HBRメモ_デュアルキャリア・カップル働き方支援_モチベーション_WLB_心理学
以下抜粋メモ。
「ポジティブ心理学」。
これは、病気や悩みなど、人間の心がネガティブな状態になってしまったものをゼロに戻す介入に注目をした、従来の心理学研究に対して、本来人間というものは普通の生活をよりよいものにし、それぞれが活きいきと暮らせる力があるという前提に基づいて、よりよく生きる(これを幸福とは別に「ウェルビーイング」という)ための、新しい研究分野だ。
ポジティブ心理学の提唱者、ペンシルバニア大学心理学部のマーティン・セリグマン教授によれば、ウェルビーイング実現のためには5つの条件があるという。それが「ポジティブ感情」「エンゲージメント」「関係性」「意味・意義」「達成・熟練」だ。英語の頭文字を取って「PERMA」とも呼ばれる。
端的に言えば、前向きな感情やよいフィーリングを得てポジティブな感情を持ち(P)、何かの活動に没頭し(E)、他者とつながり(R)、自分自身の人生に意味や意義を見出し(M)、何かを成し遂げたという達成感や自分が進歩しているという感覚を得る(A)ことで、ウェルビーイング(継続的に幸福であること)につながるという考え方だ。これは職場環境においても大切ではないだろうか。
"Be Yourself"、つまり自分らしくあることを大切にしている。
したがって、社員が力を発揮できるようにするには、社員が自分らしさに気づく必要がある。その実現には、いくつか考えなければならないことがある。
●強みに気づかせる
人材育成においては、それぞれの社員が自分の強みに気がつくことに重きを置いている。その際、利用するのが「ジョハリの窓」のフレームワークである。 「自分が知っている強み/知らない強み」「他人が知っている強み/知らない強み」の2軸でマトリックスを描き、チームメンバーたちにそれぞれ互いの強みについて、話し合ってもらうのである。その際「自分は知らない」が「他人は知っている強み」という領域を初めて知ることになる。参加者は、自分では認識していなかった強みをチームの中で発揮できていると認識すると、多くの社員が「自分にはそんな強みがあったのか」と満たされた感情を抱く。ぱっと表情が明るくなる瞬間があり、私はその変化を見るのが何よりも嬉しい。まずは、いまの職場において、それぞれの強みや自分らしさは何かと気づいてもらうことが重要だ。
●職場の心理的安全性を保つ
強みや自分らしさが認識できたら、それを発揮できる職場を目指すことだ。もしも、部下が何か活きいきと発言しても、上司に「的外れだ」「生意気だ」などと即却下されたら、部下の心は縮こまってしまい、次第に目が死んでいく。強みや自分らしさを発揮するには、ここでは何を言ってもいい、何でも聞いてもらえる、と社員が感じる環境が必要だ。
そのため、「心理的安全性」(サイコロジカル・セーフティ)が欠かせない。これは、思ったことを素直に発言しても不利益を被らないと、互いにわかっている状況だ。グーグルの研究でチームの生産性アップに寄与する最大の要因と謳われ、注目されている考え方であり、私も気を配っている。
ただし、部下に「好きに話していい」といってもなかなか話しにくいだろう。そこで、たとえば上司みずからが弱さをさらけ出し、嘘をつかずに接するように促している。リーダー自身がオーセンティック(ありのまま)であるべきなのだ。できないことは「できない」と言って、格好付けずに、手助けを求めればよい。すると部下も上司に信頼を寄せるようになり、次第に話がしやすくなるだろう。
●仕事の意義や意味を伝える
部下に仕事の意義や目的をどう伝えるかで、部下のパフォーマンスが変わる。そのため、マネジャーは、この仕事で結果を出すということが、会社のパーパスとどうつながるのかについて、部下にきちんと話さなければならない。もっと言うと、「あなたがやっていることがどれほど価値の高いものなのか」について対話を通じて伝えるのが、マネジャーの役割である。
ただそう言うと、単に一対一で面談すればよいと思う人もいるが、それでは手段が目的にすり変わってしまっている。真正面に座って話すだけではなく、ふだんの変化に気づけるようによく観察し、立ち話でもよいから「何か困っていることはあるの」や「調子はどう」などと声掛けするのだ。私自身、そう心がけている。
一方、WAAによってみんなが好きな場所で働いていたら、チームでコミュニケーションが取れないのではないかという問い合わせが多い。だがむしろ、マネジャHBRーの配慮次第でより密なコミュニケーションが取れるようにすらなるのだ。私のチームでは、月に1回は全員が顔を合わせて、半日ないし1日の間、情報共有や勉強会の開催などをしている。さらにチャットツール等で連絡を毎日頻繁に取り合うことで、コミュニケーションを図っている。
むしろ、チームメンバー全員でどうしたら各人とのコミュニケーションが取りやすくなるのか、また互いの表情や言動が読み取れるのかを考えてみる機会にするとよいと思う。
●心配ではなく信頼する
WAAを始めてわかったのは、上司によってチームのWAA取得率とその効果に差が出たということだ。取得率の低いチームからは「なぜ他のチームは制度が使えるのに自分のチームは使えないのか」という不満が聞こえてきた。みんなが使えるはずなのにどうしてだろうかと思い調べると、運用面で新たなルールを上司が入れていることがわかった。
たとえば、「3日前までに言うように」や「外で働いている場合は何時にメールを送ること」などという運用基準をつくっていた。問題は、これに悪気があったわけではないこと。部下を心配する上司ほど、部下を「万一のことを考えて、きちんと管理しないといけない」という考えに囚われやすい。
だが、その心配によって部下を縛ると、それこそやる気を削いでしまう。そのため管理職研修などを通じて、「心配」から「信頼」に変え、裁量を増やすよう呼び掛けている。しんぱいの「ぱ」をしんらいの「ら」へと変える「パラダイムシフトだ」と、口癖のように言っている。
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