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会長海老澤と新代表元木が語るVCの存在意義と未来への展望【MIC新旧代表対談:後編】

◎はじめに

こんにちは、ベンチャーキャピタルMICの有賀です。モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテクノロジー領域においてリード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先スタートアップへのバリューアップ支援の一環として、事業会社とのオープンイノベーションに注力中です。

本記事は、弊社が毎週火曜日に配信している公式Podcas「起業家のキモチ」を文字で読むことができる「読むPodcastシリーズ」です。1本3,000字程度にまとめていますので、空き時間でさくっと読みたい方にお勧めです✨

今回は先日代表取締役社長に就任した元木、そして元代表取締役社長であり同時に今回取締役会長へ就任した海老澤の対談収録を実施したものを記事にした後編です。前編はこちら


◎投資先やLPとの信頼関係構築について

有賀:
投資先の起業家やLPの方々との信頼関係の構築維持について、お二人に今後推進していきたい取り組みについてお伺いできればと思います。まずは海老澤さんからお願いいたします。

海老澤:
我々が見て、投資先や投資先の起業家の方々、そしてLPの方々、つまり我々のステークホルダーに満足していただかない限り、我々は存在し続けることはできないと思っています。その際に重要なのは、それぞれの事情が異なることです。スタートアップの方々も一社一社状況が違いますし、投資家の方々も我々への期待が全く同じではありません。これらを個々に丁寧に対応していく必要があります。確かに、投資家の方々にリターンを出すことは大命題ですが、それをそのままスタートアップの方々に直接全て投げかけても意味がないと考えています。

「スタートアップが社会をより良くするために最も大切なことは何か」を考えるとき、投資の枠組みだけで判断するのではなく、彼らが成功するための最適な方法を見極めることが重要です。場合によっては、非常に成長しそうな事業であっても、「今は私たちのようなベンチャーキャピタルからの資金を受け入れるべきではないのでは?」とアドバイスすることもあります。なぜなら、私たちは預かった資金を大きくして返さなければならない責任がありますが、VCからの投資が時期尚早であることもあるからです。

例えば、今の段階では別の資金でいろいろなテストを行い、その結果を踏まえた上で投資した方が適切な場合があります。ですので、私たちはスタートアップに対して最善のアプローチを提供するために、双方の視点を大切にしつつ、それぞれのニーズに応じた最適な選択を提案することがポイントだと考えています。

元木:
まさにその通りです。起業家も投資家の方々も、我々はそれぞれに誠実に向き合っていく必要があります。お互いが誠実にどう対応していくかが、ある意味で信頼関係を永続的に構築できる一つの方法だと考えています。我々ベンチャーキャピタルとしては、基本的に起業家さんを中心に据え、それを支えるエコシステムとして存在しています。投資家さんもその一部です。ただし、我々はリターンも含め投資家とスタートアップを繋ぐ媒介者でもあります。
したがって、それぞれの方々としっかり対話を重ね、誠実に一つずつソリューションを提供していくことが、ある意味で貢献につながります。それら誠実な対応を通じて、継続的な信頼関係を構築することにつながるのではないでしょうか。これこそが、MICが25年間取り組んできたことなのではないかと、新たに気づいた次第です。

◎VCの存在意義とMICの役割

有賀:
いま元木さんから出たVCの存在意義について、お二人の認識をぜひお聞かせください。まずは海老澤さん、お願いいたします。

海老澤:
2018年にこの会社に来た時、VCの存在意義を自分の中で再定義する必要性を感じました。我々の使命は良いスタートアップを見つけ出し、その成長をサポートして、世の中を良くしていくことです。しかし、そう考えた瞬間に、一つ大きな機能を見落としていることに気づきました。それは投資家を募るということです。

成長のサポートには資金提供が不可欠です。そのため、投資家の方々を募って資金提供ができるよう、そのサポート体制を整えなければなりません。つまり、主役はスタートアップの方々であり、彼らの成長を支援し、世の中を変えて良くしていくこと。これが私の定義するVCの存在意義です。

実は、同じことを言っても人によって捉え方が異なるということが理由で、これは社内であまり声高に言っていません。自分の中での整理という面が強いですね。

有賀:
なるほど。同じことを言っても受け取り方が変わることもあるので、自分の中だけでそういう整理をされているんですね。元木さんからも、世の中に貢献していくとか、スタートアップの方が主役だという点で、同じような言葉をよく聞いていた気がします。

元木:
そうですね。海老澤さんが来てから5号ファンドを立ち上げる際に、ミッション・ビジョン・バリューについて話し合いました。当時は少し表現が異なる形にしていました。これは時代背景も影響していましたが、海老澤さんが来てから軸が少しシフトし、やはりスタートアップ中心だというキーワードが強調されました

当時(2018年~2019年)は設立から約20年経っており、その手前の時期(特に2010年以前)は、特に資金調達が簡単ではない状況でした。そのため、元々のミッションはしっかりと資リターンを出すという視点からスタートしています。振り返ってみると、そういった視点も確かにありますが、時代の変化と共に、我々(MIC・VC)の存在意義はスタートアップがあってこそだという点を改めて認識したんです。

◎デジタル技術投資の先駆者としての歩み

有賀:
さてMICは今年11月に25周年を迎えます。創業以来、ITデジタルテクノロジー関連企業への投資を得意とし、いわゆる老舗VCと言われる立場を貫いてきました。この25年間のバトンを受け継いで、どのような未来を描いていますか?

