ペットのいのち
動物は生きている。ペットとして人間に寄り添い生きる動物たちを、やはり私は『モノ』としては扱えない。
日本で先の航空機事故の際に犠牲になったペットたちについての議論があることを知った。私は事故の詳細を熟知している訳ではないが、あの事故では貨物に乗せていたペットを救うことは出来なかった、と思う。
エンジンから火が出ていたし、着陸した瞬間には機体の腹部分はえぐれて破損していたように見えたからだ。
あんな状態で貨物室へ救助に向かうのは炎に巻かれに行くようなものだ。
危険すぎる。
ただ前にも書いたが、今後どうにかしてペットの救出もできるような手段を見いだせないだろうか、と願っている。
フランスでは小型であればケージやカバンに入れた状態でペットを同乗させることが出来る。
特に猫は硬いプラスチックケージに入れられることが多い。大概の猫は中でクルンと丸まったままじっとしているので、外からは何が入っているのか分からない。ひっそりと静かに暗いケージの中に収まっている猫について、クレームを言う人はほとんどいない。
犬もケージや蓋つきのカバンに入れて座席前の足元のスペースに乗せているので、覗き込まない限り姿は見えない。吠えたりケージから出したりしなければほとんどの人に気づかれない。
もちろんこれは国内線の数時間のフライトでのことだが、小さなペットたちは飼い主と同乗出来る。
機内持ち込み可能なサイズのケージに入らない大きさのペットは、フランスでも基本的に貨物での預かりとなる。揺れる機内で固定する場所がないのは危険なので、安全上仕方のないことだ。
以前確かアメリカで、機内持ち込みサイズのパグ犬を足元ではなく頭上の荷物入れに入れるように指示され、着陸後に取り出したら息も絶え絶えで結局亡くなってしまった、ということがあった。
足元に十分なスペースが確保できないと判断した客室乗務員が頭上の荷物入れに入れろと指示したことに対して裁判が行われた。
以降、パグ犬などの短鼻犬種は搭乗を拒否されることがあると聞いた。これは『命』に係わる安全上の配慮だ。短鼻犬種は呼吸器官が繊細なので、気圧の変化や狭い空間に閉じ込められることで『命』に危険が及ぶ。
ペットは『荷物』ではなく『命』なのだから当然の配慮だと私は思う。
今回のように事故が起こった場合、最優先するのは人命である。それは揺るがぬことであり、だからこそ手荷物を置いて身一つで脱出するように促されるのだ。
ペットが救出の対象にならないのは、『荷物』扱いされているからだ。
『荷物』を置いて人間だけが脱出する。
それがルールなのだから従うしかない。
でもでも、
そのルール、変えることは出来ないだろうか。
人間に寄り添って生きるペットたちが『荷物』としてではなく、『命』として認識されればおのずとルールは変わってくる。
飼い主が責任を持つ、という内容の同意書にサインをして、非常時の行動についての講習を受けてもいい。それが有料だって構わない。
『命』を救うためにできることを考えたい。
貨物室のペットについてはその場の状況を冷静に受け止め、今回のように貨物室が破滅的な状況にある場合はどうしようもない。でももし救出できる望みがあるなら、どうにか工夫をして助けて欲しい。
人間と共に生きるペットたちは飼い主のために生きている。飼い主のいないペットは殺処分されたり保護施設へ入れられるのだ。
人間のために生きる『命』を持つ動物たちの存在とその『命』の重さの受け止め方を、社会全体でもう少しよく考えてみることは出来ないだろうか。