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24/25 第2節 レヴァークーゼン 対 RBライプツィヒ FOKUS Bundesliga!!! #14


前書き ウニオン 対 パウリ

24/25シーズンのブンデスリーガ第2節は面白い試合が目白押しだった。例えば、アルテン・フェルステライで行われたウニオン・ベルリンザンクトパウリ。今夏、新監督を迎えたクラブ同士の対戦は、どちらも選手の特徴を活かした戦いを披露した、運動量の多い試合となった。

フォクトを中心に自陣でボールを繋ぐウニオンに対し、パウリはスミスを起点にビルドアップを展開した。試合を決定づけたのは、ウニオンのホラーバッハ。34分、ドリブルで自らチャンスを作ってコーナーを獲得すると、こぼれ球に反応してボレー気味の強烈なミドルを突き刺した。

ウニオン・ベルリン vs ザンクトパウリ

24/25 第2節 レヴァークーゼン 対 RBライプツィヒ

ブンデスリーガ第2節で最も注目を集めたのは、バイ・アレーナで行われたレヴァークーゼンとRBライプツィヒの一戦だっただろう。昨シーズンの1位と4位の対決であり、バイエルンと並ぶリーグ屈指の陣容を誇るクラブ同士の試合となったためだ。

シャビ・アロンソ監督のもとリーグ戦35試合無敗記録を誇るレヴァークーゼンとマルコ・ローゼ監督のもと3シーズン目を迎えたRBライプツィヒ。どちらに軍配が上がるか注目が集まった同試合を振り返り、勝敗を分けた分岐点を考察する。

レヴァークーゼン 対 RBライプツィヒ 先発メンバー

前半

狙いをもった3-4-2-1

体調を崩したフラデツキーホフマンを欠いたこと、アンドリッヒと入れ替えてA・ガルシアを先発させたこと以外、前節と同様のメンバーと戦い方を採用したレヴァークーゼンに対し、ローゼ監督率いるRBライプツィヒは明確な狙いをもって試合に臨んだ。

彼ら特有の4-2-2-2ではなく、レヴァークーゼンと同様の3-4-2-1の布陣で試合をスタートさせたのだ。選手それぞれが対峙する形となり、とくにボニフェイスビチャブタプソバシモンズグリマルドヘンリヒスが明確にマッチアップした。

ローゼ監督の狙いは、局地的な数的同数を増やしてプレスおよび速攻を仕掛け、相手DFと中盤のビルドアップを可能な限り阻害することにあった。特徴的だったのは試合開始後28秒のシーン。レヴァークーゼンのGKコヴァ―ルがボールをもつとRBライプツィヒは6人でプレスを展開した。

試合巧者のレヴァークーゼン

試合開始後5分はRBライプツィヒが相手を押し込み、狙いがはまった様に見えた。しかし次第にレヴァークーゼンがボールを保持するようになる。とくにハイダラが負傷で交代した13分以降はレヴァークーゼンが完全に試合のペースを掴んだ。

RBライプツィヒは投入されたザイヴァルトがうまく試合に入れず、WBを起点とするレヴァークーゼンのサイド攻撃に手を焼いた。とくに30分、ザイヴァルトがプレスに出たスペースをインカピエが突いたシーンはRBライプツィヒが試合をコントロールできていない象徴的な場面だった。

流れを完全に掴んだレヴァークーゼンは38分に先制する。クロスターマンが相手DFターのロングパスの処理をミスし、フリーでボールを得たフリンポンが単独で仕掛けて得点した。縦パスを警戒してハイラインを敷いたRBライプツィヒDF陣が裏を突かれた格好だった。

諸刃の剣となったプレス

RBライプツィヒは相手ボールホルダーとその周辺の選手に対し、前線3人+中盤2人の5人でミドルプレスを仕掛けたが、2失点目はそのプレスが完全に裏目に出た結果生じたものだった。ザイヴァルトとカンプルが飛び出したスペースにグリマルドが侵入した流れから失点を喫したのだ。

