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FCザンクトパウリのホーム初勝利と守護神ニコラ・ヴァシリ FOKUS Bundesliga!!! #35
ザンクトパウリ、今季ホーム初勝利!
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11月29日、ハンブルクに位置するミラントア=シュタディオンが沸いた。同スタジアムを本拠地とするFCザンクトパウリが、ブンデスリーガ1部に復帰した今季、ホームで初勝利を挙げたのだ。得点が決まる度に流れたのは、Blurの「song2」。歌に合わせて観客たちが歓声を挙げる姿は印象的だった。
対戦したのは、同じくドイツ最北部にホームタウンを置く、ホルシュタイン・キール。今季ブンデスリーガ1部昇格を果たした2クラブ同士の対戦は、3-1というスコアや試合展開を含め、ザンクトパウリが圧倒した。クラブの状況の違いが明確になった形だった。
新監督のもとでの戦い
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FCザンクトパウリは今夏、昇格最大の功労者だったファビアン・ヒュルツェラー前監督が、ブライトンへ引き抜かれる形で辞任。後任としてウニオン・サンジロワーズをベルギーカップ優勝に導いたアレクサンダー・ブレシンを招聘する。
新監督のもとで迎えた2024/25シーズン、第5節SCフライブルク戦では今季初勝利、第9節ホッフェンハイム戦では今季2勝目を挙げるなど、ブンデスリーガ1部で実績のあるクラブとアウェーで対等に渡り合う実力を見せた。そして迎えたのが、第12節ホームでのホルシュタイン・キール戦だった。
ザンクトパウリの戦術
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ザンクトパウリは、ユリアン・ナーゲルスマンの戦術を彷彿とさせる戦い方を展開する。中盤としてもプレーできるエリック・スミスを3バックの中央に置き、一方のサイドで攻撃が展開される際には反対サイドの選手がペナルティエリアの幅まで絞るのだ。
またモルガン・ギラヴォギがハーフスペースで後ろを向くことで縦パスを引き出し、ワンタッチで味方へ落としてチャンスを創出。ボールを奪われた際には密集してゲーゲンプレスをかけ、奪えなければミドルブロックを組んで相手の進行を妨げてみせた。
第12節 ホルシュタイン・キール戦
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攻撃しているサイドと逆のサイドの選手が絞る動きは、ホルシュタイン・キール戦の先制のシーンでも明らかだった。オラダポ・アフェラヤンの左サイドでの仕掛けからのこぼれ球を拾ったヨハネス・エッゲシュタインの落としに走り込み、ボックス正面からシュートを放ったのは、右ウイングバックのマノリス・サリアカスだったのだ。
前半はザンクトパウリが62%のポゼッションを誇り、相手にほとんど攻撃の時間を与えなかった。後半に入ると、ザンクトパウリは相手にボールを預けてスペースを消し、ミドルブロックからのショートカウンターを狙う戦い方に移行。作戦が功を奏し、56分、再びエッゲシュタインのアシストからモルガン・ギラヴォギが今季初ゴールとなる得点を挙げたのだ。
試合終盤の85分には、相手コートの左サイドで得たスローインに対して、相手コートの左半分に9選手が密集。中央にいたフィリップ・トロイへとボールが渡り、彼からの縦パスをスペースで受けたエッゲシュタインが巧みにボールをコントロールし、ダメ押しとなる3点目を決めた。
カルトクラブの守護神 二コラ・ヴァシリ
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ただホルシュタイン・キール戦で最も観客が沸いたのは、ゴールシーンではなかった。前半終了間際の43分24秒、サリアカスのヘディングのバックパスが短く、そのボールに反応して飛び出した相手MFルイス・ホルトビーとザンクトパウリのGK二コラ・ヴァシリが接触し、ホルシュタイン・キールにPKが与えられたのだ。
PKキッカーは、ザンクトパウリ最大のライバルであるハンブルガーSVユース出身のヤン=フィーテ・アルプ。ヴァシリは、アルプがゴール左隅に放ったシュートを止め、同点の危機からチームを救ったのだ。
今季前半ここまでのブンデスリーガにおける最高のGKを選ぶなら、二コラ・ヴァシリ以外にいないだろう。昇格クラブで素晴らしいセーブ率を記録しているだけでなく、すでに2度PKを阻止し、正確なキックでビルドアップにも貢献しているのだ。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表でもある同選手のチームへの貢献度は計り知れない。
ブンデスリーガ随一の「話題を呼ぶクラブ」
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シーズン前に監督が解任されたとは思えないほどのチームの完成度を誇るザンクトパウリは、今季のブンデスリーガにおける注目すべき要素の1つとなっている。12節終了時点で他の12位以下のクラブが23失点以上を記録しているにも関わらず、ザンクトパウリの失点数はわずか15。リーグで5番目に少ない失点からもわかるとおり、粘り強い守備もチームの特徴だ。
またザンクトパウリといえば、11月14日にソーシャルメディア「X」から撤退を発表するなど、活動的な側面でも知られる。様々な話題を呼ぶ同クラブはかつて宮市 亮選手がプレーしたことから、日本でも人気のあるクラブだ。ロックが好きな人であれば、試合前になるAC/DCの「Hells Bells」の鐘の音を聴くだけでも、このクラブに心動いてしまうかもしれない。
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