妊婦さん要チェック!コロナ禍で安全・安心に妊娠を継続するために
こんにちは。保健師の小林智美です。
緊急事態宣言が解除されましたが、新型コロナウィルスの感染のリスクがなくなったわけではありません。とくに、現在妊娠中の妊婦のみなさんは、ご自身の命とお腹の中の赤ちゃんの命、ふたつの命を抱えていて、その不安は拭いきれないのではないかと思います。
今回は、妊婦さんがコロナ禍の中で安全・安心に妊娠を継続し、出産を迎えるための情報をお伝えしていきたいと思います。
妊婦さんがハイリスクと言われる理由は?
そもそも、妊婦さんはハイリスクだといわれていますが、それは新型コロナウィルスに感染しやすいという意味なのでしょうか?
日本産婦人科学会は、妊婦さんが新型コロナウィルスに感染する確率は一般の方と同じで、経過や重症度も一般の方と同じだと伝えています。ですから、感染予防対策は基本的には一般の方と同じで問題ありません。
けれど、コロナウイルスに感染してしまった場合に、妊婦さんが使えるお薬は限られていますし、妊娠による免疫バランスや心肺機能の変化が経過に影響する可能性もゼロではありません。
そのため、感染予防への取り組みには万全を期す必要があるのです。
このような事情やふたつの命を抱えているカラダであるということ、また一般に、妊婦さんが肺炎にかかると重症化する可能性があることから、帰国者・接触者相談センターでは、一般よりも早い2日間の経過観察で相談するよう呼びかけているのだそうです。
ママが感染したら、赤ちゃんはどうなる?
妊婦さんにとってなによりの不安は、
「自分が感染したら赤ちゃんにどんな影響があるのだろう?」
ということではないでしょうか。
妊婦さんがコロナウイルスに罹患したことで、赤ちゃんの先天性障害や流産・早産・死産のリスクが高くなるという報告は今のところありません(2020年6月10日時点)。ただ、妊娠初期に感染した妊婦さんが出産されるのは、まだこの先になりますので、今後の報告を待つ必要があります。
妊婦さんの中には、院内感染を心配して「妊婦健診を受けに病院に行きたくない」と思う方もいらっしゃることでしょう。でも、妊婦健診は妊婦と胎児の健康のためにとても大切なこと。くれぐれも、自己判断で受診をキャンセルしないで、まずはかかりつけ医とよく相談してくださいね。
妊婦健診には推奨される受診間隔がありますが、産婦人科医と相談の上であれば、状況に応じて妊婦健診の間隔をあけることも可能です。
逆に不正出血、お腹の痛み、破水感、血圧上昇などの症状がある場合には、できるだけ早くかかりつけの病院に電話で相談しましょう。
里帰り分娩の妊婦さんは早めに帰省を
そして、緊急事態宣言下でも話題になっていた「里帰り分娩」についてです。
緊急事態宣言発出中は、実家までの長距離移動によって、妊婦さんが感染するリスクも、感染が広がるリスクもあったため、里帰り分娩は控えるように言われていました。緊急事態宣言が解除された後も、同様の感染リスクから、依然として里帰り分娩を勧めない産婦人科医も多いようです。
また、里帰り分娩を受ける側の分娩施設も困惑している現実があります。遠方からの里帰り妊婦さんを受け入れるために、どのように感染を防ぐか施行錯誤。そこに割かれるリソースも少なくないからです。
ある施設では、日本産婦人科学会が示していることに基づき、
「出産までに十分時間があり産科的合併症リスクが低い妊婦さんや、妊婦健診の期間を延ばすことができる方に対し、できるだけ早め里帰りをしていただき、自宅で2週間の健康観察をおこなったうえで、あらかじめ予約していた施設での健診、出産を受け入れる」
など一定の条件を設けているそうです。
里帰り予定の施設や自治体から「NO!」と言われたら?
