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Mine&Industry 鉱石掘って砲台作って生き残ります! おまけのゲーム能力を間違えられた転移者 #1

転生者さんへ

故あってこの世界に呼ばせてもらいました。
所謂ひとつの異世界というやつです。
暫く生き延びてください。追って連絡します。身体能力と言葉はなんとかしておきました。
あと、知り合いからこういうときの付き物と聞いたので、おまけとしてゲーム? という奴の能力を付けておきました。

神より


 草原のど真ん中で目を覚ました俺が見つけたのは、そんな手紙だった。普通の便箋に見える。枕元のスマホの下にソッと置いてあった。

「……これは異世界転移だな。細かく言うと」

 まず、口にできたのはそれだけだった。

 整理しよう。俺は草原のど真ん中で寝るなどという突飛な行動をする奴か?
→NO。昨日はしごおわで飯を食って帰宅。シャワった後PCつけたまま寝てしまった。

 昨日死んだ?
→同上。幸い突然死するほど働いてない。やっぱ転移だと思う。

 周りの風景は?
→見渡す限り草原。大草原。でも笑えないなあ。寡聞にして日本にこんな風景はあるはずないもの。遠くでなだらかに丘のようになっている。

「ステータスオープン!」
→開かない。

「インベントリ!」
→開かない。

「イオ◯ズン!」
→運がよかったな。今日はMPが足りないみたいだ。

 やっぱ説明書なしプレイは無理っすよ神様。そんなことを思いながらうーんと目を閉じてみると、なにかがうっすら浮かんできた。ウインドウ・コクウ・フユウタイプじゃなくてそういうタイプか! ちなみにこの手の小説は書籍化したのをつまみ食いする程度に読んでいるぞ! ぼんやりとしていたイメージに意識を向けると、急速にはっきりと像を結び始める。

 果たして現れたのは……
「キーボードだこれ」
 愛用していた、エレコ◯の安いけどちゃんとしたやつ。

 なんで? と思いながら、意識を向けて一通りキーを押してみようとする。何を入力しようかと考えたが無難に名前かな。ヘローワールドはこういうときじゃないよな。
 宗形明治。ムナカタアキハル。メイジじゃないよ。

 まずはMキー……と思ったが、頭の中で押すイメージが上手くいかない。そらそうだ。したことないもん。
 数分の悪戦苦闘の後、脳の裏っかわをヘコっと押すイメージが正解だとわかりようやくMキーを押せた。押せたと言ってもそれは俺の感覚の問題なんだけども。まあいい。

 そして次はUキーかなーと思った瞬間、脳内に追加で画像が現れた。
 それは地図のように見えたが、違和感を覚える。やたら表示が荒いのだ。そしてそれは見覚えがある。この地図、いや、ミニマップは……

「Mine&Industry……だな」

 Mine&Industry。プレイしたことがある。鉱石を採掘して運搬ラインを作って砲台を作り定期的に現れる敵を殲滅するゲームだ。インダストリーどこいった? いや、採掘物を加工してもっとすごい砲台を作るんだよ。インダストリー。インダストリー……?
 と言うか、プレイしたことがあるどころか直近でやってたわ。うん。思い出した。寝る前につけっぱなしにしていたPCで立ち上げてたゲームこそこれだった。最近ハマってて。

「ただ、プレイ時間で言えばダントツで……遠未来の人類の守護者になるゲームのはずだけど、今シーズン飽きてたからな……」
 そっちのほうが圧倒的にチートくさくてかっこいいと思うんだが、とりあえずってことで選定されたのだろう。どうもゲームに疎いっぽいし。

 そして俺は、件のミニマップの端で赤い光点が灯りこちらへと近づいてきていることに気づく。実際の地形と合わせて考えると、遠くの丘の更に向こう側にいることになりそうだ。結構遠いが、このくらいの距離感覚なんだな。ゲームでは自機のサイズが今ひとつわからなかったからなあ。

「……って、そうじゃなくて、敵!?」
 ゲームの知識とミニマップの表示法則から、友好的な可能性はゼロに等しい。転移早々の展開としてはありがちだが、スタートのイレギュラー具合に則ってそこもありがちにしないでくれよと言いたい。

「だけど、キーコンフィグがそのままなら……まさか……」
 ジワジワくる恐怖を紛らわせるため独り言を言いながら、脳内でミニマップを消しスペースキーを押下する。今度は幾分スムーズに操作ができた。
 そして……

(思ったとおり、一時停止が出来る……! あれ、でもこれじゃフィールドを見回せないな)
 その効果は劇的で、瞬間身体が一切動かせなくなり思考だけが可能になる。建築、レイアウト、戦闘を同時並行的にこなす必要のある忙しないゲームだったため、進行を一時停止して視点だけ動かしてフィールドを見回すことが出来る機能があった。しかし目を閉じたままではそれも出来ない。

 ならば、と一時停止を解除し、目を開けながら先程の感覚を思い出し、再度キーを押す。
 その試みは上手くいき再び思考だけが身体を離れ続行されるが、驚くべきことに視点が頭の遥か上、いわゆる俯瞰視点程度に跳ね上がり自分の後頭部を見ることになった。奇妙な感覚という言葉では言い表せない程おかしな感覚だ。さっさと移動操作……wasdキーで視点を動かさなければ。

 全力疾走よりよっぽど速い速度で視点を移動させ、丘を越えて敵(仮)を偵察せんとす。さてさて敵はどんなかな。元ゲームでは機械ドローン……半分以上が陸上移動してたから原義からガタガタだ……だったが……。

「……ゴブリンかぁー」
 展開としては、こういう方向で行くみたいですね……。

【続く】

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むつぎはじめ
資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。