みかづき星雅 / Seiga

この瞬間だけでも、ほんの少しでも、強かな人を導く灯火に近づけますように。  毎日投稿…

みかづき星雅 / Seiga

この瞬間だけでも、ほんの少しでも、強かな人を導く灯火に近づけますように。  毎日投稿(2023/11/22~)  東方Projectの二次創作をしてます  noteでは詩歌/エッセイ/英詞和訳/レビュー  他では小説/絵  感情の起伏が激しい曲が好き

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    自作の詩・短歌・長歌。東方Project二次創作含む。

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記事一覧

詩 翼の簒奪

詩 翼の簒奪  翼の簒奪は  わたしの一部を誘拐して  みずからの懐に 隠してしまった  「いつか、綺麗に忘れられるから」  そんな言葉を 信じたくはなかった  満…

詩 描き手

詩 描き手  ぼくらはやがて星を描けるだろうか、星というのは  もはや夜空で留まっているものではなくて  ひとびとの目の前に  親指の通過ひとつで颯爽とあらわれる …

詩 回路の熱

詩 回路の熱  曖昧模糊な思考回路が常にわたしの肉体を焼いています  願うほど太陽は遠ざかり冬が、  来る 明けない冬が  永久凍土が手のひらを貫通して  血液を凝…

詩 トゥルー・カラーズ

詩 トゥルー・カラーズ  雨上がりに整列するのは、四季折々、陰陽五行の皆々様が持つ、本来の色です。本来の色は、眠っていたり、隠されていたり、気付かれないままだっ…

詩 一夜の狼

詩 一夜の狼  鋭利な加害は  いままさに伸びていて  憚らぬ天幕は  いままさに伸ばされていた  本能は 細やかであれと願って  尽くした肌を 遠慮なしに貫く  こ…

なるたけ前向きな、さようなら

 東方Projectの二次創作詩集『境界渡り beyond boundaries』を頒布します。  詩集の表紙イラストはうずみび(@bankedfireXXX)先生です。厳しいスケジュールの中、みかづ…

明日9/17、詩集第二弾の告知およびセルフライナーノーツの記事を投稿します。
ここ半年くらいの集大成です。ぜひご覧ください。

詩 きみの横断

詩 きみの横断  いままさに朽ちていく  きみのからだが 列車を横切った  ぼくの視線は 手元のモニターに注がれていて  3秒遅れで 過ぎ去る窓を見つめる  また、…

詩 何も

詩 何も  何もわからない!  手に取るものの輪郭さえ  視界に差し込む色彩さえ  何一つを取っても 茫漠ばかりだ  わかろうとする試みによって  理解に漸近したと…

詩 一筋の真鍮

詩 一筋の真鍮  思い違いで失くした時間を  うず高く積み上げれば  なれたはずの未来に届くでしょうか、  理由をつけて飛ばした予定を  余すところなく実行していれ…

詩 綺麗な石ころ

詩 綺麗な石ころ  すべてを捧げると  途方もなく甚大な  見返りを渇望してしまう  綺麗な石ころを  ビオトープのアメンボを  制約なく見回す といった  小さな …

詩 無名の大岩

詩 無名の大岩  いま目の前で横たえている大岩の  全貌もわからず 正体も掴めず  名前さえも付けられない 時間に  喉の渇きだけが積もる  皮膚の湿り気が喪われる…

詩 吹き溜まる季節

詩 吹き溜まる季節  季節が留まっている  ふと目を離しても  まだ 季節が留まっている  気がつけば「一年あっという間だった」と言っているのに  今目の前で、温度…

詩 対価

詩 対価  夜も灯り続ける街の明かりを  いくぶん食らって 詩を吐き出す  火に焚べる燃料を取るため  摩耗する人々の生気を  いくぶん食らって 詩を吐き出す  眠…

詩 名付け

散文詩 名付け  名を付ける、という行為は、ある事象の性質を説明し、対処するだけの力を持つ。正体不明の事象にとっては、名を付けられることは、束縛であり、呪いとも…

詩 溶炉

詩 熔炉  どろり 溶け落ちて  おそろしい痛覚が訪れるのは  すでに肉体を喪った、後  熔炉にまじって  わたしだったものが 撹拌される  ばいばい あなたを映し…

詩 翼の簒奪

詩 翼の簒奪

詩 翼の簒奪

 翼の簒奪は
 わたしの一部を誘拐して
 みずからの懐に 隠してしまった
 「いつか、綺麗に忘れられるから」
 そんな言葉を 信じたくはなかった
 満ちていた月は
 いまは 半月の形になったまま
 ぴくりとも動きはしない
 繋がっていた円環は
 いまは 姿さえ感じられない
 願い
 とは
 こういうものだったの?
 愛情
 とは
 こういうものだったの?

