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変わっていく推しは美しい

のっち、それは三人組テクノポップユニットのPerfumeのメンバーの一人だ。かつて私はPerfumeのわりと熱狂的なファンだった。今は落ち着いて遠くから眺めているくらいになっているものの、好きだった気持ちは案外消えないものだ。話題を目にすればどうしてるだろうかと思うし、当時好きだった魅力を思い出すこともある。私はあ~ちゃん、かしゆか、のっちの三人のうちではのっちを推していた。


そののっちが今度椎名林檎さんとのコラボ楽曲を出すという。実際のMVも出ている。それがYouTubeにある「初KO勝ち」という曲だ。

何これ…と気が付いたら口に出していた。今まで見たことのないのっちの姿がそこにあった。まず「歌っているのはどっちだろう?まさかこれがのっち!?」という驚きが生まれる。その通りだった。歌い出しは椎名林檎さんではなくのっち。あくまで脳内ではあるが、まるで腰を抜かしたような感覚が全身を駆け巡った。


それは私の知っているのっちではなかった。

私にとって今も思い出せるのっちの歌い出しとは2008年発売の「Dream Fighter」であって、その曲ですらもこんな印象を与えられるものではない。Perfumeの歌声は全てプロデューサーである中田ヤスタカさんに加工されており、本来の歌というのは世に出回ったことなどなかったのではないか。そのこれまでベールに包まれていたものが、今目の前に映っている。

Perfumeの三人は中田ヤスタカさんに「話すように歌って欲しい」との指示を受けて歌ってきた。それはアクターズスクールで習った感情を込めて歌うというレッスンの真逆をいく歌唱法になる。最初の頃三人は上手く歌うことができなかった。実際に「レコーディングが大変だった」と漏らしていたこともあったようだ。

だけどその結果Perfumeは大ヒットした。あの無機質な歌い方がテクノポップユニットとしての曲調にぴったりだと絶賛された。



久しぶりに見たのっちは歌声での強烈な印象だけでなく、椎名林檎さんの妖艶さとも違う魅力を発していた。とにかくPerfumeでかつて見ていたダンスをしているのっちとは一味も二味も違って見えた。しばらく離れていたファンにありがちの「変わっていなくて安心した」だったり、ある程度の年齢になった女性にかけられがちの「美しさが増していた」「〇歳に見えない」という感想とも違うものを感じた。

むしろ私が感じたのは「あの頃よりもずっと、のっちはさらに進化しているのではないか」ということだった。

Perfumeはどんどんライブパフォーマンスが進化していったユニットでもある。振付のMIKIKOさん、演出のライゾマティクスによってライブは常に更新され続けていた。新しい技術を取り入れ、その中でダンスをしていたPerfumeの三人が私はとても好きだったのだ。だから今ののっちもそんな風に見えたのかもしれない。


いつも胸に留めていることがある。それは「人は簡単に変わっていく」ということだ。何かのきっかけで良くも悪くも変わってしまう。それは周りの環境だったりトラウマのような経験であったりと、きっかけは人によって違うものの、必ずあることだと思っている。目の前にいる人は次に会った時にはもう違う人になっているかもしれないのだ。

人間関係において話題が合わなくなった時などに「変わってしまった」と離れていく人がいるという。それはそれで周波数のようなものが合わなくなったと考えて関係を終わりにしたほうがいいという言葉を最近はよく耳にする。私自身も離れたり、離れて行かれたりした経験がある。そうなると親しかった人が減っていくようで悲しく思ってしまうこともある。

だけど「変わらないこと」が良いことであり、「変わっていくこと」が良くないことだとは一概には言えないと思う。


変わっていくのが避けられないのなら、せめて前向きに良い方向へと向かって行きたい。その変化を「自分が進化したから」とできるのならば、それはもしかしたら幸せな考え方ではないかと思った。

今回YouTubeでのMVを見て、のっちのことを「前よりもずっと進化していてすごく良かった」と思った。これはPerfumeにとっての活動の方針だったからかもしれない。だけどこれこそがのっちの「変わらない魅力」なのだと感じた。

のっちは今日も、輝いている。

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