日が短くなってきたらご注意。知らずにかかっているかもしれない「冬季うつ病」とは?
こんにちは。産業保健師の小林智美です。
「なんだかやたらと甘いものを食べ過ぎてしまう」
「毎朝布団から出ることができない、二度寝してしまう」
…といった自覚がある方、最近多いのではないでしょうか?
実はこの症状と冬の寒さには因果関係があって、寒さを乗り切るためにエネルギーを蓄えようとする生理的な現象なんです。
ところがここに気分の落ち込みなどが加わって、日常生活に支障をきたしてしまう人も少なからずいらっしゃいます。
耳にしたことがあるかもしれません。
これが「冬季うつ病」なのです。
冬季うつ病は季節性感情障害の一種で、一般的なうつ病が過度のストレスなどが原因となることが多い一方、冬季うつ病は日照時間が短くなることに起因し、秋から冬にかけて発症します。
赤道近くに住む人よりも、北欧など緯度が高い地域に住む人の方がうつ病に罹患する人が多いともいわれていますが、それはこの日照時間の違いが原因なのです。
「冬季うつ病」の症状の特徴
冬季うつ病には
という特徴があって、不眠や拒食を訴える一般的なうつ病とは反対の症状が出ます。ただ、確かに症状は真逆の部分があるものの、気分の落ち込みや集中力の低下など抑うつ症状もあらわれます。
一般的に、うつ病は男性よりも女性の方が2倍程度多く発症し、冬季うつ病についても女性の方がかかりやすいようです。
女性は月経周期があり、月経前に精神的に不安定になるなどバランスを崩しやすい分、冬季うつ病などの季節性気分障害にもおちいりやすいのかもしれませんね。
女性ホルモンの増加、妊娠、出産といった女性特有の因子のほか、男女の社会的役割の格差なども原因だといわれています。
いずれにしても、秋口までは元気に暮らし、働くことができていた人が、冬になるにつれて意欲がなくなり、仕事上のミスが増えたりしていきます。
原因が日照時間にあるとはなかなか気づきにくいので、「なんか最近調子悪いな」で済ませてしまうことが多いのですが、毎年周期的に起こるため、年を経るごとに悪化させてしまうケースも少なくないようです。
冬季うつ病の予防・改善のカギは「日光」
気になる冬季うつ病ですが、日頃からのセルフケアである程度の予防は可能です。
カギを握っているのは「日光」です。
本来、人は日光を浴びることで、メラトニン(眠くなるためのホルモン)の分泌を抑制し、セロトニン神経を活性化させ、セロトニン産生を促します。
セロトニンは、心の安定をはかる作用がある脳内物質です。
しかし、冬になって日照時間が短くなると浴びる日光の量も減ってしまい、結果としてセロトニンが不足し、うつ症状が発生してしまうのです。
うつ病の予防改善にはさまざまな方法がありますが、冬季うつ病の改善には「日光を浴びること」が最大の予防法であり、治療法といえます。
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かつては、通勤時間や移動の際に電車の窓際に立つなどすれば十分に日光を浴びることができました。しかし、テレワークが進む中、そういった機会を持つことが難しくなってしまった人もいると思います。
ただ、1日あたり30分〜1時間も浴びれば、日光量は十分なのだそうです。セロトニン神経を活性化するためには2000~3000ルクス程度の明るさが必要で、朝の光が最も適しているといわれていますから、晴れた日の朝に散歩をする習慣が持てればベストかもしれません。
朝のすがすがしい時間帯に日光をたっぷり浴びることができれば、ストレス解消、運動不足解消にもうってつけですよね。
時間的に朝散歩が難しければ、目覚めてすぐに部屋のカーテンを開け、日の光をいっぱいに取り込むようにするだけでも十分です。
覚えてほしい 冬季うつ病を防ぐ“日光の浴び方”
「日光を浴びると、日に焼けちゃうじゃない」と心配する女性もいそうですが、実はセロトニンの分泌に必要なのは目(網膜)から取り入れられた日光です。
目に差し込んだ日光が、脳の中にある松果体と言う内分泌器官に届き、メラトニンの分泌を抑制し、結果セロトニン神経が活性化されます。
全身で日光を浴びなくても、目に太陽の光を入れることができればいいのですから、何らかの工夫はできそうですよね。ただし。「直接太陽を見る」のは絶対に避けてくださいね。
朝、散歩をする、朝日を部屋いっぱいに取り込む以外にも、自宅で仕事をする際に窓際にPCを置き、ときどき窓の外を見るなどの習慣も有効でしょう。最近では、自然に近い光を再現した高照度照明が開発されたり、そういった機器を設置したカフェなどもあるようです。
冬季うつ病の過食、過眠、気分の落ち込みや集中力の低下などがつらいときは積極的に日光を浴びるようにしてみてください。
日照時間が伸びてくる春になると、症状が改善され、自然治癒する人がほとんどですが、「それでもやはりつらい…」というときは、病院に行くことをお勧めします。
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