一方、妊婦さんの立場では、「(里帰り分娩をやめて)今お住まいの地域で出産してください」と急に言われ、「とてもじゃないけれどすぐには病院が見つからない…」という問題が起きています。
こうなった場合にもやはり、できるだけ早くかかりつけ医に相談することをおすすめします(妊娠後期にさしかかった妊婦さんはとくに!)。妊娠経過を把握しているかかりつけ医に、ご自身の妊娠経過に適した病院を紹介してもらうことが一番ですから。
厚生労働省から各都道府県には、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出産場所の確保等の不安を抱える妊婦の方々への相談窓口の設置について」検討依頼が出され、相談窓口が設置されました。
地域により対応はまちまちなようですが、困ったらこちらも活用してみるといいと思います。
甘く見てはダメ!感染不安のストレス
働く環境が、働く妊婦さんにとって大きな問題になることがあります。
完全テレワークの指示が出ている会社であれば問題ないかもしれませんが、不特定多数の方と接触する必要のある業務などにたずさわる妊婦さんは、感染に大きな不安を抱えることがあり、その心理的ストレスが母体・胎児に影響を与えるおそれがあります。
もともと「男女雇用機会均等法」では、妊娠中・出産後1年以内の女性労働者が、母子保健法の保健指導・健康診査(妊婦健診等)の際に医師又は助産師から指導を受け、それを事業主に申し出た場合、必要な措置を講じることが事業主に義務付けられています。
これにもとづき、新型コロナウィルスの心理的ストレスの影響を妊婦さんが受けないようにするために、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理上の措置」が新たに規定されました。
※この措置は、令和2年5月7日~令和3年1月31日までの時限措置です。
具体的には、妊婦さんに上記のリスクがある場合、医師や助産師が母性健康管理指導事項連絡カードを作成し、本人が事業主に提出して必要な措置をとってもらうという流れです。
母性健康管理指導事項連絡カードには、例として「新型コロナウイルス感染症の感染のおそれの低い作業への転換又は出勤の制限(在宅勤務・休業) の措置を講じること」などと記載してもらうことができます。
妊婦さんは自分とお腹の赤ちゃんの命を抱えています。医師等が必要だと判断されたことは、遠慮せず会社に伝え、対応してもらいましょう。
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ここまで、コロナ禍の妊婦さんにとって不安のタネとなりそうな事柄を見てきましたが、保健師としては、ほかにも少し心配していることが2つほどあります。
コロナ太り、妊婦さんはとくにご注意
1つめは、ステイホームで妊婦さんの体重がふえること。
著しく増加した場合、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高くなったり、赤ちゃんの体重が増加して難産になりやすい、といわれています。
医療監修されている動画を見ながら、室内でできるストレッチを行ってみたり、人が少ない時間のウォーキングなど、適度な運動と食事による体重コントロールを心がけてくださいね。
ストレスをためないコミュニケーションを
2つめは、精神的ストレスです。
妊娠中、ホルモンのバランスは大きく変化します。そのため情緒不安定になることが多々あります。ステイホームで外部と遮断された生活になると、更にストレスがたまり、メンタル不調を生じるおそれがあります。
電話やSNSを上手に活用しながら、家族や友人など、気心の知れた人たちとコミュニケーションをとるようにしましょう。
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コロナ禍で、今妊娠をされている方の不安はどうしても大きいと思います。でも発想を変えると、ステイホームが推奨されたことで、おなかの赤ちゃんとゆっくり過ごす時間を持てるようになった、ともいえると思います。
すべてがコロナ前と同じというわけにはいきませんし、予期しなかったことがまだまだ起こるかも知れませんが、今この時を大切に、赤ちゃんを育んでいっていただければと思っています。
文/小林智美(こばやし・ともみ)
産業保健師、メンタルケア心理士、アンガマネージメントコンサルタント叱り方トレーナー
さんぎょうい株式会社が提供する、はたらく女性の健康とキャリアプログラム「mezame(めざめ)」では、組織で働く従業員のみなさんが長くイキイキとキャリアを重ねるためのサポートをしています。
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