海老澤:
私も6年前にMICの一員となりましたが、やはりこれを次の世代に引き継いでいくことが重要です。元木さんが代表になられたのもその象徴の一つですし、この会社が続いていくためには、どのような風土・文化が望ましいかを考えることも大切です。

25年という歴史が我々の価値なのです。これは一朝一夕には築けません。特に、ずっとデジタル技術に軸足を置いてきたことが重要だと思います。その間、世の中は劇的に変化しました。我々の会社の設立は、iモードサービスが始まった年なんです。それ以来、社会は急速に変化し、アナログの部分がどんどんデジタルに置き換わっていきました。そのため、以前は投資対象と考えられていなかった分野も、今では我々のテリトリーに入ってきています。世の中の変化を幅広く見る必要があり、もはやデジタルを使っていない分野はほとんどありません。

この25年の変化を見ると、デジタルの重要性は今後も減ることはないでしょう。そう考えると、MICの存在意義は、デジタルを追いかけ、同時にデジタルに追いかけられ続けることなのかもしれません。

有賀:
新代表の元木さんはMICの存在意義についてどのようにお考えですか?

元木:
この25年間で培ってきた経験とアセットを、しっかりと次の世代に引き継いでいく必要があると考えています。25年前の設立時、我々は大企業とのオープンイノベーションをデジタルテクノロジーで実現することを目指しました。その思いは今でも変わっていません。25周年を迎えた今後も、その方針は変えずに進めていきたいと思います。

また、VCのエコシステムも大きく発展しました。投資家の方々も増え、VCの認知度も上がってきました。25年前は「VCって何?ベンチャーキャピタル?それは何?」という状況でしたが、今ではベンチャーキャピタルの役割や、ベンチャーキャピタリストという職業が認知されるようになってきました。
これを踏まえ、我々にはさらなる責任があると考えています。

VCのエコシステムをより良くするために、我々自身もVCをサポートする取り組みを始めています。新しいVCの育成なども、未来に向けて取り組むべき課題です。VCをより強固にしていく責任があると考えていて、これまでの取り組みに加え、エコシステムへの貢献を実現できれば面白いのではないでしょうか。それこそが我々の存在意義だと思います。

◎新体制への期待と抱負

有賀:
最後に、海老澤さんから、前代表取締役社長として新代表の元木さんへの期待をお聞かせください。

海老澤:
期待というより、今のままでいてほしいというのが私の思いです。無理に気負う必要はありません。先ほど話した時代の流れを見ると、ある意味で我々の見る領域は広がっていますが、それはチャンスだと考えています。

私はよく、イノベーションは交差点で起きやすいと言っています。異なる領域の技術を別の業界で使ったり、全く違うものが出会った瞬間にイノベーションが起こるのです。幅広い業界を見ることで、「この技術をあの分野に適用したらどうなるだろう」といった発想が生まれます。

我々がこれまで注目していなかった業界にもデジタル化の波が押し寄せています。そこに参入すると、我々の視点から見れば「これならいける」というアイデアがどんどん出てきています。ぜひ、これからもそういった可能性を楽しんでいってほしいと思います。

有賀:
では新代表に就任した元木さんから、意気込みをお聞かせください。

元木:
まさに海老澤さんがおっしゃったように、気負わずにやっていくことが基本路線だと考えています。大きく変える必要がないという認識のもと、着々と準備してきたものがありますので、それをしっかりと形にしていくだけだと思います。海老澤さんのアドバイスに従って進めていきたいと思います。

これまでのMICの良い点を継続していけるように努力していきます。ステークホルダーの方々とより強固な信頼関係を構築できるよう、関係各所の皆様とより密接に連携しながら進めていけば、さらに良い結果につながると感じております。

有賀:
ありがとうございます!1年後に「1年前はこんな話をしていましたが、どんな1年でしたか」という振り返りもできればと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

海老澤・元木:
ありがとうございました。


◎Podcast最新話はこちら🎧✨

MICでは投資先企業を紹介する公式Podcast番組「起業家のキモチ~シーズン4~」を毎週火曜日に更新中。今回の収録音源もSpotify、Apple Podcastなど各種プラットフォームからご視聴いただけます。こちらもぜひ、お聞きください♪


◎モバイルインターネットキャピタル株式会社概要

モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテック領域において、リード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先のスタートアップへの支援の一環として、事業会社との事業連携等オープンイノベーションにも注力中。


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