者としても、自罰/他罰の関係を描いた曲だとは思っ ていない。
大事なのは、自身の不貞行為に対し、歌い手が罪悪感を募らせ、苦し み、自罰的な傾向を見せ始めたこと。
「身から出た錆」である「自罰的傾向」自体が、この物語を聴く多数の 人間にとって共感足り得る。描かれているのは具体的な体験のはずが、多 数の人に聴きとれる抽象性を帯びている。
余談の余談……:
自罰的な人は、ようは失敗を恐れている。世間と合わない自身を、理想を叶えられない自身を、「なぜああではない、これ以上自分が理想と異なる存在であることを証明したくない」とばかりに、自分を罰して、次の行動を自ら抑制してしまう……罪悪感を「やらない理由」として、自身の往く道を舗装してしまう。
そして、自罰によって舗装された道は、往々にして、自身が望む最良とは異なる方向となる……。
ただ、わたしの意見としては、自罰がもたらすミスリードの危険性を認めつつも、その原因たる自罰/罪悪感を取り消す・消滅させることに邁進するのは得策ではないと考えている。
というのも、自罰によって舗装された道は、必ずしもマイナスの効果を生むものではない。
なぜなら人の人生や時間とは、たとえ自罰によって舗装された道を往き、その結果望まぬものを得てしまったとしても、そこで簡単に終わる/終われるものではないから。
そして何より、望まぬ結果というものは、それを得た人に「くすぶり」や「澱み」を与える。これらは、ある時一気に堰を切り、望む道へ突き進みたい気持ちを溢れんばかりにエネルギーへと変えるきっかけにもなる。
もしその先で、自身の望む道すら間違っていたとしても同じで、人生やそれに伴う時間は、簡単に終わるものではない。たとえ終わりたくとも。
また、自罰/罪悪感の根源たる「失敗」は、人間から簡単に取り除けるものではない。失敗とは「望むものと異なる結果」だが、そも現実の物理現象が、すべて成功(すなわち「望んだ結果」)に収められるなど、人間の力量を過信していると言わざるを得ない。
失敗を、自罰を、罪を根絶するのではなく、それといかに接触するか?予期しない結果をどう迎え入れるか?これこそ、完璧主義を克服し、自罰的傾向を退ける方法だとも思える。
ようは、失敗をただ「理想と異なる悪しき状態」と捉えるには、罪悪感をただ「根絶すべき間違った誘導」と捉えるには、あまりに勿体ない。これらは現実のもたらす恵みの一つでさえある。
この楽曲が、ただ陰惨とした後悔や未練、罪悪感と自罰による失敗を描いた、生気を吸い取るような存在だという人がいるとしたら、それは違うと言わせてもらいたい。
後悔や失敗という澱みが、自罰や終わってしまったという悲しみが、その次の大きな流れを生むエネルギーになることがある。だからこそ、(音楽ジャンルの)叙情とは、叙情的なだけでなくエネルギッシュなのだと。聴く人にもその澱みを与える、恵みに溢れた表現なのだと。
最も恐ろしいことは、「自罰によって誤った道へみずから赴いてしまう」ことでも、「罪悪感を抱くような罪が存在する」ことでもない。「一度の間違いですべてが終わったと感じ、動けなくなる期間が長くなること」だと思う。それは、大きな澱みも後悔も与えられず、なのでそれらが堰を切ることもなく、ただ薄く引き延ばされた後悔だけが漂う、苦痛で、得るものの少ない、悲しい時間である。失敗を現実として受け入れられなかった、哀れな感情の往く末だと思う。