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ドイツ期待の若手逸材5選を紹介!Ⅲ VfBシュトゥットガルトの若武者たち FOKUS Bundesliga!!! #26

前書き

2023/24シーズンのブンデスリーガ開幕前、シュトゥットガルトがシーズンを2位で終えると想像した人がどれだけいただろう。2022/23シーズンを16位で終えた同クラブは、2023年夏に主将の遠藤航ボルナ・ソサなど実力者を失い、新たに迎えた選手も決して高い評価を受けていなかった。

しかし彼らはシーズンを通じ、23勝4分7敗という圧巻の成績を残す。アタカン・カラツォルクリス・フューリッヒなど元々の主力に加え、セール・ギラシーデニス・ウンダフアレクサンダー・ニューベルなどの新加入選手たちが実力を発揮した結果だった。

クラブ内外で評価を飛躍的に高めたのは、セバスティアン・へーネス監督。過去にバイエルンⅡホッフェンハイムを指揮した同氏は、高い位置でのボール奪回とサイドを効果的に攻める戦術で選手の実力を引き出し、チームを躍進させた。

シュトゥットガルトの勢いは、今季も継続している。チャンピオンズリーグのリーグフェーズ第3節では、トリノでイタリアの雄ユヴェントスに勝利するなど結果を残している。本テキストではそんなシュトゥットガルトで輝きを放つ5人の若手ドイツ人選手を紹介する。




1. ジェイミー・リーヴェリング #18

Jamie Leweling
生年月日:2001年 2月26日
出身:ニュルンベルク, バイエルン州
身長:185cm 利き足:右足
主なポジション:左ウイング, 右ウイング
2023/24シーズンの成績:34試合 4得点 4アシスト(ブンデスリーガ)

10月15日、ミュンヘンで行われたオランダ代表との一戦で、64分、ジェイミー・リ―ヴェリングがドイツ代表初ゴールを挙げた。代表デビュー戦で、堅守を誇るオランダ相手に得点したこと自体が、彼の現在の好調ぶりを表しているだろう。

ガーナ人の父とドイツ人の母の間に生を受けたリーヴェリングは、ニュルンベルク出身。名門FCニュルンベルクのユースやグロイター・フュルトなどのバイエルン州を代表するクラブやウニオン・ベルリンでのプレーを経て、2023年にシュトゥットガルトへ加入した。

ストライドの長いスプリントや豊富な運動量を武器とするリ―ヴェリングは、シュトゥットガルトで主にサイド攻撃を担っている。機を見て中央へと侵入して威力あるシュートを放つことができるうえ、体格を活かしてボールキープもできる。更なる活躍が期待されるタレントの持ち主だ。


2. アンジェロ・シュティラー #6

Angelo Stiller
生年月日:2001年 4月4日
出身:ミュンヘン, バイエルン州
身長:183cm 利き足:左足
主なポジション:セントラル・ミッドフィルダー
2023/24シーズンの成績:32試合 1得点 5アシスト(ブンデスリーガ)

2023年夏にシュトゥットガルトが突き付けられた最大の課題は、リヴァプールFCへと引き抜かれた遠藤航の後任探しだっただろう。攻守の要だった前主将に代わる存在としてクラブが白羽の矢を立てたのは、当時TSGホッフェンハイムに所属したアンジェロ・シュティラーだった。

シュティラーは、2010年から2021年にかけて強豪FCバイエルン・ミュンヘンのユースでプレー。セバスティアン・ヘーネスにはバイエルンユース時代に指導された経験があり、2018/19シーズンにはバイエルンU19、2019/20シーズンにはバイエルンⅡでヘーネス率いるチームの主力を務めた。

ブンデスリーガでの出場機会を求めたシュティラーは、2021年、当時セバスティアン・ヘーネスが率いたホッフェンハイムへ移籍。デニス・ガイガークリストフ・バウムガルトナーなどとプレーし、大きな成長を見せたシュティラーは、シュトゥットガルトでも素晴らしいプレーを披露する。

シュティラー最大の特徴は、左足から繰り出される長短の正確なパス。シュトゥットガルトで背番号「6」を着用することからもわかるように、シュティラーは中盤の底でつなぎ役としてプレーし、ときにはインターセプトを狙うなど守備的にも振る舞う。セバスティアン・ヘーネスの秘蔵っ子に注目だ。


3. ニック・ヴォルテマーデ #11

Nick Woltemade
生年月日:2002年 2月14日
出身:ブレーメン, ドイツ
身長:198cm 利き足:右足
主なポジション:センタフォワード, トップ下
2023/24シーズンの成績:30試合 2得点(ブンデスリーガ)

U21ドイツ代表で見せるヴォルテマーデのプレーぶりは、彼が同世代のなかでも抜きんでたタレントの1人であることの何よりの証明だ。ピッチ上でも目を引く長身の持ち主でありながら、巧みな足技や正確なポストプレーからチャンスの起点になるなど、繊細なプレーを見せる。

ヴォルテマーデはヴェルダー・ブレーメンのユース出身。2018/19シーズンのU17ブンデスリーガで24試合18得点、2019/20シーズンのU19ブンデスリーガで16試合16得点と飛び級で参加したユースリーグで圧巻の活躍を披露したことで将来を渇望されるも、1部では同様のプレーを見せられなかった。

2022/23シーズン、当時3部のエルフェアスベルクで31試合10ゴールの結果を残してブレーメンに戻るも、30試合2得点と活躍できず。契約満了となった彼が選んだ移籍先は、シュトゥットガルトだった。デミロヴィッチとウンダフの「壁」は高いものの、DFBポカール1回戦のプロイセン・ミュンスター戦では見事な得点を挙げた。今後の更なる活躍に期待したい。


