The girl from Ipanema

皆さん、こんにちは！
星<star>になる可能性を秘めた女の子っ！未星💫です！

残暑続く毎日ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか？
私は今年２回も風邪をひきまして、健康の有り難みを痛感する夏となりました。( ；∀；)

夏といえば….!

皆さんにとって、夏って聞くと何を想像しますか？
私は"海"です！！！
海と空が大好きなので、夏は本当に大好きです。
今回はそんな私の大好きな夏をイメージした作品となります。

Ipanema-イパネマ- とは

今回のテーマ、[The girl from Ipanema]。
日本語だと【イパネマの娘】という曲になります。
イパネマは、ブラジル南部のリオデジャネイロにある地区で、
イパネマ海岸には夏に多くの海水浴客が訪れるそうです。(参考:Wikipedia)

ブラジルのリオ(サンバッ!!)の曲だけあって、
歌詞にある女の子は非常に情熱的で健康的な印象です。
そりゃ魅力的ですよ「はぁ〜♡」てハートまじりなため息ついちゃいます笑

今回はそんな魅力的な【イパネマの娘】を私のフィルターを通して書かせていただきました！

同小説は、下記pixiv様にも載せております。↓↓

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23000686

そちらの方が慣れている方はpixivもよろしくお願いいたします。

The girl from Ipanema 歌詞と和訳（未星的）

Tall and tan and young and lovely
The girl from Ipanema goes walking and when she passes 
Each one she passes goes “ah”

When she walks she’s like a sanba 
that swings so cool and sways  so gentle that when she passes
Each one she passes goes  “ah”

Oh,but I watch her so sadly 
How can I tell her I love her? Yes I would give my heart gladly
But each day, when she walks to the sea 
She looks straight ahead not at me

Tall and tall and young snd lovely
The girl from Ipanema goes walking and when she passes
I smile but she doesn’t see..

未星's 解釈

背が高くて焼けた肌を持つ若くて可愛い”イパネマの娘”が歩く
彼女が歩くたびに周りのみんなは口を揃えてため息をつく　”はぁ”って

彼女は歩くとき、体はゆらゆらと揺らしていて、くるりと綺麗に廻る
まるでサンバでも踊っているよう
彼女が歩くと周りはみんな口にする　”はぁ”って

あぁ、でも僕は悲しそうに彼女を見つめる
どうすればこの想いを彼女に伝えられるだろう
そうさ、僕の心など喜んであげるのに…
でも毎日、彼女は海に向かって歩くときは真っ直ぐ前を向いている
僕なんて視界に入れてくれないんだ

背の高い日に焼けた若くて若い”イパネマの娘”が歩く
彼女が通るとき、僕は微笑んだ
でも彼女の目に止まることはないんだ

The girl from Ipanema 小説本編

「いいですか！？先生！！これが最後のワガママですからね！！１週間後のこの時間に迎えに来ますから！！それまでに次回作の案と原稿お願いしますよ！！いいですね！？」

そう言って男はバタンと大きな音を立てて車に乗り込むと、勢いよく車を発進させた。
その後ろ姿を苦い顔をしながら見つめていた”先生”と呼ばれた男の足元には、３つの旅行カバン、そして背中にはリュックサックが担がれていた。
"先生"は車が見えなくなると、頭をかきながらため息を１つつくと、旅行カバンを持ちあげエントランスへと足を向けた。

景山嘉人(カゲヤマカヒト)。
大学生の時に面白半分で投稿した小説がまさかの大ヒットとなり、小説家として生きることとなった。
”景山”は投稿する日の前日、ペンネームを考えている時にたまたまTVで流れていたアニメのキャラクターの名字、
”嘉人”は本名を音訓を入れ替えにしただけ。
そんな深夜に適当につけた名前がまさか世に広まることになろうとは夢にも思っていなかった。そしてその後何作か書くもやはり鳴かず飛ばず。
極度のスランプに陥った結果、編集者に無理を言って、今回１週間海辺のホテルで缶詰になって原稿を書くこととなった。
フロントでチェックインし、鍵をもらうとそのまま荷物を持って部屋へと向かった。多少の人の声や波の音などをBGMに、景山は原稿を書いた。