 安穏だけが世界のすべて

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詩 描き手

詩 描き手

詩 描き手

 ぼくらはやがて星を描けるだろうか、星というのは
 もはや夜空で留まっているものではなくて
 ひとびとの目の前に
 親指の通過ひとつで颯爽とあらわれる
 煌びやかな配置
 計算された舞踊
 魅了のための 活動
 あらゆるすべてを投資して
 繊細な排斥による引き算を通して
 高級料理のように
 スタジアムライブのように
 歴史的映画のように
 整頓されたたたずまいで 発光するものなので

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詩 回路の熱

詩 回路の熱

詩 回路の熱

 曖昧模糊な思考回路が常にわたしの肉体を焼いています
 願うほど太陽は遠ざかり冬が、
 来る 明けない冬が
 永久凍土が手のひらを貫通して
 血液を凝固させてもなお 回路は、
 あらたな血流を掘削して膨張し
 右腕からゆらゆらと焔が上がります
 雪が、心臓に触れるまえに鼓動が、
 走馬灯で時を止めています
 これは、無限の試行の繰り返し
 痛みと再起を何度も何度も往復
 息苦しさを

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詩 トゥルー・カラーズ

詩 トゥルー・カラーズ

詩 トゥルー・カラーズ

 雨上がりに整列するのは、四季折々、陰陽五行の皆々様が持つ、本来の色です。本来の色は、眠っていたり、隠されていたり、気付かれないままだったり、さまざまの境遇を経ています。一度も目覚めないことも、姿を現さないことも、気づかれないまま生涯を終えることも、あります。それら色彩のさまざまが、雨の上がりに土からのぼり天上へと集まって、市場ができるのです。それは、境界です。未練のある

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詩 一夜の狼

詩 一夜の狼

詩 一夜の狼

 鋭利な加害は
 いままさに伸びていて
 憚らぬ天幕は
 いままさに伸ばされていた
 本能は 細やかであれと願って
 尽くした肌を 遠慮なしに貫く
 これでも、人、を名乗りたいのは
 たぶん 我儘に過ぎない
 これでも、人、でありたいのは
 たぶん 汲み取られることはない
 この夜を過ぎたら
 また一からやり直し、だ
 望むなら皮膚を裂け
 望むなら牙を剥け
 この夜が明けたら
 

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なるたけ前向きな、さようなら

なるたけ前向きな、さようなら

 東方Projectの二次創作詩集『境界渡り beyond boundaries』を頒布します。

 詩集の表紙イラストはうずみび(@bankedfireXXX)先生です。厳しいスケジュールの中、みかづき星雅が体験した出来事を反映した、素晴らしいイラストを仕上げていただきました。絶えなく感謝です。

 お別れの詩集、と題打ってXで告知を打ち出しましたが、「お別れ」というのは、この詩集の制作最終盤に

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明日9/17、詩集第二弾の告知およびセルフライナーノーツの記事を投稿します。
ここ半年くらいの集大成です。ぜひご覧ください。

詩 きみの横断

詩 きみの横断

詩 きみの横断

 いままさに朽ちていく
 きみのからだが 列車を横切った
 ぼくの視線は 手元のモニターに注がれていて
 3秒遅れで 過ぎ去る窓を見つめる
 また、だ
 過ぎ去っていくのは何もかもなのに
 “きみ”の横断を見逃したときにだけ
 夜はきりなく拡がって
 収拾がつかなくなる
 どんなに暖かいものを抱いても
 最後に謝罪ばかりが零れて
 そこでようやく 眠ることができる
 朝陽がのぼっ

