冷えた心にチョコレートを
どんよりと曇っている。フランス北部特有の天気だ。
昼過ぎからシトシトと雨が降り出した。
さぶっ。
いや、寒くはない。いやいや、寒いこたぁ寒いが、真冬の寒さではない。夏に比べると肌寒く感じるくらいのものだ。
スマホで気温を確認すると19℃と表示されている。
だったら寒いこたぁない。
でも寒い、気がする。心が寒々とする。
暗くて色のない粒子がどっと一斉に押し寄せてきたような、そんな空気に包まれている。フランス北部特有の空気。そう感じるのは私だけだろうか?
女子たちが憧れるパリはそんなフランス北部の街だ。
キラキラとした南仏の太陽に照らされて生き生きと輝く色たちを見慣れていると、涙が出るほど悲しい気持ちに襲われる灰色の空気。地面はぬかるみ、空には分厚い雲がどっしりと覆いかぶさっている。
毎日欠かしたことのない日焼け止めクリームを躊躇するほど薄暗い一日。朝から晩までずっと薄暗い天気。
こんな環境で憂鬱に押し潰されずに生きていくには、ひたすら楽しいことを思い浮かべたり、ひたすらバカ騒ぎでもしていなければ無理だ。
バカ騒ぎが苦手な私は好きなことを思い浮かべながら時間を過ごす。
手が空いた午後、ボーっと灰色に染まった窓の外を眺めていたら理由もなく悲しみが込み上げてきそうになる。
そんな時は温かい飲み物を飲みながら大好きなチョコレートをほおばることにしている。口いっぱいにとろける甘くてほろ苦いチョコレート、それだけでどれだけ心が救われることか!!
最近私がドはまりして毎日のように食べているのがこのチョコレート。
ブラックだけど苦さ控えめで、アーモンドのゴリゴリとした触感が楽しくて最高においしい!
同じブランドのミルクチョコレートはまったりと歯茎にまとわりついてしみるほどに甘いが、ブラックはちょうど良い甘さだ。
先週パリのマレ地区周辺を歩いていると、ブランド化したケーキやチョコレート屋の前に行列が出来ていた。
「行列のできる店」というのは大概は褒め言葉として使われるものだが、並ぶのが苦手な私にとっては最も避けるべき店となる。甘いものは好きだけど、よっぽどのことがない限り、わざわざ混雑している店へ何十分も行列に並んで入ろうとは思わない。
ほっぺがとろけるような魅惑的なスイーツがそこにあったとしても、私はスーパーマーケットで買えるこのチョコレートで十分に満足できるのだ。
もちろん、行列に並んでも苦にならない人が手土産で持ってきてくれたら、両手を挙げて大喜びする。
そして「ありがとう!」と声を張って言うだろう、最高にめっちゃめちゃめちゃうれしいわぁ!って。