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レアル・マドリード と バロンドール FOOT×MONDE #1
2024年の
バロンドール受賞者はロドリ!
2024年10月29日、今年のバロンドール受賞者が発表された。受賞したのは、現在マンチェスター・シティに所属するスペイン人MFロドリ。昨年のチャンピオンズリーグ決勝では決勝点を挙げてクラブに初のビッグイヤーをもたらし、ドイツ開催となったユーロ2024ではスペイン代表優勝の原動力となった名手だ。
彼の同賞受賞は大きなサプライズだったが、結果としてほとんどのサッカーファンが納得する結果となったように思う。授賞式のスピーチでロドリは、自身の受賞はチャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツなどが紡いだスペイン・フットボールの勝利だと述べた。多くの人が彼のスピーチに心動いただろう。ロドリは受賞に相応しかった。
バロンドールの独占と利用
フランス・フットボール誌が主催するバロンドールの近年の受賞者には特徴がある。2000年以降に受賞した選手のほとんどが、レアル・マドリードか、FCバルセロナに所属していたのだ。とくにレアル・マドリードは、クラブのプロモーションにバロンドールを利用した。
フロレンティーノ・ペレスが会長に就任した2000年以降、ジネディーヌ・ジダンやマイケル・オーウェン、カカなど同賞の受賞経験者を次々と獲得。ルイス・フィーゴやロナウド、ファビオ・カンナヴァーロは、前季に別のクラブで活躍したにも関わらず、レアル・マドリードの選手としてバロンドールを授与された。
レアル・マドリードとバロンドール
レアル・マドリードとバロンドールには、何か強い結びつきがあったのかもしれない。それならば、今年の結果に対してレアル・マドリード関係者が取った反応にも納得がいく。元々報道されたヴィニシウス・ジュニオールではなく、ロドリがバロンドールを受賞したことに対する彼らの反応は「授賞式のボイコット」だった。
稚拙とも取れる彼らの「反応」は、彼らがバロンドールを重視するとともに、自クラブの選手が受賞すべきという考えの「表れ」でもある。そのような独占欲が生まれるのも無理はない。レアル・マドリードは今季、UEFAチャンピオンズリーグで優勝したのだ。ヴィニシウスはもちろん、ジュード・ベリンガムやダニエル・カルバハルも充実したシーズンを過ごした。
レアル・マドリードとUEFA
しかしここで1つ大きな疑問が生じる。なぜ「欧州スーパーリーグ構想」というUEFAへの最大の裏切りを続けるレアル・マドリードが、恥ずかしげもなくUEFA主催の大会に出場し、そのタイトルを自分たちの「目に見える結果」として喧伝できるのだろうか。
彼らはバロンドールを受賞できなかったことに対して自分たちを正当化し、ファンは不公平を訴えるが、そもそも彼らは土俵に立つ資格を放棄すべき状態なのである。彼らがUEFAの大会に出場できる理由は、クラブの歴史と所属選手の実績や能力に伴う集客力という価値を見出されているからだ。バロンドール受賞云々など、ただの些事に過ぎない。
レアル・マドリードの歴史
「白い巨人」にとっては、UEFA主催の大会は小さな器であり、窮屈に感じるのだろう。彼らは欧州の大会で権力を奮い続けた。チャンピオンズリーグでは他クラブの追随を許さない15度の優勝を経験。当時まだヨーロピアンカップという名称だった第1回大会からの5連覇やジネディーヌ・ジダン監督指揮下での3連覇は今でも語り草だ。
クラブが築いた歴史も見事だ。パコ・ヘントやフェレンツ・プスカシュ擁した1950年代後半の黄金時代、ピッリやビセンテ・デル・ボスケが活躍した1970年代、エミリオ・ブトラゲーニョやマノーロ・サンチスが輝きを放った「キンタ・デル・ブイトレ」の時代、ラウール・ゴンサレスやイケル・カシージャスの集大成ともなった「銀河系軍団」の時代など、様々なスター選手が加入して輝きを放った。
レアル・マドリードの「過ち」
今のレアル・マドリードとは、サンティアゴ・ベルナベウやミゲル・ムニョス、アルフレッド・ディ・ステファノなどが築いた歴史の上に立つ巨城のようなものだ。そんな彼らが、自クラブの選手がバロンドールを授与されないことに対して起こす反応が「授賞式のボイコット」なのである。
あまりにも滑稽だ。もしバロンドールを些事だと罵るなら、授賞式に出席して満面の笑みで受賞者を称えるべきだった。それでこそUEFAへの最高の返答となっただろう。
今回の件で、レアル・マドリードの関係者は自分たちが冷や水を浴びせられた「被害者」であるように感じているかもしれない。しかし忘れてはいけない。2021年4月18日、スーパーリーグ構想を発表してUEFAに平手打ちを浴びせ、欧州中の笑い者にした張本人の1人は、自クラブの会長その人なのである。
ヴィニシウスとバロンドール
更にいえば、昨季のヴィニシウスがバロンドール受賞に相応しかったとも思えない。それは彼がよく指摘を受ける人格的な問題が見え隠れするからという理由ではない。そういう面でいうなら、マテュー・ヴァルブエナへの脅迫事件への関与が疑われるなど、良くない「友人関係」で知られるカリム・ベンゼマの受賞の方が余程問題である。
ヴィニシウスがバロンドールに相応しくないと感じるのは、単に彼よりも優れている選手がいると感じるからだ。1人はロドリ。試合への影響力が絶大だった。次点はベリンガム。独善的にすぎる点も多々あったが、レアル・マドリードやイングランド代表で圧巻の活躍を見せた。
もちろんヴィニシウスは優れた選手だ。しかしサッカー選手の質とは、足の速さやドリブルのキレ、決定力、それに伴う試合への影響力だけで測れるものではない。世界最高のFWはいまだにリオネル・メッシだ。その時点でヴィニシウスがバロンドールを取ることはないだろうと感じる。では世界最高のMFは誰か。ロドリである。