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詩 不死人の供物


 詩 不死人の供物



凄惨な、欠損した、壊滅した、屍体らしきものが
永い時間によって燻り尽くした内心に
誰にも灯せないはずの消し炭に
もう一度 熱を宿してくれる
その熱は、喪うには致命的なものを
随分と支払うことで燃焼していて
取り返しのつかなさが深刻になっていく
あと何度 薪を差し出せるだろう
なるだけ考えないようにして
破損した肉体と骨を 後生大事に思い出す

そういうことを繰り返して
帰れない場所へと到達して
以前までに交わしていた言葉も 表情も 間合いも
欠損して 二度と戻らなくしてしまうのだろう
それでもいつかは訪れるから
取り返しのつかない崩壊が
どんな生き方をしようと 容赦なく訪れるから

永遠の命は
いったい何を燃やしている
擦り減りもしないものを
差し出せもしないものを
燃やしたふりでいるのは もうやめろよ
わたしが燃やしているのは
この身体のうちにあって
行き場を失くして彷徨う
この情緒だ
この、替えの効かない心象だ









東方とうほう永夜抄えいやしょう』に登場する不死人『藤原ふじわらの妹紅もこう』を基にした詩