欲の根源は昔から変わらない
『情事と恋との境めは、いったいどこにあるのだろうか』
言い訳するわけではないけれど、女が他に男を作る理由は突き詰めれば承認欲だよな。
この小説は林真理子のバブル3部作と呼ばれるものの一作で、その名の通りバブル期の女を描いたものだ。今から30年近く前の東京の女をテーマにしているが、連絡手段などのツールは違えどその発端や根底の欲はきっと変わらないと思わされる。
若い頃散々求められ、承認を献上されてきた女が結婚を機にそれを取り上げられてしまったら他で補おうとしてしまうのも正直分かる気がする。言わば生活レベルを落とすようなものなのだ。当たり前が当たり前じゃなくなるのはなかなかのストレスなはずだ。
レビューを見ると主人公に感情移入できないとか、やっぱり不倫してしまう人の思考は分からないなど書いてあるのも多かった。
それはとても倫理的に正しいし、理想的だ。
ただ、苦しいことに私は麻也子の気持ちが分かってしまう。それが本当に怖い。不倫に才能があるならば私にはすでに備わっているのではないか?
もちろん不倫や浮気については決して肯定派ではない、心の底から。私はそういうことで自分の元から男が去っていく予感による寂しさや虚無感を知っている。だから私のパートナーにそういう思いをさせたくないし、悲しい思いをする女も増やすつもりはない。
ただ自分の承認欲、性欲を満たされない生活が続いたとして何かのきっかけで泡が弾けるように麻也子のような選択をしてしまう可能性を捨てきれないのも事実だ。最早リスクとして、今から気をつけていられる分麻也子のよりも幾分かマシかもしれない。
自分を全て委ねても受け止めてくれる人を探すのが良いのか、私が私を早急に受け止め認められるようになるべきか。
例え麻也子のようになってしまっても「自分だけが損をしている」と厚かましく被害者面ができるほどメタ認知も浅くない。
きっとその選択は自分を1番苦しめるはずだ。麻也子を反面教師に生きていこう。
と、独身彼氏無しアラサーが書き殴っても今のところは取り越し苦労なのである。
林真理子の文学好きだな。読みやすさはもちろんだけど、女の汚いところが的確に言語化されていて、それと同時に自分の中にもそういう部分があると認めざるを得ない。そんな痛さがある。