見出し画像

SaaSで保育の未来を変える!子どもたちの笑顔のために:㈱カタグルマ_前編

■はじめに

こんにちは、ベンチャーキャピタルMICの有賀です。モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテック領域において、リード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先のスタートアップへの支援の一環として、事業会社との事業連携等オープンイノベーションにも注力中です。

本記事は、弊社が毎週火曜日に配信している公式Podcas「起業家のキモチ」を文字で読むことができる「読むPodcastシリーズ」です。投資先の起業家へのインタビューを通じて、事業内容や起業までのストーリー、今後の展開などについてお聞きしています。聴きドコロをまとめていますので、空き時間でさくっと読みたい方にお勧めです✨

今回お迎えするゲストは、株式会社カタグルマの代表取締役・大嶽広展さんです。カタグルマが挑むSaaS×保育の可能性とは?スタートアップの創業秘話とは?3本立ての前編となる本記事では、起業家大嶽さんにフォーカスを当てて、起業の経緯に迫ります


■超労働集約事業な保育業界の課題をSaaSで改善に導く

MIC有賀:
本日はゲストに株式会社カタグルマより、代表取締役CEOの大嶽広展さんをお迎えしています。大嶽さんよろしくお願いいたします。
 
カタグルマ大嶽さん:
はい、よろしくお願いいたします。
 
MIC有賀:
 大嶽さん率いる株式会社カタグルマは、「子どもに関わる全ての人に新たな景色を。」をミッションに掲げて、保育業界向けのSaaSの企画開発などをされていらっしゃいます。ということなんですが、大嶽さんから改めて御社について、ご紹介をお願いできますでしょうか?
 
カタグルマ大嶽さん:
はい、改めて株式会社カタグルマCEOの大嶽と申します。
弊社は「子どもに関わる全ての人に新たな景色を。」というミッションを掲げています。ビジョンに「子どもの育ちを支える仕事を 子どもの憧れから社会の誇りへ。」と形で掲げています。

弊社の対象となるのが、保育園とか幼稚園、学童保育とかですね。障害者の子どもさんを預かる療育施設、そういった、子どもを預かる施設で働いている、例えば保育士さんとか教員の方々、あと看護師さんとかですね。調理師の方々なんかもいらっしゃって、そういった方々の人材不足の解消及び労働環境の改革というものを支える、HR SaaSを提供させていただいています。

特に中心なのが、保育士という職種の方々なんですけれども、この保育士の有効求人倍率というのが、特にサービス業の中でもトップクラスで高く、年々上がっている状況です。また性別も、女性が95%以上という特徴のある業界でもあります。女性が多いため、各ライフステージやそのプロセスの中で離職せざるを得ないという方々も多く、業界全体の離職率もとても高かったりします。

さらに、いわゆる売上に対する人件費率が70%を超える業界なんです。こういう業界は他の業界ではなかなか類を見ない、いわゆる超労働集約事業だったりします。それにも関わらず、人材管理やマネジメントにおけるデジタル化というものがかなり遅れている状況です。極めてアナログな状態ですので、その領域の変革を行っている会社です。

■「パパしか見れない景色」社名の由来となった我が子との日常

MIC有賀:
ありがとうございます。社名となっている「カタグルマ」の由来も気になっているのですが、子どもを肩車する肩車ですよね?これはどういう思いからなんでしょうか?
 
カタグルマ大嶽さん:
私が会社を作る時、まさにどんな社名にしようかなと思ってた時に、当時まだ3歳だった私の息子が、よく「パパ肩車して」とせがんで来ていたんです。ある時に「なんでそんなに肩車好きなの?」と聞くと、「普段見れない景色が見れるからだよ」って。そんな大人っぽい表現は使ってないんですけども、そういうニュアンスで、子どもなりにメッセージをくれたんです。「パパしか見れない景色が見たいんだ」と、そんなメッセージをくれたんですね。

子どもって非常に純真無垢ですよね。そういった無邪気な子どもだからこそ、普段見れない景色というものを見たい!という素直な思いを伝えてくれたのかなと思うんです。それは大人になっても本来あるべきで、保育に関わる方々が普段は見れない景色だったり、気づいてない景色というものを、我々が気づかせてあげると言うとおこがましいですけども、気づかせてあげられる存在になっていきたいーそういう思いから、カタグルマという社名になりました。そこからプロダクトの名前も、同じくKatagrMa(カタグルマ)という名前にしています。