前線3人がプレスバックから解き放たれているため、RBライプツィヒのDF陣は中盤2枚が躱わされるとラインを下げるしかない。必然的にライン間が肥大化し、ヴィルツなどがボールを保持した。もちろんローゼ監督はこのリスクを承知で戦術を採用しただろうが、失点の場面では完全に裏目に出た。

押され気味だったRBライプツィヒは前半に1点を返す。シェシュコが移動してオペンダと2トップを組み、2人で相手DFを引きつけると同時に、シモンズが右サイドへ流れて数的優位を創出。生じたスペースにカンプルが飛び込み、ヘンリヒスの狙いすましたクロスに頭で合わせた。

ライプツィヒ、前半の得点シーン。
2局面で数的優位を創り、飛び出したカンプルが得点。

後半

レヴァークーゼン 対 RBライプツィヒ 後半のフォーメーション

課題の修正とシェシュコの改善

前半のRBライプツィヒには明らかな問題があった。中盤2枚がプレスを仕掛ける場面やWBが高い位置を取るシーンで広大なスペースが生じ、それを相手に利用されてしまった。1失点目がその象徴だ。またカンプルの得点シーンから明らかなように、シェシュコは中央で起用されるべきだった。

そこでRBライプツィヒはラウムを左SBに固定。またシェシュコをトップ下に配置し、役割を明確にした。この変更により、RBライプツィヒは安定感を取り戻す。とくにシェシュコは、ポストプレーなど攻撃の起点として機能するとともに、プレスにも関われるようになった。

RBライプツィヒのプレスの機能性が増したことで、レヴァークーゼンは次第に苦しむようになる。56分のシーンでは相手選手7人によるプレスをヴィルツの機転で打開したものの、得点を挙げることができなかった。そのシーンの直後、レヴァークーゼンはRBライプツィヒに同点弾を許してしまう。

ロイス・オペンダの躍動

57分、オペンダが見事な得点を挙げる。レヴァークーゼンのプレスを躱わしてザイヴァルトがボールを持ちあがり、彼からパスを受けたシェシュコがオペンダへ鮮やかなスルーパスを送った。そのパスを受けたオペンダがコヴァ―ルとの1対1でゴールを決め切ってみせた。

少人数での速攻というRBライプツィヒらしさ溢れる得点の仕方で、見事だったという他ない。反対にレヴァークーゼンは広大なバイタルスペースを提供したうえ、3バックの脇を突かれるという致命的なミスを犯した。アンドリッヒが出場していれば、このシーンは防げたかもしれない。

ホームで連勝を飾りたいレヴァークーゼンは猛攻を仕掛ける。しかしヴィルツがボールをもった瞬間にヘンリヒスがディフェンスラインに降り、RBライプツィヒは5バックを形成する戦い方を見せる。独特な可変システムに悩まされ、グラ―チのセービングが冴え渡ったこともあってレヴァークーゼンは得点できない。

試合終盤の逆転弾

勢いに乗るRBライプツィヒは67分、シェシュコに変わってヌサを投入する。ヌサは積極的にボールに関わる動きを見せ、ドリブルで相手を抜き去ってシュートを放つなど、違いを作り始める。そして80分、RBライプツィヒに再び絶好の機会が訪れる。

ヘンリヒスの中盤を飛ばした縦パスをシモンズがワンタッチでヌサに落とす。ジャカA.ガルシアが不在の広大なバイタルエリアを得たヌサはドリブルで持ち上がり、ターを引きつける。ヌサからのパスを受けたオペンダがタプソバの股を抜き、豪快なミドルシュートをゴール右隅へ突き刺した。

上位対決を制したい「王者」レヴァークーゼンは再度猛攻を仕掛ける。83分、ジャカのスルーパスを受けたヴィルツが仕掛けてシュートを打ち、グリマルドもミドルシュートを放った。しかしどちらもグラ―チがセービング。アロンソ監督率いるレヴァークーゼンの無敗記録を止めたのは、ローゼ監督率いるRBライプツィヒだった。

最終スコア
レヴァークーゼン 2-3 RBライプツィヒ
フリンポン 39'    カンプル 45+7'
グリマルド 45'    オペンダ 57' 80'

