目標に向かって考え続け、実践すれば道は拓かれる
「もっと長いイニングを投げられるように、確実に勝てるように次も準備をするので、また観に来てください」。
2022年3月31日。初めての先発で臆することなく投げ込む力強いピッチング。そしてヒーローインタビューでの落ち着いた返答。
何気なしにつけたロッテ×ソフトバンク戦を観た私は、大関友久投手に心を掴まれた。
子どもの頃から将来の夢は「プロ野球選手」一筋。なりたい気持ちだけではなく、なれると思って日々取り組んできた。常に野球のことを考え続け、育成から支配下を掴み取り、その後も巡ってくるチャンスを自分のものにしている。
目標や視座は高く持ちながら、でも理想だけにとどめない努力の人。目的意識がきちんとあり、それを達成するためにはどうすればいいかを考え続けられる選手だと感じた。
2022年私は福岡市内に住んでいたため、大関投手が先発するホームゲームに何度も通った。本拠地初勝利、スワローズとの交流戦、9回2アウトで勝ち星が消えたがサヨナラHRで勝利した試合、マダックス達成まであと少しだった試合、球宴デビュー、逆に打ち込まれた日もあった。どの試合を振り返っても思い出深い。
7月には9回102球・無四球、今季2度目の完封勝利。そしてオールスターに選出され、全パの先発にも抜擢。愚直に野球に向き合う姿を現地で目の当たりにし、今年の新人王は間違いないのではと思った。
そんななか、がん疑いのニュース。目の前が真っ白になった。当の本人は、私たちファン以上にショックだっただろう。
それでも、同シーズン中に驚異のスピード復活。中継ぎとしての仕事を果たした。
オフシーズンには物理学の基本について書かれた本を読むなど、飛躍のカギとも言える「考える力」を磨き上げてきた。理論的に、そして時には哲学的に考え抜き、それを投球で実践する。そんな心技体を兼ね備えた大関投手は頼もしく、首脳陣の期待と信頼を得て掴んだ2023年の開幕投手。私はあまりの嬉しさに一人でお祝いした。
「考える力」を持っているプロ野球選手はどれほどいるのだろう。いや、それは選手だけに限らず、どの世界でもどんな仕事をしていても大事な力だ。思考停止せずに考え続け、実践に活かすことで道が拓く確率は高まる。
大関投手の野球に対する姿勢、実践でのピッチングを見るたびそのように思う。逆に自分にはまだまだ足りていないと感じ、スッと背筋が伸びる。
2023年のシーズン開幕まであと数日。ホークスの開幕投手として、3月31日の開幕戦に臨む。まさか一年前に大関投手を応援しようと決めた試合と同じ日にち、同じ対戦相手になるなんて。個人的ではあるが、すごい巡り合わせだ。
彼の目標は「沢村賞」。そしてもちろん、3年後のWBCも見据えている。これからますます飛躍する、プロ4年目・鷹の哲学者から目が離せない。