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Mine&Industry #7
「勝手に銅を拝借させて頂きました。すみません」
「いやそれはいいんだけど……」
そう言ってマユラさんは、怪我をしていた足をかばいながらもこちらへゆっくり歩いてくる。
「治療を?」
「ええ。完璧ではありませんから、街で治療は必要でしょうけど。
そしてこの子の名前は【エメラルド・ドール】。《現象体》と言って、私達が魔法を行使するときの媒介になるパートナーのようなものです」
『キュララァ!』
小人のようなそれが可愛らしい声(?)を上げながら空中でくるりと一回転した。
「ねえさんの現象体だって、回復魔法は苦手な部類だろ? 完璧じゃないって言ってもそれだけの回復魔法、すごく効率悪いんじゃ」
「あれだけ高純度の魔石なら……なんとかなったわ。あら、いけない。準備をしないとですね」
「あ、ああ」
そこにアユラも合流してきて、まだ聞いてみたい気はするが、まずは敵を撃退してからだ。話をしていた間にも集まっていた銅鉱石を確認すると……すでに設置してある砲台を解体しつつやれば迎撃準備は出来そうだ。
「さて、迎撃のためにレイアウトを大改装するぞ」
足りなさそうであれば手動で補給する必要があるので、今度は採掘と並行してリアルタイムで設置していくことにした。予め数を計算などせぬ。
ベルトの流向を反転させ、仮想の前線方向に向ける。そして二基のドリルからそれぞれ出ていたベルトラインを統合して、その先には……
「これは、新しい部品か?」
「ああ、これはルーターと言って、投入した資源を三方向に分配するんだ」
「ベルトと同じ幅でこの動きはどうやって……?」
マユラさん、ステイステイ。
一本化したラインにルーターを使い、正面と左右へ。それぞれは丘の谷間の真ん中、左丘の上、右丘の上。そして更にその先にルーターを設置し、最終的には肝心の砲台を設置する。それはさながら枝の細長い盆栽か三叉槍のようなレイアウトだ。
小気味いい調子でトン、トン、トンと端から設置される砲台を見る視線は、三者三様だった。
「さっきが4基で今は7、8、9基! 倍だ倍!」
「しかもさっきは供給が遅かったから連射が切れ切れだったが、これなら予備弾を後ろにストックできるから更にスゴイぞー! ツヨイぞー!」
「……あの、もしかして、いままでさいくつしたしげんぜんぶつかって、これを?」
妙にテンションが高いアユラ。なんかこれってキルゾーンみたいじゃね? とご満悦な俺。そしてなぜか表情を強張らせるアユラ。
「だいたいいくつほどさっきの、魔石を……?」
「えーと、砲台が35×9で315個。運搬で40個は使ってないから350個前後かな?」
「さんびゃく……」
「350個かあ……あれが350個!?」
「弾丸は別だけどね。銅1個で二発撃てるな確か」
その言葉を聞いたマユラさんはキュウっと悲鳴を上げて倒れ、俺は慌ててそれを受け止めたのだった。
【続く】
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