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パリの憂鬱〜冬〜

確かに今年のパリは例年以上に雨が多い。それは南仏も同じで曇りや雨、または豪雨の日が増えたと実感する。でも南仏では1週間も続けて雨が降ることはないし、太陽が顔を出さない日だってそんなには続かない。

用事があってパリへ戻って2週間が過ぎた。その間、一体何度太陽の光を見ただろうか?

  • 朝起きた時に窓辺に太陽の光が差し込んでいても、用事や支度を済ませて外へ出たらもう曇って雨が降っている。

  • 傘を差している人がいないのを確認してから外へ出たら雨が降っている。

  • 目視で雨が降っていないことを確認してから外へ出ても、頭髪の表面に細かい水滴のヴェールがかかる。霧雨だ。

  • 雲の合間に光が差しているのが見えて、雨が降っていないのをしっかりと確認してから外へ出ても地面が湿って濡れている。


地面が常に濡れているので防水でない靴を履いていると足先が濡れ、リトマス試験紙に液体が染み込むようにカラダの中へと浸透してくる。

気温は10℃前後なのにめっちゃ寒く感じる。寒い、心が寒過ぎる。空は常に分厚い灰色の雲に覆われていて、色彩を消失している。暖かみゼロの領域。

パリだって夏が近くなれば色とりどりの花が咲き、空も晴れてスカッとパステル調の青色が広がるが、冬にそれは高望みらしい。


好きなことをして友達と遊ぶ。美味しいものを食べ、好きな音楽を聴いて気分を上げる。

そうやって一時的には憂鬱から脱却できるかもしれないけれど、結局は薄暗い色のない世界に丸ごと飲み込まれて沈んでしまう。ブクブクブク。。。

一生かけて打ち込めるものがある人なら環境なんて関係なく生きていけるだろう。都合の良いものしか見えないようにマインドコントロールができる人なら生きていけるだろう。

薄暗い環境に慣れっこの人なら全然平気なことだろう。

私のように温暖で明るい環境でしか生活したことがなく、フ〜ラフラと環境や自然に流されて生きる人から太陽の光を奪ったら、一気に腑抜けになってしまう。


パリ症候群という言葉が流行った時に思ったのだけど、憧れと現実のギャップだけで精神障害を引き起こすものなのか、私は半信半疑だ。だったらハワイ症候群とかシドニー症候群とかがあっても良いではないか。(私が知らないだけで、あるのか?)

パリ症候群(パリしょうこうぐん、仏: syndrome de Paris, 英: Paris syndrome)とは、「流行の発信地」などといったイメージに憧れてパリで暮らし始めた外国人が、現地の習慣や文化などにうまく適応できずに精神的なバランスを崩し、鬱病に近い症状を訴える状態を指す精神医学用語である[2]。具体的な症状としては「日常生活のストレスが高じ、妄想や幻覚、自律神経の失調や抑うつ症状をまねく[3]」という。

ウィキペディアより

私はパリになんの期待もせずにやってきた。

流行のオシャレやブランドには興味はないし、食べ物だってスイーツ以外はそれほど興味はない。ワインは飲まないし西洋人たちに囲まれて嬉しいとも思わない。(ぶどうジュースと髭男爵の方が好き。ルネッサーンス!)

そりゃぁカルチャーショック的なものはたくさん経験したけど気が病むほどのことでもない。それよりも何よりも天気の悪さにため息が止まらなかった。


冬、朝起きると辺りは真っ暗。暗いうちに出勤して暗くなってから帰宅する。昼休憩で外出しても雑踏の上には灰色の空が広がっている。

店先のディスプレイや道行くお洒落さんたちがこぞって気分を上げようと頑張っているのを見て元気づけられるのも最初のうちだけで、見慣れると逆にしんどくなってくる。そんなに張り切らなくても。。。肩に力入り過ぎ。はぁ〜。

春が来て夏になると、カフェのテラスでぼーっとしているだけでもウキウキとテンションが上がるのに、冬は何をしてもため息が出る。

パリの冬の薄暗さにはこの先一生努力しても適応できる気がしない。


たまに訪れるのならいい。滞在期間が決まっているなら、その間だけ我慢すればいいだけのことだ。街歩きをする時に雨だったらテンションが下がるかもしれないけれど、まあそれも一時的なことだからため息が出るほどは落ち込まない。

でも一生住まなければならないって言われたら。。。

大きく首を横に振り過ぎて、クラクラと目眩がするだろう。

そして首の筋を違えてしまうに違いない。

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