テレワークとタバコとわたし【後編】
こんにちは。保健師の小林智美です。
テレワークをしていると必然的に家にいる時間が長くなりますよね。
お子さんのいらっしゃるご家庭や、禁煙が原則のおうちでは、職場で働いていた時と同じようには、タバコを吸うことができなくなってしまいます。
しかも現在、多くの喫煙所が新型コロナ感染予防のために閉鎖されていますし、「改正・健康増進法」の施行により、望まない受動喫煙を防ぐための取り組みが行われ、喫煙できる場所はますます限られてきています。
ほかにも前回「テレワークとタバコとわたし【前編】」でお伝えしたような理由から、喫煙環境が変わって困惑している喫煙者が続出しています。
そこで今回考えたいのが、「新型コロナを契機にした禁煙」です。
テレワークは禁煙をはじめるのに絶好の環境
新型コロナ感染への懸念から、“病院”という場所に対して少なからず抵抗感がある方もいらっしゃるようです。そうなると禁煙外来の受診は控えたいと考える方もでてきますよね。
でも、聞いてください。テレワーク下には、実は禁煙するための素晴らしい条件がそろっているんです!
* 接待や歓送迎会といったお酒の席がない
* 喫煙者からの喫煙所へのお誘いがない
* 喫煙に関するものを排除した環境を作りやすい
お酒の席でタバコを吸いたくなるのには理由があります。ニコチンが水に溶けて早く吸収されるので、タバコがおいしいと感じるのです。また心理的に、同じテーブルでタバコを吸っている人を見るだけでもつい吸いたくなりますよね。そんな誘惑だらけの酒席がないことがまず大きいんです。
また、灰皿や喫煙所を見るとタバコを吸いたくなるという方もたくさんいらっしゃると思います。でも、テレワークで自宅にいれば喫煙所を目にする機会は減るでしょうし、ライターや灰皿などタバコに結びつくアイテムを思い切って処分してしまえば、外出の機会が少ない分「お店で目についてまた購入…」ということも避けやすいですよね。
さらに、家にいれば薬局でニコチンパッドやニコチンガムをいつでも購入することができ、禁煙外来を受診しなくても禁煙補助薬を使いながら禁煙に挑戦できます。禁煙外来で処方される薬に比べると、市販されている製品のニコチン含有量は少ないのですが、それでも実践してみる価値は高いです。
テレワーク生活が禁煙したい人にとってかなり良い環境であることが、おわかりいただけたのではないでしょうか?
記録を付けて自分のニコチントリガーを探る
禁煙を成功させるためには、ちょっとしたコツがあります。
多くの方が「思い立ったが吉日、さぁ禁煙しよう!」とスタートしてしまうのですが、実は、やみくもに始めると失敗する確率が高くなります。せっかく禁煙しようと思ったのに、これではもったいないですよね。
では、どうするか?
大切なのは、自分を観察することです。まずは2週間ほど、自分がいつどんなタイミングでタバコを吸うのか・吸いたくなるのかを記録してみましょう。これにより、自分なりの喫煙のトリガーが見つかります。このトリガーを徹底的に避けることが、禁煙成功のカギになっていきます。
また、記録と同時にしてほしいのが、吸いたくなったときの気持ちの対処法の練習です。
「食後の一服がおいしくて、ごはんを食べると必ずタバコを吸いたくなる」
それがトリガーとわかった方なら、例えばすぐに歯を磨く、お茶を飲むなど喫煙に変わる方法を探していくのです。下記のサイトに対処法の例が挙げられているので参考にしてくださいね。
開始日を決めて「禁煙宣言」をしよう
自分にとっての喫煙のトリガーがわかったら、いよいよ禁煙の実践です。
ここでぜひやってほしいのが禁煙のスタート日を決めて、家族やパートナーなど身近な相手に「禁煙宣言」をすること。宣言をしたら、喫煙道具も一切処分してしまいましょう。
禁煙の禁断症状は最初の1週間が最も辛く、実に50%の人がここで挫折してしまうそうです。でも、「禁煙宣言」した相手が周囲にいたら、吸いたくなる気持ちもグッと抑えることができると思います。禁断症状は、だいたいが2〜4週間。最初の1週間を乗り切れば、成功率はかなり高くなります。
ただ、「家族に支えてもらう」というのは、タバコを吸わないように監視してもらっうためではありません。ここからはご家族の方にも読んでいただきたいのですが、周囲のみなさんは、ぜひ禁煙を頑張っている姿を褒めてほしいんです。
ほめられることは、自然なドーパミンの分泌を促します。ほめられて幸せを感じ、「うれしい!」という前向きな気持ちが生まれることが禁煙の継続につながります。
自分にとっての禁煙のメリットや禁煙理由を家族に伝えたり、家族があなたの喫煙・禁煙についてどう思っているのか聞いたりすると、周囲も応援しやすくなりますし、目的意識がはっきりしてモチベーションが上がるかもしれませんね。
家族と同居していない方は、すでに禁煙に成功した知り合いやもともとタバコを吸っていない周囲の人に宣言し、応援してもらうとよいでしょう。
「都合のいいとらえ方」に誘惑されないで!
「タバコは体に悪い」と知りながら、吸っている人って多いですよね。
タバコを吸わない人から見れば「わかってるならやめたらいいのに…」と思うのですが、多くの喫煙者はタバコの害を否定したり(否認)喫煙を正当化する理由を探したりして(合理化)、結果的にゆがんだ認識を生み出しています。
例えば…
* タバコを吸うとストレス解消ができる
* 加熱式たばこは体に害がない
* 加熱式たばこは周りに迷惑をかけない
* 喫煙所でのコミュニケーションは仕事の役に立つ
* タバコを吸っていても長生きしている人はいる
ーーこういった考えです。
タバコを吸うとストレスが解消されたように思うのは、ニコチン依存症によるものですし(前回記事参照)、加熱式たばこは煙や臭いが少なくても、喫煙者にも周囲の人にも害を与えます。
また、コミュニケーションは喫煙所でのみ成立するものではありませんし、タバコを吸って長生きをする人より、タバコを吸ってがんで亡くなる人の方がはるかに多いわけです。
こうした都合の良いとらえ方は、禁煙の大きな障壁になっています。喫煙者の人は、自分の間違った認識をきちんと認め、しっかりと向き合うことも大切です。
コロナ禍を逆手に取った「ステイホーム禁煙」。
ぜひ成功させてくださいね!
文/小林智美(こばやし・ともみ)
産業保健師、メンタルケア心理士、アンガマネージメントコンサルタント叱り方トレーナー
さんぎょうい株式会社が提供する、はたらく女性の健康とキャリアプログラム「mezame(めざめ)」では、組織で働く従業員のみなさんが長くイキイキとキャリアを重ねるためのサポートをしています。
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