スワロウ
私は酒癖がめちゃくちゃに良い。
何故そこまで自負できるのかには理由がある。
以前バイト先の居酒屋で忘年会があり、バイトのスタッフだけでなく店長のお友達や仲のいい常連が集まり、これぞどんちゃん騒ぎと言わんばかりの大宴会だった。そこでは色んな人とたわいもない話や男だけの熱い話や辛い恋愛話などを聞いたり話したりした。お店の営業後に始めた事もあってこの大宴会が終わったのは朝の8時過ぎだったらしい。ここで“らしい”と使ったのは途中記憶が吹っ飛んだからだ。気づいたら私は家の布団の中で寝ていた。もれなく頭痛付きで。けれど、どうやって家に帰ったのか全く思い出せない。後日、このような事を店長に説明し、僕は何か迷惑をかけていないか確認したら別に嘔吐をするわけでもなくニマニマしながら人の話を聞き、何なら帰りの身支度も自分で行っていたと言うのだ。それを聞いて自身の酒癖の良さに感動してしまった。自分では面倒くさいと思っていた気にしすぎる性格が功を奏し、このような結果を招いたんだと思った。この体験をきっかけに「人より何か秀でてる事は何ですか?」と聞かれた時は「A:酒癖が良い事です!」と答えている。
「スワロウ」は監督はカーロ・ミラベラ=デイビス、ヘイリー・ベネットが主演を勤め、物語はニューヨークの郊外の邸宅で金持ちの夫と誰もが羨む暮らしをしているハンターは、義父母や夫から完璧な妻を求められるあまりストレスと孤独を感じていたなかで、彼女に妊娠が発覚する。しかし、その事がさらにハンターを孤独に駆り立ててしまう。そんな時ケースの中に入ったガラス玉を見つけ飲み込んでしまうのだ。痛み共に得も言われぬ快楽を得たハンターはそこから次々と家にある画鋲や電池といった異物を飲み込んでいってしまうという異色のスリラー作品だ。
この映画のように他からの期待やプレッシャーは他者が思っている以上に自身を苦しませる事がある。人気アーティストや人気俳優なんかでも新曲や新作のドラマや映画が発表される度にこの作品が世の中から認められるのだろうかという不安に駆られると何かのインタビューとかに掲載されてたりする。それに比べればとても小さい事だけれども、私も居酒屋のバイトでは俳優をやってる以上、もっとお客とコミュニケーションを取れだの名前を覚えられるように努力しないととアドバイスを貰う。それはありがたいけれど1日1日成長した姿を店長に見せなければ見捨てられるのではないかとか(まあこれは自身の面倒くさい気にしすぎの性格が出ているのかもしれないが、、)を考えてしまい少し億劫になってしまう。そんで自分より秀でてる者を見れば自分なんてとなってしまいとても死にたくなってしまうのだ。けれどそういう時にふと思うのだ。俺は多分この人達よりは酒癖はべらぼうに良いと。多分馬鹿げているかもしれないけれど、これが本当に心の支えになるのだ。たった一個の自分が自信を持てる者が有れば、今苦手な事を克服した時に私は2つその人より秀でていると考える事ができ少し心がフワッとなるのです。
この作品のハンターの場合、それが異物を飲み込むという事になる。旦那や義父母から完璧を求められる故にニューヨークの郊外だからご近所さんもいないから孤独。チョー孤独なのよ。そりゃあ褒めてもらう人が居ないので自信も失うし、幸せって?ってなるはずだ。そんな心がどん底の時に異物を飲み込むという普通の人が出来ない事をした優越感は彼女にとって唯一の救いだったに違いない。けれど人は普通より外れた行為を弾圧してしまう傾向がある。それが見ていてイライラするし、当分は人間なんて変わらないんだろうなと諦めの気持ちになってしまった。
だから少しずつでも良いのでこの映画を見た人が個性というものを受け入れる様な人になっていってほしい。こんな何十億人も居るんだもん。皆一緒の個性なんて気持ち悪くないか?バラバラで良いんだよ。バラバラで。
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