ふと気がつくと夕暮れで、あたりは晴天の青空からオレンジ色へと変わっていた。原稿のきりもよく、気晴らしに散歩でも行くかと、景山は椅子にかけてあったパーカーを取ると部屋を出た。
海水浴場の近くとは言えど、時期はまだ閑散期。海水浴客はほぼいなかったものの、波音を聞きながら波打ち際で犬と一緒に散歩する人たちや、海沿いの道路を走る人などそれなりの活気はあった。
ふと夕日の方を見ると1人、波打ち際を歩いている女がいた。
その人は大きな帽子を被っていて顔は見えないものの相当な美人であることが分かった。なぜならその人は、周りの全員の視線を集めていたからだ。
道路を走っていたランナーは足を止め、アイスを食べながら自転車を漕いでいた学生は彼女に目を奪われ電柱にぶつかってしまった。
身長は見ただけでも170cmくらいはあり、髪型は短髪。スラっと細く、その細さが胸やお尻などプロポーションの良さを際立たせていた。肌は少し焼けていて、とても健康的だった。その体をゆらゆらと揺らしながら視線を集めているが、本人はそんな視線など全く感じていないかのように。
まるで踊っているかのごとく、時にくるりと回りながら歩いていた。
夕日とその夕日を映し出しキラキラと光る水面をバックにし、まるで１枚の絵画でも見ているかのような美しさだった。
その光景に周囲の人間はため息をついて、ただただ見つめることしかできなかった。

次の日、お昼ご飯を買いに海沿いを歩いていると彼女を見かけた。
彼女は昨日同様、大きな帽子を被り、周囲の視線を一身に受けながら歩いていた。ステップを踏んだり、時にクルクルと両手を広げて回ってみたり。やはり、周りは「はぁ」とため息をつくばかりで見ることしかできないのだった。部屋に戻っても彼女のことが気になり、原稿も書いては消しての繰り返し。そんな日が数日続いた。一度話しかけてみようと意を決して近づいてみたものの、結局はその美しさに魅入られ、かけれず仕舞いで、景山も例にも漏れず「はぁ」とため息をつくしかなかった。

滞在6日目のこと、その日も声をかけてみようと距離を置いて彼女の後ろを歩いていた。すると、彼女はするりとハンカチを浜辺に落として行った。これはチャンスだ！と思い、景山はハンカチを拾い、話しかけた。
「あのっ・・・・」
景山の声が聞こえたのか、彼女はゆっくりと景山の方を振り返った。

帽子で隠れていた顔はまるで女神のような美しさ、そしてまるで魔女のような妖艶さを纏っていた。体とともに耳元で揺れるピアスも彼女のこの世のものとは思えない美しさを引き立てていた。景山が彼女の美しさに目を奪われていると、彼女はゆっくりと口を開けた。

「私に何か用かしら？」

声はお淑やかで柔らかく、声の質、話し方、少し首を傾ける仕草、その全てから気品を感じた。彼女の声にも惹かれたが、はっと思いだし、ハンカチを突き出した。
「これ、さっき落としていました。」
彼女はゆっくりとそのハンカチを見ると少しキョロキョロと自分の体を見た。そして
「まぁ、落としていたのね。どうもありがとう。」とニッコリと微笑んだ。
その微笑みに景山は全身の血が沸騰するかのような感覚を感じた。景山が硬直して下を向いていると、彼女は景山を見ながら話をしだした。
「もしよろしければ、もう少しお話をしませんか？あなたに少し興味を持ちましたし、ハンカチを拾っていただいたお礼に、私の”今日”を差し上げますわ。いかがでしょう？」
彼女の纏う”それ”は、危険であると本能が言った。一度、目が合えばその海よりも深く澄んだ瞳と存在の虜となり、時間の経過とともに中毒性を増し、蝕んでいく。危険だと分かっているのに、その存在に酔い、目があった瞬間にその瞳に吸い込まれていく。
まるで悪魔や魔女が人間の心を奪われるかのように。
気がついた時には、その手を取ってしまっていた。