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詩 何も

詩 何も

詩 何も

 何もわからない!
 手に取るものの輪郭さえ
 視界に差し込む色彩さえ
 何一つを取っても 茫漠ばかりだ
 わかろうとする試みによって
 理解に漸近したと思えば
 重力から離れていくみたいだ
 何もわからない
 わかるはずもない
 けれど、わかるかもしれない、という
 朝ぼらけよりも幽かな願望を
 抱かずには
 芥子の実を喰らって 埋没していくだけ
 けっして口にできない楽園の果実が

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詩 一筋の真鍮

詩 一筋の真鍮

詩 一筋の真鍮

 思い違いで失くした時間を
 うず高く積み上げれば
 なれたはずの未来に届くでしょうか、
 理由をつけて飛ばした予定を
 余すところなく実行していれば
 違う世界に辿り着いたでしょうか、
 散逸して 焦点の合わない思考を
 もう一度繋ぎ合わせれば
 今からでも目指せるでしょうか、
 生まれてこの方 一度も手にしていないものに
 持てる最大の速度で向かったら
 死ぬまでに光明を見れ

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詩 綺麗な石ころ

詩 綺麗な石ころ

詩 綺麗な石ころ

 すべてを捧げると
 途方もなく甚大な
 見返りを渇望してしまう
 綺麗な石ころを
 ビオトープのアメンボを
 制約なく見回す といった
 小さな 幼心の手を引いて
 その欲求が肥大化するまえに
 思考を裁断する

 すべてを捧げるには
 きみの視線を遮る必要があって
 そこで得られなかった栄養の分だけ
 あるいは それ以上の利子をつけて
 何かを得なければならない
 さもなく

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詩 無名の大岩

詩 無名の大岩

詩 無名の大岩

 いま目の前で横たえている大岩の
 全貌もわからず 正体も掴めず
 名前さえも付けられない 時間に
 喉の渇きだけが積もる
 皮膚の湿り気が喪われる
 喪失の自覚さえないままに
 暇を過ごすことだって ぼくにはできる
 それがおそろしい
 阻まれても なんの気も起こらずに
 ただ自分自身の調子だとか
 気持ちの入れ替え一つでなんとかやり過ごそうとする
 そんな自分の習性がおそろし

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詩 吹き溜まる季節

詩 吹き溜まる季節

詩 吹き溜まる季節

 季節が留まっている
 ふと目を離しても
 まだ 季節が留まっている
 気がつけば「一年あっという間だった」と言っているのに
 今目の前で、温度と湿度は
 しぶとく 留まっている
 願っても動かない
 思うようには移り変わらない
 夜の水底に沈み続けなければ
 季節は流れない
 いずれ 流れる風の変化は
 さもしさを吹き飛ばしてくれるだろうか
 だが 願っても
 野分は来ない

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詩 対価

詩 対価

詩 対価

 夜も灯り続ける街の明かりを
 いくぶん食らって 詩を吐き出す
 火に焚べる燃料を取るため
 摩耗する人々の生気を
 いくぶん食らって 詩を吐き出す
 眠る我が子の限られた表情を
 記憶に刻むための 上司の時間を
 いくぶん食らって 詩を吐き出す
 世話になった親からかけられた
 期待と安心を売り払い
 いくぶん細って 詩を吐き出す
 だから
 そこに意義を求める心が生まれて
 そこに

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詩 名付け

詩 名付け

散文詩 名付け

 名を付ける、という行為は、ある事象の性質を説明し、対処するだけの力を持つ。正体不明の事象にとっては、名を付けられることは、束縛であり、呪いとも言えるだろう。いっぽうで、人間の個人個人に対する名付けでは、これら事象に対する束縛的な効果は著しく弱まる。名付けの拘束力が及びにくい。それは、彼らが、思考を基盤として、激しい移ろいや迷いを繰り返す生き物だからだ。やさしく育つように優と名付

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詩 溶炉

詩 溶炉

詩 熔炉

 どろり 溶け落ちて
 おそろしい痛覚が訪れるのは
 すでに肉体を喪った、後
 熔炉にまじって
 わたしだったものが 撹拌される
 ばいばい あなたを映した瞳
 ばいばい あなたを握った指
 ばいばい あなたの手でつくられた
 うつくしい髪
 モノだけなら 要らない
 肉体だけなら どうだっていい
 けれど、いま
 揺らすことのできない、溶け落ちた手には
 この世の何より大切にした
 

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