4. ヨシュア・ヴァグノマン #4

Josha Mamadou Karaboue Vagnoman
生年月日:2000年 12月11日
出身:ハンブルク, ドイツ
身長:190cm 利き足:右足
主なポジション:右サイドバック
2023/24シーズンの成績:18試合 2得点 2アシスト(ブンデスリーガ)

語弊を恐れずにいえば、ヨーロッパ中を探しても、ヴァグノマンより優れた潜在能力をもつ右サイドバックを探すのは困難だろう。恵まれた体格と駿足のウイングに劣らないスプリント能力をもち、左右両足から正確なキックを供給できる。ハンブルガーSV在籍時から注目を集めたのも当然だ。

ドイツ人とコートジボワール人の血を引くヴァグノマンは、2010年にハンブルガーSVのユースに加入。各レベルでプレーし、2018年3月10日のバイエルン戦で1部デビューを飾った。2019年には19歳以下の銀のフリッツ・ヴァルター・メダルを受賞するなど、世代を代表する選手だったことが窺える。

圧倒的なタレントの持ち主であり、既にドイツ代表デビューも果たしたヴァグノマンだが、彼の唯一の欠点は負傷の多さ。これまでに複数回骨折を経験するなど、負傷による試合の欠場が多い。体調さえ安定すれば、ブンデスリーガ屈指の右サイドバックになることのできる、ドイツを代表する逸材だ。


5. フランス・クレツィヒ #13

Frans Krätzig
生年月日:2003年 1月14日
出身:ニュルンベルク, バイエルン州
身長:171cm 利き足:左足
主なポジション:左サイドバック
2023/24シーズンの成績:14試合 1得点(オーストリア・ブンデスリーガ)

クレツィヒの動向に注目していないバイエルン・ファンはいないだろう。今シーズン限りでの退団が濃厚とされるアルフォンソ・デイビスに代わる左サイドバックの有力な候補の1人であり、既にバイエルンのトップチームでもプレーするなど、彼が疑いの余地のないタレントだからだ。

クレツィヒが今季を過ごす場として選んだのはシュトゥットガルト。左サイドバックとしての定期的な出場機会を得るのは至難のクラブだ。現ドイツ代表マクシミリアン・ミッテルシュテットとのポジション争いを強いられるためである。クレツィヒが敢えて「難しい道」を選んだ理由は何かと想像する。

理由の1つは、間違いなくセバスティアン・ヘーネスの存在だろう。若手育成に長じた指揮官のもとでのプレーは貴重だ。またミッテルシュテットから学びを得たいという面もあったのかもしれない。左足のクロスや足元の技術、サイドに張っての抜け出しなど、プレースタイルも似通っている。

1つ断言できることは、クレツィヒが示さなければいけないのは「ブンデスリーガ1部でプレーできる」ことではないということ。バイエルンのトップチームで席を勝ち取るのは至難。そういう意味では、ミッテルシュテットとの「ポジション争い」は、クレツィヒにとって重要な体験となるだろう。


後書き

シュトゥットガルトの下部組織

ヨーロッパサッカーのファンであれば、シュトゥットガルトと聞いて最初に思い浮かべるのは、下部組織から輩出したドイツ代表選手たちの名前だろう。リーグ優勝を果たした2006/07シーズンのメンバーでいえば、ティモ・ヒルデブラントクリスティアン・ゲントナーアンドレアス・ベックサミ・ケディラなどがユース出身の代表経験者。

その後もホルガ―・バドシュトゥバーベルント・レノセバスティアン・ルディティモ・ヴェルナー、現代表でも主力のセルジュ・ニャブリヨシュア・キミッヒなどの錚々たる選手たちを輩出している。バーデン=ヴュルテンベルク州の雄とはいえ、これほどのメンバーが集まるのは流石としか云い様がない。

クラブの路線変更

ただ本テキストで紹介した5選手がクラブの下部組織出身ではないことから分かるように、シュトゥットガルトは些か路線を変更した。ただその理由を想像するのは難しくない。そもそもバドシュトゥバーやレノ、ヴェルナーなどがシュトゥットガルトユースだと聞いて驚く人さえいるかもしれない。彼らが輝いたのは、シュトゥットガルトのトップチームではなかったのだから。

シュトゥットガルトは、若くして移籍してしまうユース選手育成するのではなく、他クラブのタレントを獲得して活躍させ、あわよくば高値で売却する路線へと舵を切った。その象徴ともいえる出来事が2019年4月のスヴェン・ミスリンタットのスポーツディレクター就任だろう。

新たな方針と逸材たち

ロベルト・レヴァンドフスキ香川真司を獲得するなど、ユルゲン・クロップ監督率いるドルトムントで辣腕を振るった同氏のもと、シュトゥットガルトは多くの選手をブレイクさせた。グレゴール・コーベルザシャ・カライジッチサイラス・カトンパ・ムヴンパ遠藤航ヴァルデマール・アントン伊藤洋輝などはその筆頭だ。

現チームにも注目を集める若手逸材が揃っている。上記5人に加えるなら、筆頭はエンツォ・ミローだろう。2024年のパリ五輪の男子サッカー決勝で先制点を挙げたことでも知られる同選手は、間違いなく欧州中から注目を集めるタレントだ。ここまでのクラブの方針は、成功しているように思える。

下部組織からもタレントが昇格してきている。GKの二クラス・ザイメンやウイングのジャルジーニョ・マランガは、将来を渇望される逸材たちだ。これからもシュトゥットガルトで活躍する若手選手たちから目が離せない。


ドイツ期待の若手逸材5選シリーズ
  Ⅲ


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