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京都大原野 晩夏 『実るほど頭を垂れる稲穂かな』

京都大原野にある放置竹林整備のNPO事務所に向かった。
理事長が心筋梗塞で倒れて再入院後初めての現地事務所での打ち合わせである。

先週、ご自宅で様子を伺い、この先の方針だけ話して来たものの、プレイングマネージャーである理事長にはもう少しご自宅で療養をしてもらいたかった。

しかし、そうはいかないその性格を知って皆が諦めてしまうのか、知って皆が甘えてしまうのか、私が事務所に行くと何もなかったかのように事務所の真ん中に座り、後期高齢者前後の竹切り六人衆を相手にこの先の打ち合わせをしていた。

この六人衆は長く竹林整備の仕事をしてくれているNPOの歴史や内部事情までよく知った協力的な方たちばかりである。
中にはこの大原野に来る前の宮津市で活動していた頃からのつきあいの方もいる。
皆、理事長を心配しており、ここで顔を合わせて言葉を交わすことはとても大切なことである。
夜明けから作業に当たってくれていた六人衆を理事長が集めて意見の交換を行っていた。

一時間ほどで終わり、打ち合わせを始めると新しい客人が次々とやって来る。
役所の人間もやって来る。
思った話は半分も出来ぬままに私の時間は尽きてしまう。

思えば以前からこんな付き合いだった。
そこにある仕事を狙い策略するアプローチはそれ一回の付き合いで終わってしまう。
何かがあるから、の付き合いではなく、互いに何かがあった時の安心にならなければならないのである。
だから、会社の理解しない祇園での私の待機時間は長かった。

ただ、今回は事情が違う。
少し詰めて引継ぎを行うつもりである。

帰りに竹林と田の間を電動アシスト自転車で走り思った。
行政マンの頃、人に頭を下げさせる立場だったのにまったくそんなことの無い人であった。
『実るほど頭を垂れる稲穂かな』
を地でいった人だったのである。

この先皆が喜ぶ豊作が待っていてくれればいいのにな、と思いつつ京都大原野を去ったのである。

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