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盗撮されてるんだけど、どうしたらいい?

たまにある。不穏な気配を察した方角へ目を向けると、カメラを構えてニヤニヤとこちらを見ている人の姿を見つけることが。

相手は堂々と私を撮影している。

動画なのか写真なのかは不明だが、私が気づいて目を向けてもその手は下げられることなく撮影は続けられる。

ほとんどの人はスマホの小さなカメラレンズをこちらへ向け、画面を見ながらニヤついている。たまに本格的な一眼レフを銃口のようにしっかりとこちらへ指してくる人もいる。

ドキューン。グサっ。うっうううう。やられたぁー、、、。


わかっている。私が有名なのではなく、ウチの犬がかわいいのだ。

そう言う自分が恥ずかしくなるほど親バカっぽい発言だが、本当なのだから仕方がない。

フランスでは相変わらず柴犬人気が根強く、すれ違う人が「おぉ!シバァー!」と口に出さずにはいられないほど柴犬が好きなのだ。

飼い主の私に直接色々と話しかけてくる人もいるし、こそこそと友達や家族同士で、「ほら、あれ、柴犬よ」と囁きながら通り過ぎる人もいる。

写真を撮ってもいいですか?と聞かれることも日常茶飯事。それだけ柴犬はかわいい、と評判なのだ。

で、そこまでなら嬉しい気持ちだけ。かわいい柴犬の飼い主で良かったわ、で収まるのだが。。。


柴犬を連れて散歩をしていると、ところどころで休憩を挟まなくてはならなくなる。

柴犬は超がつくほどマイペースで頑固な性格を持つ犬種で、気分が乗らなかったりちょっと疲れたり飽きたりすると、すぐに足を止めてしまう。いわゆる「拒否柴」だ。

ところ構わずそれをやられると、飼い主は立ち往生して困惑してしまう。

柴犬の飼い主の中にはサッと抱きかかえて立ち去る人もいれば、強引に引っ張って引きずる人もいる。私は犬のご機嫌を伺いつつ、チョイチョイと軽く引っ張ってなんとなく歩いてもいいかなって気持ちにさせる作戦を使っている。

9キロもある犬を抱きかかえたり引きずって歩くのは、体力的にしんどいからだ。

多分その様子が側から見て面白いのか微笑ましいのか、思わずカメラのレンズを向けたくなる光景なのだろう。

時間がある時は、近くのベンチや低い柵などに腰を下ろして柴犬が再起動するまで根気よく待つこともある。動かなくなった柴犬と一緒にただ座っているその様子を撮られることもしばしばだ。


犬は人間の社会で何を言われようと素知らぬふりをして生きていける。だが私は人間だ。盗撮されたら心がザワつく。素知らぬ顔など到底できない。

それが悪意のない撮影であったとしても、見知らぬ誰かのカメラロールに私の写真が入っていると考えるだけで背筋がヒヤリとする。ましてやその写真を別の誰かに見せたり、不特定多数が閲覧できるSNSに投稿したりでもしたらどうするよ。

目視できないくらい遠くにあった恐怖が徐々に近づいてくる音が聞こえる気がする。ズリズリズズゥーって。


さっきも散歩の途中で動かなくなった犬の様子を自分スマホで撮っていたら、そんな私と犬の姿を盗撮された。自転車に乗った垢抜けた自然派アーティスト風のおばさんだ。

道で座り込む犬の写真を撮る私の姿が彼女のツボにハマったらしい。

目が合ったので、これ見よがしに不機嫌な表情を向けたら近寄ってきて、「とても素敵だわ」と一言残して立ち去った。

素敵ってなんなのさ?素敵だったら盗撮しても良いってゆーのか?

自己満溢れる彼女の顔が怖すぎてなんて言い返したらいいのかわからない。

撮らないでくださいってハッキリ言いたいのに、もう撮ってしまった後で何を言っても無駄だと感じてしまう。しかも相手は好意を持っているからこそ撮っているのだ。私が怖がっているなんて全く想像もしていない。


ネットで繋がる便利な世の中になり、私もその恩恵を大いに受けている。

だがその先に潜む悪意の存在に気づいているからこそ、どこの誰ぞや知らぬ人にデジタルで撮られることに恐怖を感じてしまうのだ。

昔々の大昔、撮った写真を見るには現像屋さんにお願いをして数日待たなければならなかったあの頃は、普段の姿を盗撮されても、別にそこまで怖くはなかった。

もちろんスカートの中とかエロい写真なら怖かっただろうけど、普通に散歩している姿くらいならそれほどでもなかっただろうに、今はこんなにも恐怖を感じてしまう。

当時は盗撮された写真がどんな経路でどう扱われるのか、想像ができなかった。それにフィルム写真の加工や拡散には限度がある。恐怖は目に見えない彼方にちょこんと置かれたまま、私には近づいてこなかった。

だが今は、テクノロジーの名の下に様々なシチュエーションが想像される。

会ったことも話したこともない知らない誰かが私にカメラのレンズを向ける恐怖。そしてその写真が私の知らないどこかでお披露目され、ともすれば拡散されて悪意の対象にもなりかねない現実。


物心ついた頃から写真を撮られることが好きではなかった私は特にセンシティブなのかもしれない。江戸や明治時代の人じゃあるまいし、写真を撮ると魂が吸い取られるとでも思っとぉんちゃう?と友人たちからからかわれたこともあるくらいだ。

なんて説明したら良いのかわからないが、私は写真に撮られることが昔から苦手だった。同年代の女子たちが鏡に向かってベストショットのキメ顔を練習している間、どうやったら無理やり写真を撮られずに済ませるかを考えていた。

  • カメラマン役を引き受ける

  • 端っこから徐々にフェードアウト

  • 背の高い人の後ろに立つ などなど。。。


わかっている。私は異常に、そして極端に写真に撮られるのが苦手なのだ。

だからどうかお願い。私のことを堂々と盗撮するのをやめてください。

写真を撮って良いかと尋ねられたらハッキリと「私のことは撮らないで」と言える。だが盗撮は無許可なので私からは何を言う隙もない。


悪気なく盗撮をする人たちの好奇が私に恐怖をもたらす。

全くもって、なんとも住みにくい世の中になったもんだ。

盗撮アカンで、絶対!

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