「子どもを持ちたい」という希望を一人でも多くの人が叶えるために
コロナ禍で日本の出生数が大きく減っています
新型コロナウイルスの感染が広がった2020年4月以降、市区町村への妊娠届が、4ヵ月連続で前年よりも減少していたことが明らかになりました。
2020年5月〜7月に市区町村が受理した妊娠届の数は、前年より2万6331件(11.4%)のマイナスとなり、2021年に生まれる子どもの数は大幅に減る見通しとなりました。
2019年には、出生数86.5万人と統計開始以来初めて90万人を大きく下回ったことが驚きを持って報じられましたが、一部研究機関の推計によると、2021年の出生者数は80万人さえも下回ってしまうかもしれないとの予測が……。
たった3年でこの減少数はただ事ではありません。
日本の少子化は、私たちが想像している以上に急速に進んでいるのです。
昔から変わっていない出産年齢の限界
出生数が減少を続けている理由の1つには、晩婚化・晩産化があげられます
日本の女性の大学進学率を見てみると、1975年(昭和50年)に12.5%だったものが、2019年(令和元年)には50.7%までに増加。
女性の高学歴化傾向は、今後も続くことが予想されます。
女性が高学歴化すれば、社会に出て就職する年齢も遅くなります。
22歳で大学を卒業し、就職して仕事を覚えて、“一人前”と言われる頃には大体30歳くらいになっています。
仕事のおもしろさもわかってくる頃で、人によっては結婚や出産の優先順位が仕事よりも低くなってしまうかもしれません。
これは少し考えればわかること。
男性だって、仕事にアブラがのってくるのはこのくらいのタイミングなのですから、女性だって「結婚や出産を考えるのはあともう少し、あと一歩成長してから」と思う人が増えてもおかしくはありません。
男女の区別なく、仕事にやりがいを見いだし、社会で重要な役割を担う時代になってきた。これはとても喜ばしいことです。
ただ、忘れないでほしいのは、女性が出産できる年齢には限界があること。どれほど人類の寿命が延びても、社会のテクノロジーが進化しても、この限界は大昔からほとんど変わっていないのです。
もちろん、40歳を過ぎてから何の問題もなく初産を果たす女性もいます。
芸能人やタレントの女性が「42,3歳で第一子出産」といったニュースも、たびたび目にします。
ですが、「それなら私だってまだ大丈夫だよね」と考えるのは間違いです。
「月経があるうちは妊娠できる」と思っている方もいるようですが、年齢が高くなるにつれて妊娠するのが難しくなりますし、さまざまなリスクも高まっていきます。
子どもを持つことについて考えることを先送りしたり、偶然に任せていると、その後不妊に悩むことになるかもしれません。
生殖補助医療が万全なわけではありません
昨年12月、日本産科婦人科学会が2018年に体外受精で生まれた子どもの数は、5万6979人で過去最多となったと公表しました。
体外受精で生まれる子どもは年々増加し、1990年には1166人に1人だったものが、2000年には97人に1人、2010年には37人に1人となってひとクラスに1人はいる計算に。そして2018年の公表では、16人に1人は体外受精で産まれた子どもとなりました。
いまや、ひとクラスに体外受精児が平均2人くらいはいる計算となり、今後さらに体外受精で生まれてくる赤ちゃんは増加することが予測されます。
体外受精児の増加は、不妊に悩むカップルの増加、そして(不妊治療をしているカップルのすべてがそうではありませんが)晩産化の加速と比例していると言っていいでしょう。
それを裏付けるように、2018年の体外受精件数も過去最多の45万4893件(治療のべ件数)となりました。
単純比較はできませんが、同じ年の婚姻数は59万組ですから、体外受精や不妊治療は一部のカップルのための特殊な治療ではなく、誰もが選べる一般的な選択肢になって来ていると感じます。
▲ 日本産科婦人科学会のデータより作成 ▲
カップルで話し合いたい「いつまでに何人持つか」
とはいえ、この連載でもたびたびお伝えしているように、不妊で悩んでいる女性の多くが、「もっと早く決断すれば良かった」「もっと早く正しい知識を知っておきたかった」と後悔しています。
具体的には、
「卵子が老化することをはじめ、年齢を重ねると妊孕性(にんようせい=妊娠ができる力)が低下することを誰からも教わることがなかった」
「若い頃に不妊の知識を知っていたら、もっと早く子どもを産もうと決断できたのに」
といった声です。
いかに一般的な治療に近づいているとはいえ、不妊治療を受けている女性は、治療そのものや子どもがなかなか授からないことによって、さまざまな身体的・精神的ストレスを抱えています。
とくに治療が長期にわたっている人は、いつ治療を終結させるのかという決断に悩み、ゴールが見えない治療中心の生活を送り、自己実現ができない辛い状況におかれています。
★今後の記事でお伝えしますが、不妊治療と仕事との両立は難しい側面が多いです。
「子どもを産む・産まない、また産むとしたらいつ産むのか?」といった決断は、その当事者が自らの意思でするべきです。
ただ、もしあなたが「いずれ子どもはほしい」「子どもがいるにぎやかな家庭を築きたい」と考えているのであれば、その希望する人生を実現するためにも、ぜひパートナーと一緒に正確な知識を身につけ、「いつまでに産むのか、何人の子どもがほしいのか」をきちんと話し合ってほしいのです。
ふたりで意識することによって、「本当は子どもがほしかったのに授からなかった……」と後悔する可能性も低くなっていくと思います。
いま20~30代のみなさんは男女ともに忙しく、20年、30年前のように偶然に任せていれば自然に子どもが授かるという世代ではなくなって来ているようにも感じます。
お互いに子どもを持つ意思があることを確認したら、カップルでブライダルチェックを受けるなど、一歩踏み込んだ行動ができると良いですね。
■ 文/西岡 笑子(にしおか・えみこ)
防衛医科大学校 医学教育部 看護学科母性看護学講座教授。順天堂大学医学部非常勤講師。順天堂大学医学部助教、神戸大学保健学研究科准教授を経て現職。母性看護学・助産学とウィメンズヘルスが専門分野。2児の母でもある。mezame女性研修の監修を行う。
(構成/阿部志穂)
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