「そう、小説家の先生なのね。素敵なお仕事」
彼女は、景山の宿泊するホテルで話がしたいと言ったため、2人でホテルへと戻った。日は沈み、海は月を描いていた。彼女は景山に「何をしている人なのか」と聞いてきたため、景山は素直に「一応、小説家」と言った。すると、彼女はニコリと微笑んで「じゃぁ”先生”って呼ぶわ」と言った。心臓が何個あっても足りないほどだ。先ほどから彼女が質問をしそれに答えていたが、彼女のことを聞くタイミングを失っていた。少し会話に間があいた時に、景山は彼女に対して質問をした。
「あの、お名前は？なんてお呼びすれば？」
すると彼女は表情を変えずに答えた。
「分からないの。」
「へ？」景山は彼女の顔を直視した。彼女は尚も表情を変える事なく言った。
「分からないの。覚えてないし。でもいいの。だって、意味がないから。それに”思い出す”と言う行為は苦しくて辛い。私は私のことを”私”としか呼ばないし、私は”私”さえいればそれでいいの」
彼女の迷いのない言葉に景山は言葉を失うとともに、彼女の存在により惹かれた。
「どこから来たとか、どこで生まれたとか・・」
「うーん。覚えてないわ。あっ、でも小さい時にリオにいた気がする。そう言えば最近も行ったような、なんで行ったんだろう・・まぁいいわ。意味がないし。」
「Ipanema」
「？」景山の言葉に彼女は首を傾げた。
「なら、イパネマさんとお呼びしてもいいですか？仕事のこともあってよく音楽聞くんですけど、JAZZにそんな曲があって」
「あら、さすが小説家の先生。物知りだわ。いいわ、好きに呼んで」
”イパネマ”さんはまたニッコリと満面の笑みを浮かべた。

“イパネマ”は本当にちぐはぐだった。
女神のような美しさ、魔女のような大人の妖艶さを漂わせながらも、幼い子どものような無邪気を持つ。感情のない淡々とした話し方をするかと思えば、コロコロとよく笑い感情を出す。
言葉の節々からはまるでお嬢様か貴婦人と感じるほどの品の良さを感じるが、

景山がふとタバコを口に咥えると、イパネマは何か焦ったように机の上にあった景山のジッポーを取り、慣れた手つきで火をつけた。そして両手で持ったまま、景山のタバコに火をつけた。その慣れた手つきは、言葉から感じる気品の良さとは裏腹に、使用人として誰かの元に仕えていたかのような印象を景山に与えた。そのチグハグさに景山はジワジワと心を侵食され、虜となっていった。

ベッドの景山の上でまるで赤ん坊が高い高いをされた時のような笑顔で無邪気に揺れ動くイパネマを見て、景山は口を開いた。

「イパネマさんはひどくちくはぐですね。まるで厚底のピンヒールで命綱もつけずに綱渡りをしているかのようだ。周りのみんなは落ちるんじゃないかって冷や冷やしながらあなたを見上げるけど、当の貴女はそんな人々など気にもせず、まるでサンダルで花畑を歩くかのように軽やかに体を揺らして渡っている。さっきから翻弄されっぱなしだ。」

すると、イパネマは動きを止めて、少し下を向いて景山を見た。
そしてまるで子供を諭すかのような慈愛の目をして、口を開いた。

「”翻弄されている”と感じるのは、先生が私の行動に対して”こうなるのではないか”って予想するから感じることよ。何も考えず、ただ目の前に在る現実だけを見て、本能のままに楽しめばいいの。そしたら翻弄されたと感じることもなくなるわ。私は翻弄されたこともしたこともないもの。」
「貴女にその自覚がなくとも周りの人間は貴女が歩くだけで翻弄されてますよ。」
イパネマは少し間を置くと変わらず女神のような慈愛の表情で話を続けた。

「他者が私を見て翻弄されようとも、私が欲するのは私だけよ」

景山は目を見開いた。イパネマは変わらず話を続けた。

「他者が私を求めようとも、私が求めているのは私だけ。私は、”私が私として存在している”という事実だけあればそれでいいの。こうして誰かといるのかもしれないけれど、私は誰かの瞳に映る私を見ているだけ。私を映す物体を増やしたいだけなの。だから、誰といるかは覚えていないの。
”忘れる”ではないの、”覚えていない”の。
だって忘れるという行為は、記憶があって、その”あったもの”が喪失するわけでしょ。録画ボタンを押して、録画していたデータが消してしまったようなもの。元々”あった”から喪失できるし、喪失したと分かるの。でも私には録画ボタンがない。そもそも持ってないのだから、録画することができないから覚えることもできないし、ない物を喪失することはできないのだから、忘れるという行為もできない。」