■保育業界に特化したSaaS「KatagrMa」

MIC有賀:
ありがとうございます。大嶽さんが更新されていらっしゃるnoteからも、保育業界への熱い思いをひしひしと感じていました。リスナーの方にも分かるように、ぜひ御社のプロダクト「KatagrMa」の特徴についても教えてください。
 
カタグルマ大嶽さん:
はい、ありがとうございます。「KatagrMa」は業界に特化したバーティカルSaaSですので、当然その業界特有の特徴があります。保育施設といっても保育園、幼稚園、学童保育だったりと、様々な業種業態があるんですけれども、共通して言えるのは、現場があって本部・本社があるという構図です。
なおかつ、この10年、20年というスパンの中で、1社で複数の保育園を運営・経営する企業・事業者がかなり増えてきたので、拠点がそれぞれあったりします。するとその拠点間で、現場の情報共有などのコミュニケーションが発生します。
先ほどもお伝えした通り、売り上げに対して人件費率が70%を占めるという、人で成り立つ業界でもあるので、人材管理というものがそのまま(ちょっと言い方に語弊があるかもしれないですけども)商品そのものであって、その質がすべての質を規定していくという世界なんです。どんな業界においても、人材育成というものは当然必要なことですが、保育の業界においてはさらに人材育成というものが質に転化されていくと認識しています。そういうマネジメントの効率性アップや業務負担の軽減をするなど、そんな目的を持って作られたものがKatagrMaなんです。

加えて特徴的なのは、監査があるんですね。国から、いわゆる給付金というものが税金ベースで降りてくるので、当然のことながら国や自治体からの監査を受けなければなりません。その監査の中に人的な管理や人材管理という項目があるんですが、ここは結構煩雑で紙で管理されていたり、アナログで管理されていたりします。こういった特有の管理業務に対して、我々が寄り添った機能を付加していく、管理がしやすくなることで効率化されていく、そういう機能があります。
 
MIC有賀:
現場の方々にとっては仕事の効率化アップにもなりますし、ご自身たちの成長の把握や目標管理もできるので、「待ってました!」っていう反応が多かったのではないでしょうか?
 
カタグルマ大嶽さん:
そうですね。まさにまだプロダクトの要件定義であるとか企画の段階で、特に園長先生と言われる現場のトップの先生方や、経営者の方々にもお声を聞かせていただきました。その中で「待ってました!」という声もたくさんあったことで、「やっぱり活用性があるプロダクトなんだ」と感じながら開発を進めることができました。

■中学生時代から抱いていた教育への思い

MIC有賀:
ありがとうございます。御社は2020年に設立、翌年2021年にはシードラウンドで資金調達を実施。今年2024年にはプレシリーズAラウンドで資金調達されて、累計で2億強の調達額になりました。このタイミングから弊社MICもご一緒させていただいております。

ここからは、大嶽さんのキャリアを紐解いていきます。もともとは株式会社船井総合研究所に入社されて、教育機関や保育施設など、子どもたちの育ちを支える環境を経営面から支えるということで、保育業界の経営コンサルティングをゼロからスタート。16年間で430件以上のコンサルティング契約、顧問契約を結んでいらっしゃいます。著書も拝見し、この業界ではかなりトップランカーだということを再認識していたのですが、そもそも大嶽さんがこの業界に没入するきっかけとして、どのような経緯があったのでしょうか?
 
カタグルマ大嶽さん:
はい、ちょっと遡ってしまうんですけれども、中学校の時にまずは人生を変える恩師に出会ったというのが一番大きいんです。そこで、教員になりたいという気持ちがすごく強くなったんですが、一方で教員の負の一面を見ることも増えるようになっていました。
根っこにはその思いはあったんだと思いますが、大学は経営情報システム工学ということでエンジニアを養成するような学科を専攻しました。ITとか経営を学び、コンサルティングファームに就職しました。当時就活をしていた時に、船井総研という会社が学生向けに「起業したい学生集まれ」みたいなメッセージを出していたんですね。そこに魅かれた部分もあって、入社1年目から自由に事業開発、BizDev(Businees Development)ができるっていう会社だったんです。その時に自分がどんな分野で、どんなコンサルティングをしていきたいのかと考えた時に、まさに中高時代のことを思い出しました。そこで改めて、教育分野に携わっていこうと。教員という立場ではないんだけれども、でもその教育業界を経営サイドから支援していく立場で関わりたいという思いは、その時に強く抱いたという背景があります。