選手の個人的ランキングと個人的感想

1位:ロイス・オペンダ CF ベルギー代表 RBL
この試合のMVPを選ぶとき、ロイス・オペンダ以外の名前を思い浮かべる人はいないだろう。得点シーンの見事さは言及するまでもない。決勝点となったタプソバの股を通したシュートは彼が欧州屈指のストライカーであることの完全な証明だった。

試合を通じていえば、31分に見せたドリブル突破もあまりに素晴らしかった。チームが押し込まれるなかで相手DFインカピエを華麗に躱わし、シェシュコにクロスを送ってみせた。独力での打開力、味方との連携、相手DFの背後を狙う動き出しに得点の嗅覚、すべてがワールドクラスの選手だ。

2位:ケヴィン・カンプル CMF スロベニア代表 RBL
試合を見ていれば、オペンダの次点を選ぶのも難しくないだろう。カンプルが素晴らしかったのは得点シーンだけではない。攻撃時はリュケバとビチャブの間に降りてビルドアップに貢献し、守備時はザイヴァルトとともに強烈なプレスを仕掛ける役割を担った。

今年10月に34歳を迎えるとは想像しようもない運動量だ。ウエドラオゴやハイダラなどの主軸になりうるタレントが負傷するなか、レッドブル戦術を理解したフル稼働できるベテラン選手の存在はRBライプツィヒにとってあまりに大きな強みである。

3位:ジェレミー・フリンポン RWB オランダ代表 B04
もしレヴァークーゼンがこの試合を制していたなら、MVPは間違いなくフリンポンだっただろう。攻守においてチームを支えていた。とくに先制点の動き出しは見事だった。あの場面でクロスターマンがミスをする可能性を見出したのは、フリンポンだけだっただろう。

4位:カステロ・リュケバ LCB フランス代表 RBL
リュケバはRBライプツィヒにとって常に重要な役割を担っている。とくに攻撃の起点として左足から縦パスを入れるプレーは、欧州でも指折りのクオリティだろう。幻の同点弾は残念だったとは思うが、幼さの見えるビチャブとのCBコンビでレヴァークーゼンに勝利を挙げたのは見事だ。

5位:ペーター・グラ―チ GK ハンガリー代表 RBL
昨シーズンの正守護神であったブラスヴィッヒがレッドブル・ザルツブルクへ移籍したことに疑問を抱いた人も、この試合を観ればなぜそうなったのかよくわかるだろう。私自身もその1人だ。グラ―チがこの試合で記録した8度のセービングはあまりに見事だった。

番外編:アレイシ・ガルシア CMF スペイン代表 B04
昨シーズン、シティ・グループのジローナで卓越したプレーを披露したことは知っていた。しかしあそこまで素晴らしいキックを誇るとは想像しようはずもない。セットプレーで何度か見せたキックはあまりに見事だった。チャンピオンズリーグでも猛威を振るうことになるだろう。

個人的感想
正直、この試合を支配し続けたのはレヴァークーゼンだった。6割を超えるポゼッションを記録し、シュート数はRBライプツィヒの8本に対して26本。パスの本数やその精度でも相手を大きく上回った。総じていえるのは、レヴァークーゼンが遥かに優れたサッカーを披露していたということだ。

この試合を通じて感じたのは「どうしてレヴァークーゼンがここまでの完成度を誇るチームを作り上げることに成功したか」という疑問だ。RBライプツィヒはリーグ内でも圧倒的な実力を誇るクラブの1つであり、ローゼ監督も名将だ。そんな彼らが、あそこまでフィジカル面やテクニック面で圧倒されるのはなぜなのか。

いやそもそも昨シーズンからほとんど出ずっぱりのレヴァークーゼンの主力選手があそこまで体力面で問題を抱えないのが疑問だ。バイエルンでさえ、あれだけの選手層を必要とするのにである。フィジカルトレーニングの影響か、食事管理の影響か。

いずれにせよ、このレヴァークーゼンについて調べた記事が出てくるようになるだろう。彼らのスポンサーは他でもない世界的医療メーカー、バイエル製薬である。栄養管理などに余念がないとしてもおかしくない。詳細な情報が出てくるそのときが楽しみだ。

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