イパネマの発言に景山は絶句した。そしてそのまま思ったことを質問した。
「僕といるこの時間も覚えてないと…いうこと…ですか？」
イパネマは変わらず答えた。

「先生と過ごしている”今”も、明日になったら無かったことになるのでしょうね。だから、”今”が大事なの。明日になれば先生だけが私と過ごした”今”を覚えていて、私の中には先生と過ごした”今”は残らない。けど、こうして先生と共にいる”今”は紛れもない事実なの。そして明日になればそれが無くなるのも事実。先生の中に私が入ることもあっても、私の中に誰かが入ることはない。だって私が私以外を愛することはないし、私の中に私以外が入ることはない。私は私だけのもの。私が大切なのは、【私が”今”私として在る】という事実。だから、どこから来たとか何をしていたとかいう過去も、これからどうなるのか、どこに行くのかという未来も必要ない。私はただ、【私が私として今存在している】という事実だけあればそれでいいの。」

「・・・・イパネマさんといるとまるで宇宙にいるような気分だ。どこから来たという過去も、これからどこへ向かうかという未来も要らないとするなら、イパネマさんは一体何処へ還るのですか？」
「私は宇宙を掬い取って形になったもの。私は宇宙の一部なの。だから、先生が今こうして触れている皮膚の奥は宇宙で、私が消えたらまた宇宙に溶けて還るだけ。それだけのこと」

景山の手を握り微笑む彼女の慈愛に満ちた女神のような顔には、迷いも戸惑いもなかった。「自分は間違っていない」という意志やこちらに回答や意見を求めているわけでもない。自身の内で完結された答え。誰も触れることができない彼女の芯のようなものだった。
イパネマが景山に与えたのは恐怖ではなかった。イパネマと言う生き物の、自己愛の究極の形と言えるほどの狂気。何かが彼女をそうさせてしまったのか、それとも初めから宇宙を掬いあげた１つとしてこの世界に誕生してしまったのか。それを知ることも理解することもできず、ただ”今”を無我夢中で感じることしかできなかった。

景山が目を覚ますとそこに彼女はいなかった。まるで一晩夢見ていたのかのように、部屋には彼女がいた痕跡はなかった。シャワーを浴び、着替えて部屋の簡単な片付けと荷物詰めを行い、部屋を出ようとした時、景山は玄関の扉の下に何か落ちていることに気がついた。景山が何かと思い拾うと、それは景山が昨日彼女に返したはずのハンカチだった。そしてそれは、彼女が間違いなくこの部屋にいたこと、昨日のことが夢ではなかったことを証明してくれた。

「さ！先生！！荷物を車に詰めてください！！帰りますよ！！」
１週間ぶりに見た編集者は変わらずプンスカと怒っていた。『そんなに怒ると血管切れて早く死ぬぞ』と内心景山は思いながら、編集者と共にホテルを出て階段を降りようとした。すると、その先にある海にイパネマの姿を見つけた。
「ごめん。俺ちょっとトイレ」
「ちょっ・・、先生！？」
景山は編集者の声も聞かず、荷物を放り投げて階段を勢いよく降りた。
その日も彼女は変わらず、周囲の目を集めながらリズミカルにまるで踊っているかのように歩いていた。景山は彼女の進行方向側に立ち、そしてハンカチを握りしめた左手を彼女の前に突き出した。
「あの、これっ・・・」
すると彼女はまるで景山などそこに存在しないとでもいうようにまっすぐな目と無邪気な笑顔で、景山の横を歩いて行った。

ーーー The girl from Ipanema

「あっ！先生こんなとこにいた！！トイレにどこまで行くつもりですか！？荷物積み終わりましたから帰りますよ！！！」
編集者が浜辺の上にある道路から大声で景山を呼んだ。景山はハンカチを握りしめると、２度と訪れることのない”今”を噛み締め、海に背を向けて歩いていった。

表紙：https://pixabay.com/ja/photos/%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%81-%E5%A5%B3%E3%81%AE%E5%AD%90-%E6%97%A5%E6%B2%A1-%E6%B5%B7-4524911/  様

内部画像：https://pixabay.com/ja/photos/%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E6%A9%9F-%E9%9D%92-%E7%A9%BA-%E9%9B%B2-%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%99%E3%83%AB-923607/　様

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