小説|十七月の歌 3/6
精神的血縁
僕が目を覚ますとタローは起きていたらしく、こちらを見ていた。まだ薄暗い部屋の中、朝焼けの窓は紫色で、ガラス戸を開くとタローは草の上に降りてしっぽを振った。一度フェイントをかけて、ゴムボールを思い切り投げると、稜線の淡い山々には遥か及ばず、雑木林の前に落ち、タローは草原を駆けていった。その光景に、心がどこか遠くへと引き寄せられるのを感じた。空は徐々に黄色に染まり、朝の息吹が広がってゆく。それを眺める内に、タローは帰ってきた。僕は、早かったねと褒める。
山荘が建つ