その後、いわゆる教育機関向けのコンサルティングということで、大学や専門学校、学習塾など、さまざまな教育機関のリサーチをしていました。そんな中、たまたま私が学習塾向けにあるセミナーをさせていただいたことがあったんですが、そのセミナーの案内を見た保育業界の幹部の方から、「一度保育業界向けに、同様のテーマのセミナーをやってもらえないか」というオファーを受けました。実は、それが初めての保育業界との接点でした。
 
そこから改めて保育業界とはどんな業界なのか、ということを調べ始めました。当時、市場規模もいまの半分ぐらいでしたし、いま以上に封建的でレガシーな業界だったので、明らかに自治体の公立の保育所が多くて。いまはもちろん、民間保育園が多いんですけど、まだ当時はそういった民間に開放されていない業界だったんです。ただ明らかに、民間企業が業界への参入を虎視眈々と狙っていったタイミングではありました。今後間違いなく、女性の社会進出や共働き世帯が増えていくことによって、この市場が拡大していくということも確実でした。そんなブルー・オーシャンだけれども、成長性が見込めて、かつ社会的意義もあって、少し広範囲に見れば教育という自分が関わりたい分野であったというところから、始まりました。

■衝撃を受けた保育施設の現状、危機感が後押しした起業への道

MIC有賀:
ありがとうございます。独立しようという思いは入社時からあったということですが、実際に企業に至る際には何かきっかけがあったんでしょうか?
 
カタグルマ大嶽さん:
はい、もうこれは明確にありました。いまは子ども家庭庁が管轄してるんですが、2018年当時は内閣府が保育施設を管轄していました。そんな内閣府が、初めて統計資料で「保育施設の事故発生件数」という数値を公表したんですが、これを見たのがきっかけです。
当時、国は待機児童解消加速化プランというプロジェクトを大々的に掲げて、とにかく保育施設をどんどん増やして供給を増やしていこうとしていました。私自身もその過中で、事業グロースや事業開発コンサルティング、異業種からの新規事業参入などをテーマにコンサル活動をしていました。

当然、施設が増えて預かる子供が増えれば、現場の事故発生件数は増えるんですけども、供給を過剰に増やしたことによって、事故発生率が3倍ぐらいに増えていたんです。供給を増やしたことによって、子どもの命を奪う施設が増えてしまったということを知ったのが、起業の大きなきっかけでした。今後はいわゆる供給量だけでなく、質を追求していかなければいけない、と。そうでないと、この業界が今後も同様の犠牲者を出してしまうという強い危機感もありましたし、責任感もあったんですね。

そう感じるようになったものの、会社は事情も色々あり、これまで通り量を追求していくべきだ、という方針と姿勢がありました。当時はVP(Vice President)という立場にいたため、だんだん業界と向きあう時間も減ってきていました。加えて、もうすぐ40歳。子どもも2人いて、この先の人生を考えた時に、本当に自分が誇りを持って、そして子どもに誇れる仕事で、残り10年、20年、30年と全てをかけて打ち込める分野で仕事をしたい、そう思ったことが起業のきっかけになります。
 
MIC有賀:
ありがとうございます。ここまで、1週目は起業に至るまでの経緯をお伺いしてきました。続く2週目は、サービス立ち上げ以降のお話を伺っていきたいと思います。大嶽さん、引き続き来週もよろしくお願いいたします。
 
カタグルマ大嶽さん:
はい、よろしくお願いいたします。

👉2週目(中編)へ続く👈


▶Podcast最新話はこちら🎧✨

MICでは投資先企業を紹介する公式Podcast番組「起業家のキモチ~シーズン4~」を毎週火曜日に更新中。カタグルマ大嶽さんにご出演いただいたPodcastもSpotify、Apple Podcastなど各種プラットフォームからご視聴いただけます。
カタグルマ大嶽さんご出演の回:起業家のキモチシーズン4_EP37~EP39


▶モバイルインターネットキャピタル株式会社概要

モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテック領域において、リード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先のスタートアップへの支援の一環として、事業会社との事業連携等オープンイノベーションにも注力中。


いいなと思ったら応援しよう!