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祖父の贈り物

備忘録として
父と祖父のお話です。

父の実家は石川県にありました。
就職を機に、静岡へ引っ越してきたのです。

彼にとって一番の故郷であり、元気な姿を両親に見せることは親孝行の一つだったと思います。
お盆とお正月の年2回、石川へ帰省することが家族の恒例行事でした。

私は冬の時期が好きで、静岡では見られない雪景色にはしゃいだことを覚えています。
片道6時間の車内で過ごしたことも、方言での会話も、夏の海で泳いだ記憶も。

祖父母はいつも「よく来たね」と笑顔で迎えてくれ、帰り際には「また来てね」と少し寂しそうに手を振ってくれました。

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祖父は趣味で油絵を描く人で、部屋の壁には彼の作品がたくさん飾られていました。

私は幼い頃に、絵を描くためのアトリエを覗いたことがあります。油絵特有の香りが漂い、キャンバスがいくつも並び、床は色とりどりの絵の具に染っていました。

祖父は父と画材を買いに行き、一緒に描き始めたのだと後から知りました。

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祖父が残した作品は数多くあります。

その中に富士山の絵を何点か見つけ、父のことを思い浮かべました。遠く離れた静岡へと移り住んだ彼を思いながら、絵を描いたのかもしれません。1枚の作品にたくさんの時間と情熱を注いだことでしょう。

周りの友人から聞いた話では、「油絵を描いてみないか」と誘われ、描き方を教わっていたのだそうです。

もっと近くにいたら、私も教わったり、父と肩を並べて絵を描く姿を見られたかもしれません。そんな光景を思い浮かべながら、家族との距離について考えさせられました。

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久しぶりに静岡の実家に帰ると、父がキャンバスを立てて油絵を描いていました。

その姿に、私は懐かしさと祖父の存在を重ねずにはいられませんでした。父は、祖父が残した絵と使っていた画材を持ち帰っていました。

最後祖父と長く会話することはできなかったけれど、絵や写真を通しての繋がりを嬉しく思います。

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先日、祖父がお世話になっていた施設の方から手紙が届きました。

彼が一生懸命生きようとしていたこと、私が部屋に飾った青空の写真を見て、嬉しそうに話していたそうです。


小さくても良い、生きる上での糧になれたのなら本望です。

祖父に贈った写真の一枚

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