はざま
それはどこかへ連れて行こうとする。強い吸引力を持って、引きずりこもうとする。
悪い夢が続いている。10ヶ月以上になる。これは悪夢だと見抜くとその夢は溶け落ち、一度覚醒する。寝付いてから一時間余りのこと。
もういちど目を閉じて静かに横になっていると、訪れる二度目の夢もいつのまにか悪夢へと変質し、夜明け前に目を覚ます。
最近はもう少し体を休ませたくて目を瞑り、朝を待つ。この間にじわじわと強く、希死念慮がやって来るようになった。
続いてほしくない、社会のせいではなく、自分の選択の間違いのせいで出口を見出せない生活の閉塞的な息の詰まるような喉元の感覚から逃れんがために、頭の中で自分を始末する方法をいく通りも試みる。
やがて目覚まし時計が鳴り出し、カレンダーを黒く塗り潰す一日が始まる。
一日は対価として刻々と流れて終わる。
融け出す。融け出していく。悪夢は現実と別のところに、無意識の国にあるはずなのに、覚醒中の現実も悪夢のようで、夜の無意識の中にも宇宙の狭間から溶け出した何かが、取り残された私を、遠くからあるいは一番近くから見つめていて、観察して、連れて行こうと狙っている。
もうそれだけが私を待っていてくれている、一番私を見ていてくれている。そんな風にしか思えなくなって、負けそうになる時がある。
このぶ厚い雲のはざまから、大丈夫な方に戻って来れるその時に、文章を書く。自分を、自分の人生から手を離さずに、たぐり寄せるために、生きるために、書くという生命線、この糸を握っていたい。